労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和3年(不再)第32号
協進商会不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社(「会社」) 
再審査被申立人  X組合(「組合」) 
命令年月日  令和7年2月3日 
命令区分  全部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、①平成28年5月16日にX組合のA組合員の勤務場所が閉鎖された以降、会社がA組合員を就労させなかったこと、②組合が申し入れたA組合員の就労等に関する団交(「本件団交申入れ」)に会社が応じなかったことが不当労働行為であるとして、組合らが岡山県労働委員会(「岡山県労委」)に救済申立て(「本件初審申立て」)をした事案である。

2 岡山県労委は、会社の上記1②の行為は労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に該当すると判断し、会社に、団交応諾及び文書手交を命じ、組合らのその余の申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  初審命令主文第1項及び第2項を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 本件団交申入れに会社が応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか
ア 会社は、団交において組合から不適切な言動が多数あり、話合いをすること自体が困難であったと主張するところ、団交での組合の対応には、組合として自省すべき点はあるが、会社がこれらのことを理由として団交に応じないことに正当性があるとは認められない。
イ 会社は、A組合員の就労の意思に疑問がある以上、当該就労の意思を確認してからでなければ、労働条件について話合いの場を設ける意味も乏しいと主張するが、組合やA組合員は、A組合員に就労の意思があることを明確に示しており、少なくとも、同意思を改めて確認しなければ交渉を継続することが困難な状況にあったとまではいえない。
ウ 会社は、岡山県労委であっせんが行われたことをもって団交に応じたと評価すべき旨主張するが、同あっせんは、実質的な団交であったとは評価できないから、既に実質的な団交が行われたとして本件団交申入れに応じなかったことに正当性は認められない。
エ 以上のとおり、会社は、本件団交申入れに応じていないところ、その理由に正当性は認められないから、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。

(2) 本件団交申入れに会社が応じなかったことが不当労働行為に該当する場合、救済の利益は認められるか
ア 初審命令交付後の7回の団交において、会社は、交渉事項であるA組合員の労働条件について、団交の度に同人のシフト表の案を提示し、組合の要求に応じて、同シフト案の趣旨、会社の状況について説明し、譲歩できる点は譲歩し、応じることができない場合についてはその理由を説明し、要求された資料についても必要に応じて提示するなど、説明を尽くした上で、初審命令で指摘された不誠実な交渉態度に出ることなく、組合との合意達成の可能性を模索し続けていたとみるべきであるから、初審命令交付後の団交を全体としてみれば、会社は誠実に応じていたというべきである。
イ 初審命令交付後の団交において、組合は、自己の立場に固執し、必須であるとは認めがたい資料の提出や説明を求め続け、会社の回答内容に組合の意に沿わない点があれば、それを執拗に糾弾するなどしており、これらの点について組合自身の納得が得られない限り、A組合員のシフトの交渉に入れない状況にあったと認められる。組合のかかる対応は、高齢のA組合員の勤務を速やかに実現するという本件団交申入れの本来的な趣旨ないし目的と整合しないものであり、これがA組合員の具体的なシフトについて協議が進まなかった大きな要因であったといわざるを得ない。こうした組合の頑なな交渉態度により、7回目の団交の時点では、もはや会社と組合との間で交渉が膠着し、進展する見込みがなくなっていたと評価するのが相当である。
ウ 以上、総合的に勘案すれば、会社は、初審命令交付後、初審命令において正当性のない団交拒否理由として指摘された行為を改めた上で、誠実団交義務を果たしており、かつ、組合の頑なな交渉態度により団交が進展する見込みはなくなっているといえるから、もはや会社が本件団交申入れに応じる必要性はない。また、上記ア及びイでみた経緯に照らすと、会社が同種の団交義務違反を再び繰り返すおそれも認められない。そうすると、本件については、会社が本件団交申入れを拒否したことによって生じた組合の団結権侵害の状況は既に是正されているといえるから、救済の利益は失われたというべきである。よって、初審命令主文第1項の団交応諾命令はもとより、本件労使関係において同種の行為の再発を抑制する趣旨である同第2項の文書手交命令も改めて命じる必要性はない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
岡山県労委令和2年(不)第1号 一部救済 令和3年7月29日