概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和5年(不再)第24号・第27号
不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y会社(24号)(「会社」)、X組合(27号)(「組合」) |
再審査被申立人 |
X組合(24号)(「組合」)、Y会社(27号)(「会社」) |
命令年月日 |
令和7年1月8日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、①会社が、組合からの令和3年10月12日付け団体交渉申入れに応じなかったこと、②会社が、同月18日から同年12月17日までの間、組合の組合員であることを理由として、会社従業員であるAら2名に対し自宅待機を命じたこと、③会社代表者であるB社長が、同年11月22日、B社長ら3名とAら2名との面談(3.11.22面談)において、組合を労働組合と思っていないなどと発言したこと、④会社が、組合に対して同月25日付け回答書(3.11.25会社回答書)を送付し、同文書において、組合の活動を「暴力的・脅迫的労働組合活動」などと非難したこと、⑤会社が、Aら2名の組合脱退に先立ち、両名に対して組合からの脱退勧奨を行ったこと、⑥会社が、同月21日、申立外会社の創業40周年を記念するパーティー(3.11.21記念パーティー)に、会社従業員の中でAら2名のみを招待しなかったことが不当労働行為に該当するとして、組合が大阪府労働委員会に救済申立て(本件申立て)をした事件である。
2 大阪府労働委員会は、上記1①、②、③及び⑥の会社の各行為が不当労働行為に当たると認め、会社に対し組合への文書交付を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社及び組合は、それぞれ再審査を申し立てた。 |
命令主文要旨 |
(1) 初審命令中、上記1④及び⑤のうちB社長がAら2名に対して3.11.22面談において組合からの脱退勧奨を行ったことについて救済申立てを棄却した部分を取り消し、会社に対し組合への文書交付を命じ、その余の組合の救済申立てを棄却する。
(2) 会社の再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 団体交渉申入れに対する会社の対応について
会社は、組合が組合員の賃金といった基本的な労働条件に関する要求・交渉事項に係る団体交渉を申し入れたにもかかわらず、組合を労働組合として認めないなどと記載した3.11.25会社回答書を送付して団体交渉に応じず、その後も本件申立てに至るまで団体交渉に応じなかった。このような会社の一連の対応は、労働組合法(労組法)第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たる。
(2) 会社がAら2名に自宅待機を命じたことについて
ア 労組法第7条第1号該当性
Aら2名に対する自宅待機が命じられるようになったのは、組合が会社に両名の加入を通知した6日後という近接した時期であった。また、B社長は、申立外C協同組合の会議において、Aら2名が組合に加入したことを確認した上で自宅待機としたと発言している上、3.11.22面談においても、両名に対し、組合に対する批判的意見や、C協同組合においても組合とは関わらない、会わない、一切の関係を持たないし付き合わないことになっている旨を述べるなどした後、「だから自宅待機やねん。」と述べている。そして、会社は、Aら2名が組合から脱退したことを確認した上で、両名に対する自宅待機命令を解除している。これらの事実から、会社が、Aら2名が組合に加入したことを理由として、両名に自宅待機を命じたことは明らかであり、両名に対する自宅待機命令は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
イ 労組法第7条第3号該当性
Aら2名に対する自宅待機命令は、組合と会社が対立する中で、組合員であることを理由として不利益を被ることを知らしめて、組合への加入を思い留まらせ、又は組合員に対し組合からの脱退の動機付けとなるなど、組合の組織力を低下させる効果を有するといえるから、労組法第7条第3号の支配介入にも該当する。
(3) 3.11.22面談における会社代表者の発言について
3.11.22面談におけるB社長の発言は、自宅待機を命じられているさなかにあったAら2名を呼び出し、会社の代表者が自ら組合の存在意義を否定して非難し、組合の申し入れた団体交渉に応じる意思がないこと及び両名が組合の組合員であるため自宅待機を命じていることを告げ、組合に所属し活動することによりかえって会社において不利益を受ける旨を伝えるものであって、これは、両名をして、組合に所属し続けて組合活動をすることを躊躇させる言動であり、下記(5)のとおり暗に組合から脱退することを勧める効果をも有するものであったといえ、組合の存在及びその活動を否定する不当な非難というべきであるし、組合員に対する不利益が示唆されており、組合員に対し威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に重大な支障を来すものと評価される。
したがって、3.11.22面談における会社代表者の発言は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
(4) 会社が3.11.25会社回答書を組合に送付したことについて
3.11.25会社回答書の内容のうち、組合を憲法や労組法で保護された労働組合とは認めない旨の記載は、組合の存在意義を否定するものであるし、会社が組合の幹部が刷新されることを団体交渉の条件とすることは組合の運営への干渉ないし妨害に当たるものといえる。また、組合の活動を暴力的・脅迫的労働組合活動と記載したことも、不穏当な表現を用いて殊更に組合活動を非難したものといえる。
したがって、会社が3.11.25会社回答書を組合に送付したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
(5) Aら2名に対する脱退勧奨について
上記(3)のとおり、3.11.22面談における会社代表者の発言は、Aら2名に対し、組合からの脱退勧奨を行ったものといえ、かかる会社の行為は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
(6) 会社が3.11.21記念パーティーにAら2名を招待しなかったことについて
3.11.21記念パーティーを主催していたのは、申立外会社又は同パーティーの実行委員会であったとうかがわれるが、会社は、同パーティーの招待者からAら2名を除外したと認められ、そのような意味において、会社が両名を招待しなかったと評価できる。
会社は、令和3年9月頃にAら2名を含む会社の全従業員に3.11.21記念パーティーへの参加の意思を確認し、当初、Aら2名も同パーティーの招待者に含めていたものの、両名が組合に加入したとの通知を受け、同パーティーに組合員である両名を招待しなかったのであり、B社長自身、組合の組合員である両名を同パーティーに出席させてC協同組合の関係者と同席させるのを避けるため、両名を出席させないこととした旨陳述しているから、会社が同パーティーに両名を招待しなかったことは、組合の組合員であることの故をもって行われたものといえる。
以上のとおり、会社が3.11.21記念パーティーにAら2名を招待しなかったことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。 |
掲載文献 |
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