概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和6年(不再)第9号
パーソルテンプスタッフ外1社不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
個人X |
再審査被申立人 |
Y1会社、Y2会社 |
命令年月日 |
令和7年5月7日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、①平成31年4月9日付け団体交渉申入れに対するY1会社(派遣元会社)・Y2会社(派遣先会社)の対応、②Y1会社による個人Xの雇止め、団体交渉における対応、同月22日の始業前の面談における対応、労働局等の行政指導への対応等が不当労働行為であるとして、東京都労働委員会に救済申立てがあった事件である。なお、申立ての一部については、Xが加入していたA組合(以下「組合」という。)も申立人となっていたが、その後、Xは組合から脱退し、組合は申立てを取り下げた。
2 東京都労働委員会は、平成31年4月22日のY1会社の対応についての申立てを却下し、その余の申立てを棄却したところ、Xは、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) Y1会社がした各行為は不当労働行為に当たるか。
ア Y1会社がした行為として挙げられているのは、①組合による平成31年4月9日付け団交申入れに対する対応、②Xを雇止めしたこと、③令和元年5月24日、8月7日、10月9日及び令和2年1月22日の組合との団体交渉における対応、④㋐平成31年4月22日におけるXに対する対応、㋑同月24日にXに確約書を求めたこと及び㋒同月26日に雇止め理由書を送付したこと、⑤Xの取扱いに関する東京労働局等からの行政指導に対する対応であるところ、このうち④㋐については行為の日から1年を過ぎて救済申立てがなされたものであり、却下を免れない。
イ 組合の団交申入れ(①)に対し、Y1会社が、組合の運営や活動の妨害を図って団体交渉の開催に向けた調整を意図的に遅らせていたとは言い難い。また、計4回の団体交渉(③)を通じて、Y1会社は、組合の求めに応じ、事実関係やその認識につき事前に文書回答するとともに、派遣契約書や36協定書などを開示して説明を行っており、交渉を無意味化させる対応を行っていたなどと評価することはできない。
ウ Xの雇止め(②)について、Y1会社が、欠勤を続けていたXの体調回復の見込みが明らかにならず、また、Xとの話合いが難しいことから、同人の派遣就業について、当面の見通しはもとより、雇用契約更新の前提となる、今後のXの労務提供が確保できるとの見通しも立たないと判断するに至ったことは、不合理とはいえない。また、同社がXの組合加入を認識した後、Xが労務提供を行わない期間が継続し、話合いにおけるXの回答等を踏まえて、上記判断を同社が見直さなかったことが、不自然であるとは認められない。
エ 以上のことから、①③及び②は組合運営に対する支配介入であるとは認められない。また、④の㋑㋒について、いずれも組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入に当たるとはいえず、⑤について、救済申立てを理由とする報復的不利益取扱いに当たるということはできない。
(2) Y2会社は、本件において、労組法上の使用者に当たるか。労組法上の使用者に当たる場合、同社がした各行為は不当労働行為に当たるか。
ア 雇用主以外の事業主であっても、当該労働者の基本的な労働条件等について、部分的とはいえ雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて労組法上の使用者に当たる。
また、労働者派遣における派遣先事業主は、派遣法の枠組み又は労働者派遣契約で定められた基本的事項を逸脱して労働者派遣が行われている場合や、派遣法上、派遣先事業主に一定の責任や義務が課されている部分を履行していない場合等については労組法第7条の使用者に該当する場合があり得、かかる場合には、上記の枠組みに基づき、派遣先事業主が、労働者の基本的な労働条件等について、部分的とはいえ雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるかを判断することになるものと解される。
イ Y2会社がした行為として挙げられているのは、①組合による平成31年4月9日付け団交申入れに応じなかったこと、②令和元年5月29日及び同年12月26日の組合との話合いにおける対応、③平成31年4月22日及び23日におけるXに対する対応、④Xを雇止めしたこと、⑤Xが求めた残留私物の返却と勤怠表の交付に応じなかったこと、⑥Xによるコンプライアンス窓口への通報に対し回答していないこと、⑦Xの取扱いに関する東京労働局からの行政指導に対する対応である。
このうち①②については、その議題をみれば、いずれも、Y1会社とXとの雇用契約関係の下で決定される事項であるか、Y2会社が雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあることを裏付けるとはいえない事項である。④は、Y1会社の行為であり、③⑤⑥⑦についても、Y2会社の行為とXの具体的な労働条件との関連を認めるに足りる事実の疎明がなされているとはいえず、また、同社が、派遣先の指揮命令権を行使する立場を超えて、部分的であっても、Xの何らかの労働条件を直接左右していたといえる事情を認めることはできない。
ウ 以上のとおり、Y2会社は、部分的であっても、Xの基本的な労働条件等を雇用主と同視できる程度に、現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえないから、その余を判断するまでもなく、同社は、X又は組合との関係において、労組法上の使用者に当たるとはいえず、したがって、各行為について個別に判断するまでもなく、Y2会社の各行為が不当労働行為に当たるとはいえない。 |
掲載文献 |
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