労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和4年(不再)第30号・第31号
奈良生駒生コン不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X1組合・X2組合(30号)(「組合ら」)、Y会社(31号)(「会社」) 
再審査被申立人  Y会社(30号)(「会社」)、X1組合・X2組合(31号)(「組合ら」) 
命令年月日  令和6年11月20日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①X2組合組合員のA1ら11名及びA2センターに所属する組合らの組合員(A3分会員)2名に対し、X2組合ないしX1組合からの脱退を勧奨したこと、②X1組合が労働者供給事業を行っているA2センターに対し、令和2年3月26日分以降、日々雇用で就労するA3分会員の供給を依頼しなかったこと(「本件供給依頼停止」)、③令和2年3月31日以降、A1を会社で就労させていないことが不当労働行為に該当するとして、X1組合及びX2組合(併せて「組合ら」)が大阪府労働委員会(「大阪府労委」)に救済申立てをした事件である。

2 初審大阪府労委は、A1に対する脱退勧奨は労働組合法(「労組法」)第7条第3号の不当労働行為に該当すると判断し、会社に文書交付を命じ、組合らのその余の申立てを棄却したところ、会社及び組合らは、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。
 
命令主文要旨  (1) 初審命令主文を次のとおり変更する。
ア 会社は、X2組合組合員A1について、就労の依頼を再開しなければならない。
イ 文書交付
ウ その余のX2組合の本件救済申立てを棄却する。
エ X1組合の本件救済申立てを棄却する。
(2) 会社の再審査申立てを棄却する。
 
判断の要旨  (1) A1ら本件X2組合組合員11名及び本件A3分会員2名に対しX2組合ないしX1組合からの脱退を勧奨したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか
 A1ら本件X2組合組合員11名及び本件A3分会員2名のうち、脱退勧奨が行われたと認められるのはA1のみであり、A1に対しては、令和元年9月上旬から中旬頃、B1工場長が、生活があるだろうから組合を辞めてうちに来ないか、いったん組合を脱退して情勢が変わればまた組合に戻ったらいいのではないかと述べたことがあった。会社は、X2組合組合員について、X2組合を脱退した者は雇用を継続するが、X2組合を脱退しない者は雇用を打ち切ることにしていたことからすると、このような会社の方針に沿った上記発言は、会社の意を体してされたものといえる。したがって、A1に対する脱退勧奨は、X2組合に対する支配介入であって、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。

(2) 本件供給依頼停止は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか
 会社が、A2センターからミキサー車運転手の供給を受けるようになってからの期間はわずか約2年6か月に過ぎないことに鑑みると、本件供給依頼停止当時、A2センターからの供給によって会社に日々雇用されたことのあるA3分会員の集団(「A3分会員集団」)は、本件供給依頼停止以前と同様に、近い将来においても、そのうちのだれかと会社との間で日々雇用の労働契約が短い間隔を置きつつも成立することにより、継続して就労ができる現実的かつ具体的な可能性を有していたとはいえない。そうすると、本件供給依頼停止は、A3分会員集団に属するA3分会員にとって、そのうちのだれかと会社との間で日々雇用の労働契約が成立して日々雇用される現実的かつ具体的な可能性を失わせるものではないから、不利益取扱いに該当し得ず、また、組合らの運営に対して支配または介入するものとはいえないから、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たらない。

(3) 令和2年3月31日以降、組合員A1を会社で就労させていないことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか
 会社から直接就労を依頼されて日々雇用されているX2組合組合員のA1及びA4ら9名の就労期間及び就労実績をみる限り、会社がA1をA4ら9名と別異に取り扱うべき事情は窺われず、A1が、A4ら9名と同様に、令和2年3月31日以降も会社での就労を依頼されることにつき一定の期待を有していても不合理とまではいえない。そして、会社は、日々雇用のX2組合組合員について、X2組合を脱退した者は雇用を継続するが、X2組合を脱退しない者は雇用を打ち切ることにしていたことからすると、会社が、X2組合を脱退したA4ら9名は就労させながら、A1を就労させていないことは、A1がX2組合組合員であることを理由に差別的に取り扱ったものといえる。したがって、会社が、令和2年3月31日以降、A1を会社で就労させていないことは、A1がX2組合組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、X2組合の弱体化を図る支配介入であるから、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和2年(不)第29号 一部救済 令和4年7月15日