概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和4年(不)第8号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和6年2月5日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、組合員Aの懲戒処分に関する団体交渉における処分の手続等についての法人の説明や、それを説明できる立場にある者を団体交渉に出席させなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
○組合員Aに対する懲戒処分を議題とする令和3年7月28日、9月13日及び10月18日の団体交渉(以下「本件団体交渉」)における法人の対応は不誠実団体交渉に当たるか(争点)
1 令和3年6月4日、組合は、法人に対し、Aの組合加入を通知するとともに、Aに対する懲戒処分について法人に団体交渉申入れを行い、本件団体交渉において、組合と法人の間で、Aに対する懲戒処分〔注〕を議題として協議が行われたことが認められる。この議題は、組合員の労働条件その他の処遇に該当するものであるから、義務的団体交渉事項である。
〔注〕法人は、令和2年3月23日付けで准教授Cからハラスメント相談窓口に、A(法人が事務補助員として雇用)ほかからハラスメントを受けているとの相談がなされて以降、ハラスメント調査委員会(以下「調査委員会」)による調査、懲戒等審査委員会(以下「審査委員会」)における審査を経て、同年10月7日、Aに対し、戒告の懲戒処分を行っている。
2 本件団体交渉における法人の対応について
(1)「本件団体交渉において、調査委員会を設置した理由について説明を変遷させ、説明の根拠も示さなかった法人の対応が、不誠実団体交渉に当たる」旨の組合主張について
法人は、本件団体交渉に先立って、調査委員会を設置した経緯について具体的に記載された調査報告書を組合に提供した上で、本件団体交渉において、調査委員会を設置した理由について、組合の質問に対し、具体的な説明をして回答しており、自らの主張について組合の納得を得るべく努めていたとみるべきであって、組合の主張は採用できない。
(2)「Aに対し調査委員会で事情聴取の機会を与えなかった理由の説明は調査報告書には一切なく、説明が尽くされているとは考えられないにもかかわらず、『調査報告書に記載されていることが全てで、調査委員会の意思形成過程や内容については答えられない』として、説明拒否を繰り返した法人の対応が、不誠実団体交渉に当たる」旨の組合主張について
確かに、令和3年9月13日及び10月18日の団体交渉において、組合が、「調査委員会では当然Aに弁明の機会は与えられるべきであり、手続だけでなく議論の中身も分からないことがたくさんある」旨述べて、調査委員会の委員長等が団体交渉に出席して説明するよう要求したのに対して、法人は、「調査報告書が調査委員会で議論した結果であり、委員長の団体交渉への出席は考えていない」旨述べたことが認められる。
しかし、法人は、本件団体交渉に先立って、調査委員会でAの事情聴取をしなかった経緯や、審査委員会がそのことをどう判断したかについての説明を記載した調査報告書及び審査結果報告書を組合に提供した上で、本件団体交渉において、調査委員会でAの事情聴取をしなかったことに係る自らの主張について、具体的に説明をし、組合の納得を得ようと努めていたとみるべきであって、組合の主張は採用できない。
(3)「審査委員会におけるAの陳述書による弁明の検討状況について、審査結果報告書に記載されていることが全てで、審査委員会の意思形成過程や内容については答えられないとして、説明拒否を繰り返した法人の対応が、不誠実団体交渉に当たる」旨の組合主張について
法人は、本件団体交渉に先立って、審査委員会においてAの弁明をどう考慮したのかについての説明を記載した審査結果報告書を組合に提供した上で、本件団体交渉において、審査委員会においてAの陳述書による弁明がどのように考慮されたのかに係る自らの主張について、具体的に説明をし、組合の納得を得ようと努めていたとみるべきであって、組合の主張は採用できない。
(4)「前記(1)、(2)、(3)の各事項について、それぞれ説明できる立場にある学長並びに調査委員会及び審査委員会の委員長を団体交渉に出席させなかった法人の対応が不誠実団体交渉に当たる」旨の組合主張について
本件団体交渉において、法人は上記各事項に係る自らの主張について組合の納得を得ようと努めており、その対応が不誠実団体交渉に当たるとする組合の主張は採用できないから、法人が学長らを団体交渉に出席させてそれ以上の説明をさせる必要があったとはいえず、組合の主張は、採用できない。
3 以上から、Aに対する懲戒処分を議題とする本件団体交渉における法人の対応は不誠実団体交渉に当たるとはいえず、本件申立ては、棄却する。 |