概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
中労委令和4年(不再)第38号・第39号
泉北ニシイ外1社不当労働行為再審査事件 |
| 再審査申立人 |
X1地本(「地本」)・X2支部(「支部」)(38号)、Y2会社(39号) |
| 再審査被申立人 |
Y1会社・Y2会社(38号)、X1地本(「地本」)・X2支部(「支部」)(39号) |
| 命令年月日 |
令和7年7月2日 |
| 命令区分 |
棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、地本及び支部(併せて「組合ら」)が、大阪府労働委員会が、先行事件において令和2年7月29日に交付した命令書(「先行事件初審命令」又は「先行事件初審命令書」)の履行及びY2会社に正社員として雇用されていた組合らの組合員である運転手の退職に伴う欠員の補充(「欠員補充」)に関して同年8月24日付けで申し入れた団交(「2.8.24団交申入れ」)、並びに、支部が、欠員補充及び令和3年度の春闘に係る要求(「春闘要求」)に関して令和3年4月13日付けで申し入れた団交(「3.4.13団交申入れ」)に、Y0会社又は令和2年9月1日に同社を吸収合併したY1会社(吸収合併の前後を通じ「Y0会社」)とY2会社(併せて「会社ら」)が応じなかったことが、労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、大阪府労委に救済申立てをした事案である。
2 大阪府労働委員会は、2.8.24団交申入れのうち、欠員補充に関してY2会社が団交に応じなかったのは労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、Y2会社に対して文書交付を命じ、その余の申立てを棄却したところ、組合ら及びY2会社は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。 |
| 命令主文 |
本件各再審査申立てを棄却する。 |
| 判断の要旨 |
(1) 先行事件初審命令の履行問題に関する2.8.24団交申入れについて
2.8.24団交申入れの趣旨は、会社らが、平成30年2月1日分以降、労働者供給の依頼をしなくなったこと(「30.2.1供給依頼停止」)が労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するとして文書交付命令が発せられたことを踏まえ、会社らに対してその履行を求めるものであるから、これは、先行事件において組合らが求めた30.2.1供給依頼停止の再開を要求事項とする団交申入れとは異なり、先行事件初審命令書の交付を受けてなされた新たな団交申入れであると解するのが相当である。よって、本件初審命令の判断は、2.8.24団交申入れが、先行事件で救済を求めた団交申入れと別の新たな団交申入れがなされたものではないとする点で前提が誤っており、相当でない。
以上のとおりであるから、先行事件初審命令の履行問題に関する2.8.24団交申入れが新たな団交申入れであることを踏まえ、会社らが当該団交申入れに応じるべきであったか否かを判断すべきことになるが、本件においては、再審査係属中に先行事件初審命令の救済部分は取り消されているため、当該救済命令の履行を求めた団交申入れの拒否に関する救済申立てについては、本件再審査において救済を命ずべきことにならない。
したがって、その余の点を検討するまでもなく、先行事件初審命令の履行問題に関する2.8.24団交申入れに関する救済申立てを棄却した本件初審命令は、結論において相当である。
(2) 欠員補充に関する2.8.24団交申入れ及び3.4.13団交申入れについて
ア 欠員補充に関するY0会社の対応について
欠員補充に関する組合らの要求事項は、組合員を正社員としてY2会社に雇用させることであるところ、Y0会社が、組合員の正社員としての採用や、その基本的な労働条件について、雇用主となるY2会社と同視できる程、現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあると解することは困難である。
以上のとおり、Y0会社は、欠員補充に関して団交に応ずべき労組法上の使用者に該当しないから、その余を判断するまでもなく、欠員補充に関する2.8.24団交申入れ及び3.4.13団交申入れにY0会社が応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
イ 欠員補充に関するY2会社の対応について
(ア) 欠員補充に関する2.8.24団交申入れに対するY2会社の対応について
Y2会社は、欠員補充について労組法上の使用者であると認められるから、欠員補充に関する団交申入れがあった場合には、正当な理由なく拒否することはできない。
Y2会社は、令和2年3月に取引先に対して廃業する旨の通知を行ったものの、組合に対して同旨の通知を行っていた事実は認められないこと、2.8.24団交申入れがなされた時点ではY2会社はまだ廃業しておらず、実際に廃業したのは同年9月20日であったことからすれば、Y2会社は、欠員補充を要求事項としてなされた2.8.24団交申入れに対しては、団交に応じた上で、廃業予定であることも含め、今後の欠員補充の可否等について説明すべきであって、少なくとも廃業が予定されていることは、団交を拒否する正当な理由であるとは認められない。
以上のとおりであるから、Y2会社が2.8.24団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(イ) 欠員補充に関する3.4.13団交申入れに対するY2会社の対応について
組合らは、2.8.24団交申入れの時点では、欠員補充の問題を広く問う趣旨であったところ、3.4.13団交申入れに至っては、特に、支部とY0会社が平成21年3月19日に交わした確認書でY0会社が欠員補充について確認したことを理由として欠員補充の実現を追及する方針にしたものとみることができる。そして、当該確認書にY2会社が関与した事実は認められないこと、組合らは、本件審査を通じ、Y0会社は欠員補充に関して使用者性があり、これに関する団交に応じるべきであると一貫して主張していることも併せ考えれば、Y2会社が、欠員補充に関する3.4.13団交申入れは、もっぱらY0会社に対して申し入れられたものと受け止めたことには相応の理由があるというべきである。
よって、Y2会社が3.4.13団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に該当するとはいえず、労組法第7条第2号の不当労働行為には該当しない。
(3) 春闘要求に関する3.4.13団交申入れについて
組合らが3.4.13団交申入れで要求した春闘要求は、会社らに正社員として雇用される組合員の賃金等の労働条件に関する要求と解することができる。
会社らにおいては、3.4.13団交申入れがなされた時点では正社員たる組合員は存在せず、近い将来、組合員を正社員として雇用する可能性が現実的かつ具体的に存在すると認めることもできないから、春闘要求に関する3.4.13団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為には該当しない。 |
| 掲載文献 |
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