労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和5年(不再)第38号・第39号
ワーナーブラザースジャパン不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社(「会社」)(38号)、X組合(「組合」)(39号) 
再審査被申立人  X組合(「組合」)(38号)、Y会社(「会社」)(39号) 
命令年月日  令和7年7月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、①会社が、組合員の身分及び労働条件に重大な影響を与える経営政策を実施する場合には事前協議を尽くす旨の協定(以下「本件協定」という。)の効力承継について団体交渉で否定する発言をしたこと、②団体交渉における会社代理人の発言等の会社の対応が不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。

2 初審東京都労委は、②のうち会社代理人の発言について不当労働行為に当たると判断し、会社に対し文書交付等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社及び組合は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。 
命令主文  本件各再審査申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  (1) 争点1(本件協定の効力承継に関する、団体交渉における会社の対応は、組合の運営に対する支配介入に該当するか否か。)
 会社の対応は、本件協定が引き継がれていないという会社の見解を表明したものであり、同見解は、本件協定の当事者(協定当事者)と会社の前身の法人とは別法人であり、本件協定が会社に引き継がれたことを直接示す客観証拠がないことを踏まえたもので不合理な点があるとはいえないから、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。

(2) 争点2(本件協定の定める経営政策実施の事前協議に関する、団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉及び組合の運営に対する支配介入に該当するか否か。)
 上記(1)のとおり、会社が、本件協定が会社に引き継がれていないとの見解を示し対応することが、不誠実な対応であるとはいえない。また、会社は、部門の廃止や業務の外注化それ自体は一方的に決定し得る旨述べたにすぎず、それに伴う従業員の労働条件等について団体交渉に応ずる義務がないと主張したわけではなく、労働条件等の協議に応じている。したがって、会社の対応は、労組法第7条第2号及び同条第3号の不当労働行為に該当しない。

(3) 争点3(団体交渉における会社代理人の発言①及び発言②は、組合の運営に対する支配介入に該当するか否か。)
 会社代理人の発言①は、組合に加入して間もない組合員A1及びA2に対し、組合及び組合幹部に対する不信感や不安感を抱かせることで組合の中心人物と組合員とを離間させ、組合の求心力を低下させるものである。
 また、この発言は、組合が退職金に関する希望を述べたのを機になされているが、組合が希望を述べることには何ら問題はないし、組合の希望の述べ方が殊更に挑発的であったともいえない上、組合幹部がこの発言の内容が行き過ぎだと指摘したにもかかわらず、会社代理人は、組合員を離間させる発言を続けたものである。
 会社代理人の発言②は、組合員数が減少した事実を指摘するにとどまらず、組合に加入したばかりの組合員に対して、組合は世の中の産業の動きに対応できず、組合運動も基本的に失敗に終わっている旨指摘し、組合に対する信頼を損ない、ひいては組合に加入している意義を疑わせる発言といわざるを得ない。
 また、この発言の前後の流れをみても、組合による挑発的な発言がなされ、それに誘発されて不用意になされたとの事情はうかがわれない。
 以上から、会社代理人の両発言は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。

(4) 争点4(会社が、本件協定について、本件解約通知を組合に提示したことは、組合の運営に対する支配介入に該当するか否か。)
 会社の前身の法人は、協定当事者から、事業の譲渡を受けたことが認められるものの、本件譲渡に関する客観証拠はなく、その契約形態や具体的な譲渡の条件・範囲、譲渡日等は明らかでない。両社の登記には、両社の間で合併等がされた旨の記録はない。加えて、本件譲渡に際し、協定当事者から会社の前身の法人に本件協定を引き継ぐ旨の書面等の証拠もない。
 以上の事実からすれば、協定当事者ではない会社の前身の法人及び会社が、協定当事者から本件協定を承継したと認めるに足りる証拠はない。したがって、会社の上記対応は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委令和2年(不)第107号 一部救済 令和5年10月3日
 
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