概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
中労委令和6年(不再)第23号
スローワーク不当労働行為再審査事件 |
| 再審査申立人 |
Y会社(「会社」) |
| 再審査被申立人 |
X組合(「組合」) |
| 命令年月日 |
令和7年6月18日 |
| 命令区分 |
棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、会社が、①令和5年3月24日の組合との団体交渉(以下「3.24団交」)において、㋐組合員Aの未払賃金について、一方的な計算基礎を示し根拠等を説明せず、㋑組合員Aの解雇理由について資料を示し説明することを拒否したこと、②組合からの同年4月12日付け及び同月19日付けの団体交渉申入れ(以下これらを併せて「本件団交申入れ」)に応じず、同月18日の組合との電話にて団体交渉を拒否する発言をしたことが、労組法第7条第2号の不当労働行為であるとして、組合から同年5月15日に愛知県労委に救済申立てがされ、さらに、③会社が同年3月31日付けで組合員Aを解雇したことが同条第1号の不当労働行為であるとして、同年6月19日に追加申立てがされた事件である。
2 初審愛知県労委は、①会社が3.24団交において㋑組合員Aの解雇理由について資料を示すなどして具体的説明を行わなかったこと、②会社が本件団交申入れに応じなかったことが、労組法第7条第2号の不当労働行為であると認め、会社に対し、誠実に団体交渉に応じること及び文書交付を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 |
| 命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
| 判断の要旨 |
(1) 3.24団交における、組合員Aの解雇理由についての議題に係る会社の対応は、不誠実な団体交渉として労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。
会社は、事業所閉鎖及びこれに伴う組合員Aの解雇の理由について、支払が不能になる、社長らの報酬又は給与を減額したが、なお経営が赤字である、他に組合員Aを就業させられる事業所はなく、今後同種事業を再開する予定もないなどと抽象的・概括的な説明はしたが、組合から、上記説明の根拠となる資料の提示及び同資料に基づく具体的な説明を繰り返し要求されても、これを頑なに拒否した。
会社は、当該議題に関する自己の主張について、その根拠を具体的に説明したり、必要な資料の提示をしたりすることを拒んだのであり、会社の対応は、不誠実な団体交渉として、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(2)会社が本件団交申入れに応じなかったことは、団体交渉拒否として労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。
会社は、事業所が閉鎖された後であり本件団交申入れに対応できなかったと主張しており、これは閉鎖に伴う様々な手続が必要であり繁忙であったなどの理由により対応が困難であったとの主張と解されるが、仮に会社が繁忙であったとしても、そのことをもって団体交渉を拒否する正当な理由があることにはならないし、会社は、本件事業所の閉鎖後の手続等のため繁忙であったなどという理由で本件団交申入れに応じなかったのではなく、むしろ、本件団交申入れに応じる意思がなかったためにこれを拒否したものと認められる。
また、会社は、社長が体調不良のため本件団交申入れに応じられなかったと主張するが、仮にそのような事情があったとしても、代理人を選任して対応させるなど、当該事情に応じた方法をとり得たといえるのに、会社はそのような方法をとっていない。
その他、会社が団体交渉を拒否する正当な理由があったことを示す事情は見当たらないから、会社が本件団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否として労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 |
| 掲載文献 |
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