概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和5年(不再)第31号
京都暮らし応援ネットワーク不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
Y法人(「法人」) |
命令年月日 |
令和7年5月7日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、法人が、組合員Aからパワーハラスメントを受けている旨の従業員の申告を受け、両名の勤務時間が重ならないように出勤調整したことや、出勤調整に応じなかったAに対し懲戒処分を検討しているとして弁明書の提出を求める旨通知したこと(「本件通知」)等について、組合が謝罪や慰謝料の支払等を求めて団体交渉を申し入れた(「本件団交申入れ」)ところ、これに誠実に対応しなかったことが不当労働行為であるとして、組合が京都府労働委員会(「京都府労委」)に救済を申し立てた事案である。
2 京都府労委は、法人の対応は不当労働行為には当たらないとして、組合の救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 第1回団交ないし第3回団交における法人の対応について
組合は、第1回団交から第3回団交までの間において、法人が、①本件通知に係る問題を含めた経緯説明文書の作成について、一旦は受け入れた組合の要求を拒絶したこと、②出勤調整及び本件通知に係る謝罪について、約束したにもかかわらずこれを履行していないこと、③金銭の支払(カンパ)について、合意したにもかかわらず、これを撤回したことが誠実交渉義務違反であると主張するので、以下、検討する。
ア 経緯説明文書に関する法人の対応について
第1回団交において、法人が組合に対し、組合が主張する内容の経緯説明文書の案の作成を求めたものとは認められず、その後組合が作成した経緯説明文書の案に対し、本件通知の撤回及び謝罪並びに慰謝料の支払について、大筋の合意がない以上経緯説明文書の内容を詰めることができないとした法人の結論が特段不合理であるとはいえない。また、第2回団交を経て、法人は経緯説明文書の案を提示しており、その具体的な内容についてまで合意があったと認めることはできないことなどから、経緯説明文書に関する法人の対応は、誠実交渉義務に反するものとはいえない。
イ 謝罪に関する法人の対応について
法人の発言は、仮にAに恐怖を与えるなどの事実があったとしたら謝罪すると表明したものにすぎず、確定的に謝罪すると約束したものではない。また、第1回団交において、法人が組合に対し、出勤調整及び本件通知について謝罪するという確定的な約束をしたものとは認められないことなどから、謝罪に関する法人の対応は、誠実交渉義務に反するものとはいえない。
ウ 金銭の支払(カンパ)に関する法人の対応について
第3回団交において合意があったのは、カンパを呼び掛けるということにとどまり、カンパの性質上、結果として金銭が集まらなかったとしてもやむを得ないといわざるを得ないことに鑑みると、カンパに関する法人の対応が、誠実交渉義務に反するとまではいえない。
エ 以上のとおりであるから、第1回団交ないし第3回団交における法人の対応は、誠実交渉義務に反するものとはいえない。
(2) 第3回団交後の法人の対応について
ア 組合は、法人が組合に対して示した解決の方向に反対している理事の団交出席を求めるが、第1回団交から第3回団交まで、法人側は交渉権限のある者が出席していたと認められる上、法人の対応が誠実交渉義務に反するものとは認められないことからすれば、これまでの出席者以外の者が必ず出席しなければならないとはいえず、団交への出席者は従前のとおりであると回答した法人の対応が特段不誠実なものとは認められない。
イ 法人は、謝罪と経緯説明文書の案及び金銭的補償についての案(解決案)の提示に関する団交申入れについて、回答は従前のとおりであると繰り返したほか、団交の候補日時を示すよう求められたのに対し、出席予定者の調整がつかないため再調整させてほしいと回答したものの、結果として候補日時を示すには至らなかった。しかし、法人は、当該要求事項について既に一定の対応をしており、更に何らかの解決案の提示を求められたのに対し、従前のとおりであると回答したこともやむを得ないものといえ、組合も、法人からの解決案の提示がない限り団交ができないという回答を繰り返しており、これ以上団交を重ねても進展する見込みがない状態に至っていたといわざるを得ないことからすれば、団交の具体的な日程調整に至らなかったこともやむを得ないものといえる。
ウ 以上のとおりであるから、第3回団交後の法人の対応は、誠実交渉義務に反するものとは認められない。
(3) 結論
以上によれば、本件団交申入れに対する法人の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するものとは認められない。 |
掲載文献 |
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