労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和6年(不再)第15号
筑波大学(発言制止等)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X1組合(「組合」)、個人X2 
再審査被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和7年5月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人の下記(1)から(3)までの各行為が労働組合法(労組法)第7条第1号及び第4号の不当労働行為に該当するとして、茨城県労委に救済申立て(本件申立て)があった事案である。なお、本件申立て当時、上記当事者間の別の不当労働行為事件(前事件)が茨城県労委に係属していた。
(1) 平成31年4月3日、法人のC1系教員会議(本件教員会議)において、同会議の議長を務めていたB1系長、議長の職務代行者に指名されたB2研究科長及び事務担当者であったB3主幹がX2准教授の発言を制止するなどしたこと
(2) ①平成31年4月3日、本件教員会議の終了後、X2准教授がB2研究科長の研究室を訪れ、面談を申し入れたが、B2研究科長が面談に応じなかったこと、②X2准教授がB1系長及びB2研究科長に面談を申し入れた件について、同月4日、B3主幹がX2准教授に対しメール(4月4日メール)を送信したこと
(3) 令和元年5月13日、B4カリキュラム委員長が、X2准教授が担当教員を務める授業科目(C2科目)を履修していたC3学類の学生に対しメール(5月13日メール)を送信したこと

2 茨城県労委は、本件申立てをいずれも棄却したところ、組合らは、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 本件教員会議において、B1系長及びB2研究科長が発言しようとしたX2准教授を制止したこと並びにB3主幹が議場中央に入り、発言を制止しようとしたことについて

ア B1系長の行為について
 本件教員会議の位置付けや当時の進行状況等に照らすと、同会議においてB1系長が発言しようとしたX2准教授を制止したのは、報告事項に関して限られた時間の中で説明を尽くすことを重視したという一応の合理性のある理由によるものであり、その他のB1系長の対応をみても、B1系長がX2准教授が組合の組合員であることや前事件の救済申立てをしたことを理由としてX2准教授の発言を制止したことを推認させる事情はない。

イ B2研究科長の行為について
 B2研究科長は、B1系長に倣い、残りの報告事項に関する説明を時間内に終了させるため、X2准教授の発言を制止したと認められ、こうした対応には一応の合理性があるといえる。その他にも、B2研究科長がX2准教授が組合の組合員であることや前事件の救済申立てをしたことを理由としてX2准教授の発言を制止したと推認させる事情はない。

ウ B3主幹の行為について
 B3主幹は、議事が円滑に進行することを意図して、X2准教授に対しB1系長の指示に従うよう述べたり、B2研究科長の報告が始まる旨伝えたりしたものと認められ、こうした対応には一応の合理性があるといえる。その他にも、B3主幹がX2准教授が組合の組合員であることや前事件の救済申立てをしたことを理由としてX2准教授の発言を制止しようとしたと推認させる事情はない。

エ 小括
 したがって、本件教員会議においてB1系長及びB2研究科長が発言しようとしたX2准教授を制止したこと並びにB3主幹が議場中央に入り、発言を制止しようとしたことが、不当労働行為意思に基づくものとはいえず、労組法第7条第1号及び第4号の不当労働行為に当たらない。

(2) X2准教授からの面談の申入れに対して、B2研究科長が面談に応じなかったこと及びB3主幹が4月4日メールを送信したことについて

ア B2研究科長の行為について
 X2准教授がB2研究科長に面談を申し入れた当時、B2研究科長は、自身の妻が入院している病院に面会に行くところだったのであるから、面談に応じなかったのは無理もない状況であったといえる。
 したがって、B2研究科長が面談に応じなかったことが、不当労働行為意思に基づくものとはいえず、労組法第7条第1号及び第4号の不当労働行為に当たらない。

イ 4月4日メールについて
 4月4日メールは、X2准教授からB1系長及びB2研究科長に申し入れられた面談において相談したい具体的内容が不明であるために、X2准教授に対して具体的内容を文書で明らかにするよう求め、必要に応じて所管部局に照会するなど、法人内部で相談内容に即した対応をとることを目的にしたものと認められ、かかる対応は、X2准教授の相談に適切に対応するための合理的な方法といえ、組合又は組合員を嫌悪するなどしたことによるものとは考え難いし、法人が、X2准教授との面談を拒否したともいえない。
 したがって、B3主幹が4月4日メールを送信したことが、不当労働行為意思に基づく不利益な取扱いであったということはできず、労組法第7条第1号及び第4号の不当労働行為に当たらない。

(3) B4カリキュラム委員長が学生に対し5月13日メールを送信したことについて
 B4カリキュラム委員長は、C3学類の学生がC2科目を履修したとしても、卒業のために修得することが必要とされる科目としては認められないと判断し、5月13日メールにおいて、C2科目の履修を継続する場合は卒業要件を満たすための科目として認定されない可能性が高いと考えられる旨の説明などを行ったと認められ、その後、C3学類カリキュラム委員会が、同学類の学生らに対し、C2科目以外の科目についても卒業要件を満たす科目として利用できないとの方針を示していることからしても、B4カリキュラム委員長の上記のような対応は、C2科目の担当がX2准教授以外の教員であったとしてもなされたであろうといえる。
 B4カリキュラム委員長が、5月13日メールにおいて、内容として誤っているか適切ではない内容を伝えたことをもって、B4カリキュラム委員長に不当労働行為意思があったということはできない。
 したがって、B4カリキュラム委員長が学生に対し5月13日メールを送信したことが、不当労働行為意思に基づくものとはいえず、労組法第7条第1号及び第4号の不当労働行為に当たらない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
茨城県労委令和2年(不)第1号 棄却 令和6年2月15日