概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和6年(不再)第25号
大浜資材不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y会社(「会社」) |
再審査被申立人 |
X組合(「組合」) |
命令年月日 |
令和7年6月18日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、組合が令和5年4月12日付け、同月20日付け、同月27日付け及び5月9日付けで申し入れた団体交渉(これら4回の申入れを併せて「本件団交申入れ」)に応じなかったことが労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、会社が、本件団交申入れに応じなかったことは労組法7条第2号の不当労働行為であるとして、会社に対し団体交渉応諾及び文書手交を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てたものである。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 争点(本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか。)について
ア 組合が、本件団交申入れにより申し入れた団体交渉の議題は、①令和5年4月10日、会社が、会社の従業員で組合員である2名(「本件組合員2名」)に対し、それぞれ同日付の会社の「勧告書」と題する文書(「本件脱退勧告書」)を提示し、組合からの脱退を勧告したこと及びこれを拒否した本件組合員2名に対し自宅待機を命じたこと(「本件自宅待機命令」)の取消し並びに本件組合員2名の従前どおりの就労、②本件脱退勧告書により組合の名誉を毀損し、不当労働行為を行ったことについての謝罪文の提出、③本件組合員2名に対する令和5年4月分給与の減額分の支払であるといえる。これらの議題は、いずれも、本件組合員2名の労働条件その他の待遇、組合と会社との間の団体的労使関係の運営に関する事項で、かつ、会社に処分が可能なものであるから、義務的団交事項に当たる。
そうすると、会社は、組合の本件団交申入れに応じるべき義務があったといえるが、会社は、業務多忙のため団体交渉を開催できる状況にないとして明確な団体交渉の開催日時を示さず、その後においても、団体交渉を開催する旨回答していない。会社のかかる対応は本件団交申入れを拒否したもの(「本件団交拒否」)といえるところ、本件団交拒否が正当な理由なく行われた場合は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
イ 会社は、本件団交拒否には、以下のとおり、正当な理由があったと主張するので検討する。
(ア) 会社は、組合と団体交渉を行うことは、結局はC協同組合の言う反社会的活動の容認を前提とするかの如き今までと変わらない関係を今後も維持するつもりであるという印象を業界中に与えることになりかねない旨、ここでいう業界中に与える「印象」とは、会社がC協同組合や業界での立ち位置と信用を失い、生コン工場の生命線であるC協同組合の共同販売から排除され、会社の存立を危うくするリスクのことを指し、団体交渉の開催要求に応じた上で会社の方針等を説明することも可能な一般的なケースと本件とは異なる旨主張する。
かかる会社の主張は、団体交渉に応ずることが会社の信用問題となり経営に深刻な影響を与えるリスクとなることをもって本件団交申入れを拒否する正当な理由があると主張するものと解される。
そこで検討するに、組合と団体交渉を行うと工場としての存立を危うくする経営上のリスクがあるという会社主張は、会社自身も認めるとおり、会社としての独自の情報分析に基づくものにすぎず、かかるリスクが現に存在することを認めるに足りる証拠もない。
このように、会社が独自に情報分析して経営上のリスクが存在すると判断したことをもって、義務的団交事項に係る本件団交申入れを拒否する正当な理由があると評価することはできない。
(イ) また、会社は、本件自宅待機命令については訴訟が係属中の場合は団体交渉における解決を当面先送りすることも許容されるべきである旨主張する。
確かに、本件自宅待機命令については別件訴訟が提起され、係属中である。
しかし、当事者の交渉により将来の関係も視野に入れて紛争の解決を目指す団体交渉は、権利義務関係を確定する訴訟とは機能や目的が異なるため、団体交渉の事項につき別件訴訟が係属中であることは、団体交渉を拒否する正当な理由とはならない。
(ウ) 以上からすれば、本件団交拒否には正当な理由があったとする会社の主張は採用できず、本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(2) 救済方法について
本件不当労働行為によって生じた状態を是正し、正常な集団的労使関係秩序の回復、確保を図るためには、会社に対し、初審命令主文のとおり、団体交渉応諾及び文書の手交を命ずるのが相当である。
なお、会社は、初審命令の主文第1項について、仮に団体交渉応諾を命じる場合でも、応諾すべき団体交渉事項が明確でないと不都合であるため団体交渉事項を明確に特定して記載すべきである旨主張するが、本件団交申入れの団体交渉事項は、会社も認識しているとおり、上記(1)アで認定した事項であり、会社が応諾すべき団体交渉事項は明確であるといえる。したがって、会社の主張は採用できず、初審命令主文第1項を変更する必要はない。
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掲載文献 |
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