概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第42号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和6年5月20日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が組合からの団体交渉申入れに応じず、団体交渉が開催されないことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾及び文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 会社は、組合からの令和5年4月12日付け、同月20日付け、同月27日付け及び同年5月9日付けの通知書による団体交渉申入れに応じなければならない。
2 会社人は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記 年 月 日
X組合
執行委員長 A1様
Y会社
代表取締役 B
当社が、貴組合からの令和5年4月12日付け、同月20日付け、同月27日付け及び同年5月9日付けの通知書による団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
○争点
令和5年4月12日付け、同月20日付け、同月27日付け及び同年5月9日付けの通知書による団体交渉申入れ(以下併せて「本件団体交渉申入れ」)に対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか
1 本件団体交渉申入れにおける組合の要求事項は、①会社の従業員で組合員であるA2及びA3に対する脱退勧告と自宅待機命令の取消し〔注〕、②脱退勧告書で組合の名誉を毀損し、不当労働行為を行ったことについての謝罪文の提出、③A2及びA3に対する(食事手当等に係る)給与の減額分の支払であるから、組合は義務的団体交渉事項に関して団体交渉を申し入れたと認められる。
また、本件審問終結時において、会社が本件団体交渉申入れに応じていないことが認められる。
したがって、会社が団体交渉に応じないことについて正当な理由がなければ、会社の対応は団体交渉拒否として労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
〔注〕認定によれば、令和5年4月10日、会社は、A2及びA3に対し、同日付けの勧告書を提示して組合からの脱退を勧告し、また、組合を脱退しない旨返答した両名に対し、翌11日から自宅待機するよう命じている。
2 そこで、会社が団体交渉に応じない正当な理由の有無について検討する。
この点、会社は、本件審査手続において、団体交渉に応じることは反社会的活動の容認を前提とする今までの関係を今後も維持するつもりであるという印象を業界中に与えることになる旨主張する。しかし、そもそも業界中での印象を理由に、会社の団体交渉応諾義務が免じられるものではない。
また、会社は、A2及びA3に対する自宅待機命令については訴訟が係属中で、現状では和解はできず、司法の判断を仰ぐことが中長期的には適切であって、このような場合、団体交渉における解決を当面先送りすることも許容されるべきである旨主張する。しかし、会社が現状では団体交渉における解決はできないと判断していたとしても、団体交渉の開催要求に応じ、組合に対し、現段階での会社の考えや方針を説明することも可能であり、会社の主張は採用できない。
したがって、会社が主張する団体交渉に応じない理由は、いずれも正当なものとはいえない。
3 以上のとおりであるから、会社は、本件団体交渉申入れに正当な理由なく応じなかったと判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 |