労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和6年(不再)第7号
不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和7年2月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が、法人に対し、組合員Aに対する懲戒処分について団体交渉(「団交」)を申し入れたところ、令和3年7月28日、同年9月13日及び同年10月18日に実施した各団交(それぞれ「7.28団交」「9.13団交」「10.18団交」といい、これらを「本件団交」ということがある。)において、法人が、懲戒処分の手続等について、合理的・具体的に説明せず、それを説明できる立場にある者の団交への出席を拒否したことが、労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、組合が大阪府労働委員会に救済申立てをした事案である。

2 大阪府労働委員会は、本件団交における法人の対応は不当労働行為には当たらないとして、組合の救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 7.28団交について
ア 学長が調査委員会を設置した理由について説明を変遷させたほか、説明の根拠も示さなかったこと
 法人は、調査委員会設置の理由や根拠について、調査報告書の記載を前提に説明をするとともに、組合の各質問に回答しており、その内容に変遷はない。組合は、法人の回答を聞いた上で、追加の質問事項を予定している旨を述べ、協議続行を前提に同団交を終了しているから、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
イ 調査委員会が組合員Aに対し実質的に事情聴取の機会を与えなかったことについて説明拒否を繰り返したこと
 組合は、7.28団交において、調査委員会の設置に至るまでの事情や調査委員会を設置した学長の判断に疑問を呈するにとどまり、調査報告書の内容や調査委員会の手続に関する具体的な質疑に及んでおらず、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
ウ 審査委員会が組合員Aの陳述書による弁明について事実確認もせず考慮した形跡すらないことについて説明拒否を繰り返したこと
 上記イ記載のとおり、7.28団交において、組合は、調査委員会の設置に至るまでの事情や調査委員会を設置した学長の判断に疑問を呈するにとどまり、審査委員会内部での検討状況に関する具体的な質疑に及んでいないのみならず、組合が令和3年6月25日の団交(「6.25団交」)後に作成した「2021年6月25日 B大学団交 確認事項等」と題する書面にも、令和3年7月13日付け団交申入書にも、この議題が記載されていないことに鑑みれば、組合自身、7.28団交において協議することは想定していなかったことがうかがわれるから、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
エ 上記アからウの事項について説明できる人物である学長、調査委員会の委員長及び審査委員会の委員の団交への出席を拒否したこと
 組合は、6.25団交において、研究科長や学長、調査委員会委員長の団交への出席を要請する一方、同団交の終盤で、まずは研究科長に次回団交に参加してもらい事実確認をして基礎的な事実を固めたい旨述べ、次回団交に向けて法人から組合に提供してもらいたい資料を挙げるとともに、研究科長を名指しして次回団交への出席を求めている。
 法人は、この組合の求めに応じ、7.28団交において、研究科長を出席させ、組合の質問に応答させていたから、学長らを出席させなかったことが不誠実な対応であったとはいえない。
オ 以上から、7.28団交における法人の対応は、いずれも不誠実なものとはいえず、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。

(2) 9.13団交について
ア 調査委員会を設置した理由について説明を変遷させたほか、説明の根拠も示さなかったこと
 法人は、組合に対し、学長は、ハラスメントを訴えたことによる更なるハラスメントがあることが想定されたこと、C准教授が体調を崩して病院に行っているとの話があり、それがハラスメントに起因していることも考えられたことなどから、「緊急に対策を講じる必要がある」(ハラスメント防止規程第7条)と判断して調査委員会を設置した旨回答した。
 また、組合が、C准教授がハラスメントの訴えを取り下げ、法人が終わった問題であるかのような誤解を与えるような発言をしながら、他方で「緊急に対策を講じる必要がある」と判断したことに大きなギャップを感じる旨指摘したことについて、法人は、訴えの取下げがあったことと緊急性の問題は切り離して考える旨回答した。
 これらを踏まえると、9.13団交における法人の説明は、7.28団交での説明を組合の質問に応じて補充したものにすぎず、説明に変遷があるとは評価できない。したがって、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
イ 調査委員会が組合員Aに対し実質的に事情聴取の機会を与えなかったことについて説明拒否を繰り返したこと
 法人は調査報告書及び審査結果報告書の記載に基づいて組合の質問に回答し、それ以上の説明ができない理由についても説明しているから、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
ウ 審査委員会が組合員Aの陳述書による弁明について事実確認もせず考慮した形跡すらないことについて説明拒否を繰り返したこと
 法人が組合に交付した審査結果報告書には、陳述書の主張内容に応じて、パワハラ認定への影響の有無等に係る審査委員会の見解が判断根拠とともに記載されていた。また、法人は、9.13団交において、陳述書は審査委員会の中で議論された上で報告書にまとめられている旨述べ、上記イ記載のとおり、審査結果報告書の記載以上の説明ができない理由を説明していた。したがって、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
エ 上記アからウの事項について説明できる人物である学長、調査委員会の委員長及び審査委員会の委員の団交への出席を拒否したこと
 法人は、9.13団交において、自らの主張について説明をするとともに、組合の質問に回答し、回答できない事項についてはその理由を説明していることに鑑みれば、法人が学長を団交に出席させてそれ以上の説明をさせる必要があったとはいえず、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
オ 以上から、9.13団交における法人の対応は、いずれも不誠実なものとはいえず、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。

(3) 10.18団交について
ア 調査委員会を設置した理由について説明を変遷させたほか、説明の根拠も示さなかったこと
 組合が納得できないとしているのは、「緊急」(ハラスメント防止規程第7条)に関する法人の解釈が組合の理解と異なっているにすぎず、法人の対応が不誠実であったとはいえない。なお、組合は、法人が二次被害の生じる蓋然性を説明しておらず、二次被害防止の取組もしていない等と主張するが、これも同様に「緊急」の内容や程度に関する解釈が異なるにすぎず、法人は自らの見解を説明しているから、不誠実な対応であるとは評価できない。
イ 調査委員会が組合員Aに対し実質的に事情聴取の機会を与えなかったことについて説明拒否を繰り返したこと
 法人は、組合の指摘に対しても、根拠を示して反論しており、法人の対応が不誠実であったとはいえない。なお、組合は、法人が組合員Aに実質的な事情聴取の機会を与えていない旨主張するが、これは審査委員会の見解と異なる組合の見解を述べたものにすぎず、法人が団交で説明を尽くしていないとの評価につながる事情ではない。
ウ 審査委員会が組合員Aの陳述書による弁明について事実確認もせず考慮した形跡すらないことについて説明拒否を繰り返したこと
 法人は、10.18団交においても、9.13団交における説明と同旨の説明をしており、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
エ 上記アからウの事項について説明できる人物である学長、調査委員会の委員長及び審査委員会の委員の団交への出席を拒否したこと
 法人は、10.18団交において、自らの主張について説明をするとともに、組合の質問に回答し、回答できない事項についてはその理由を説明していることに鑑みれば、法人が学長らを団交に出席させてそれ以上の説明をさせる必要があったとはいえず、法人の対応が不誠実であったとはいえない。
オ 以上から、10.18団交における法人の対応は、いずれも不誠実なものとはいえず、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。

(4) 不当労働行為該当性
 以上のとおり、本件団交における法人の対応は、いずれも労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和4年(不)第8号 棄却 令和6年2月5日