概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和6年(不再)第2号
髙島屋不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和7年3月19日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が業務委託契約を締結していた申立外C社が雇用していた組合員Aの雇用関係等を協議事項とする組合からの団体交渉の申入れに対し、会社が、組合員Aと雇用関係にないとして応じなかったことが不当労働行為に該当するとして、組合が大阪府労働委員会に救済申立てをした事件である。
2 大阪府労働委員会は、会社は組合員Aの労働組合法(「労組法」)上の使用者に当たらないとして、救済申立てを棄却したところ、組合が再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1)会社は、組合員Aの労組法上の使用者に当たるか
ア 労組法第7条にいう「使用者」は、労働契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、必ずしも同雇用主に限定されるものではない。雇用主以外の者であっても、当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて同条にいう「使用者」に当たると解される。
組合は、組合員AがC社との雇用契約を終了せざるを得なくなったのは、会社がC社に対して組合員Aの雇用契約を終了するよう事実上指示したからであるといえるとして、組合員Aについて、会社からC社に対し、いつ、誰が、どのような話をしたのかなどについての説明を求め、団体交渉申入れをしており、C社における組合員Aの雇用終了につき会社による何らかの指示等があったものとして会社にその説明を求めて、団体交渉を申し入れたものである。
組合の主張は、組合員Aの雇用契約の終了についての事実上の指示をもって会社の使用者該当性を根拠付けようとするものといえるが、組合が求めた団体交渉事項との関係において、会社が組合員Aの労組法第7条の「使用者」であるというには、C社における組合員Aの雇用終了について、会社が雇用主であったC社と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたことが必要である。
イ 組合員Aは、C社から、雇用関係終了の申し入れを受け、その際、同社の人事担当者は、会社から組合員Aの勤務を終了するよう指示を受けた旨告げている。この点について、C社は、会社の担当者が、C社の担当者に対し、組合員Aの勤務態度について否定的な発言をしたこと等を受け、会社から事実上の指示があったと受け止め、上記のような説明をしたとしている。
しかしながら、会社が、組合員Aの勤務態度等について問題があると認識していたと認めるに足りる的確な証拠はない。
また、会社としては、仮に業務を円滑に遂行できていないC社の従業員がいると認識したとしても、C社において適切に指導を行うよう要請するなどし、C社がこれに対応して状況が改善されれば、業務委託契約の目的は達せられるのであり、当該従業員の会社での勤務を終了させるようC社に直ちに指示する必要があったとはいい難い。
その他の証拠を精査しても、会社の担当者がC社の担当者に対し、上記のような発言をしたことを裏付ける証拠はなく、かかる事実を認定することはできない。
以上のとおり、会社が組合員Aの雇用契約の終了について事実上の指示をしたと認めることはできず、その他にも、C社における組合員Aの雇用終了について、会社が雇用主であったC社と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたと認めるべき事情は見当たらないから、会社は、組合が求めた団体交渉事項との関係において、組合員Aの労組法上の使用者に当たらない。
(2)結論
組合からの団体交渉申入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為には該当しない。 |
掲載文献 |
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