労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛知県労委令和5年(不)第7号
不当労働行為審査事件 
申立人  Xユニオン(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和6年12月9日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合員A1ではなく、乗務員Cを会社F部門のトレーラー乗務に従事させたこと、②A1に対し、計2日間の配車について連絡しなかったこと、③組合員A2に対し、他のトレーラー乗務員よりも低い業績給を支給したこと、④A1の妻がF部門の求人に応募したところ、夫婦は同じ部署で働けないとして採用手続を行わなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 愛知県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社による以下の行為は、それぞれ労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。

(1)組合員A1が令和5年3月1日に会社のF部門に復帰した後も、A1をトレーラー乗務に従事させていないこと(争点1-1)

ア 単車乗務員の平均賃金はトレーラー乗務員に比べて月当たり10万円から20万円程度低く、トレーラーに乗務させないことは不利益な取扱いといえる。
 そこで、会社がA1をトレーラーに乗務させないことについて、不当労働行為意思が認められるか否かについて検討する。

イ F部門のトレーラー乗務員の選定については、①単車乗務の経験、けん引免許の保有、②所属長にトレーラー乗務の希望を出していること等を考慮して行われる。
 そして、事実関係をみるに、A1がF部門に復帰した際、単車の乗務員を含むF部門の乗務員のうち新たに一人のトレーラー乗務員を選定するに当たり、会社は、乗務経験年数が長く、現にF部門で直近の約3年間単車に乗務し、A1が復帰した時点でトレーラー乗務を希望していた乗務員Cを乗務させ、F部門に復帰して間もないA1をトレーラーではなく単車に乗務させたものといえ、このことは、選定基準に沿うものといえる。
 なお、会社は、トレーラー乗務経験がある乗務員Cについても、F部門に復帰後すぐにはトレーラーに乗務させておらず、このことは、A1に対する取扱いと附合しており、組合員であるか否かを理由とした取扱いをしているとはいえない。

ウ そうすると、会社がA1をトレーラーに乗務させないことについて、会社に不当労働行為意思は認められない。
 したがって、会社の対応は、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いには該当せず、また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められないから、同条第3号の支配介入にも該当しない。

(2)令和5年5月2日及び13日、A1に対し、配車に関する連絡を行わなかったこと(争点1-2)

ア ①令和5年5月時点において、乗務員に対する配車に関する連絡は、単車については部長B1が行い、B1が対応できないときは係長B2が行っていたこと、②A1に対しては、係長B2との関係等を考慮して、部長B1が連絡することとしていたこと、③同年5月2日及び13日は、係長B2が単車の配車に関する連絡を行っていたが、部長B1はA1への連絡を行わなかったこと、④会社は、A1以外の乗務員に対し、配車に関する連絡を忘れたことはなかったこと並びに⑤同年8月19日の団体交渉において、組合が自ら「B1さんは、ユニオンでもユニオンじゃなくても、仕事がちゃんといけばいいんでしょう」と質問したのに対し、部長B1は「そうですね」と答えたことが認められる。

イ 令和5年5月2日及び13日、部長B1がA1に配車に関する連絡をしなかったことについては、①両日は、単車の配車に関する連絡を係長B2が行っていたが、A1に対しては、例外的に部長B1が連絡を行う必要があったという特殊な事情が認められ、また、②組合と部長B1との上記アのやり取りからすると、部長B1には、配車について組合の組合員と他の乗務員を区別する意図は認められないことから、「当日の連絡漏れは配車連絡に関しての例外的な対応をしていた故の部長B1によるミスであ」るとの会社の主張は不合理とはいえない。
 そうすると、会社がA1に対し配車に関する連絡を2度行わなかったことは、会社の管理運営上大きな問題があったとはいえ、不当労働行為意思に基づくものとまではいえない。

ウ したがって、会社の対応は、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いには該当せず、また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められないから、同条第3号の支配介入にも該当しない。

2 会社は、組合員A2に対し、令和5年4月から9月までの各月分業績給として、他のトレーラー乗務員よりも低い金額を支給し続けたか。このことは、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点2)

(1)①F部門のトレーラー乗務員のうちA2以外の11人のものには組合の組合員はおらず、②A2の令和5年4月から9月までの各月分の業績給は、F部門のトレーラーの乗務員のうち上から8番目、10番目又は12番目であった。

(2)業績給は、距離等に応じて配達先ごとに金額が定められ、配達先は、配達物、配達先との距離、乗務員の有給休暇取得日、乗務員が配車を控えるよう希望した日等を考慮して、配車係が指定している。
 また、F部門のトレーラー乗務員の令和5年5月の出勤日数は、A2が16日であるのに対し、A2以外の11人の乗務員は21日から26日であり、また、平成25年10月から令和5年10月頃まで、A2の有給休暇取得日及び配車を控えるよう希望した日は、他のトレーラー乗務員と比較して多かった。

(3)まず、令和5年5月のA2の業績給がF部門のトレーラー乗務員の中で最も低かったのは、ひとえにA2の出勤日数が最も少なく乗務の機会も少なくなったことが原因といえる。
 次に、同年4月及び6月から9月までのA2の業績給は、F部門のトレーラー乗務員のうち上から8番目又は10番目であり、相対的に低いとはいえるが、他の乗務員と比較して著しく低いとはいえない。また、平成25年10月から令和5年10月頃まで、A2の有給休暇取得日及び配車を控えるよう希望した日が他のトレーラー乗務員と比較して多かったことからすると、会社としては、他のトレーラー乗務員に比べてA2に配車を行うことが困難であったといえる。

(4)これらから、令和5年4月から9月までのA2の業績給が相対的に低かったのは、会社の不当労働行為意思によるものとまではいえないから、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いには該当せず、また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められないから、同条第3号の支配介入にも該当しない。

3 A1の妻が会社の求人に応募したのに対し、会社の部長B1は、夫婦は同じ部署で働けない旨述べて、採用手続を行わなかったか。このことは、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点3)

(1)会社は、F部門の単車の乗務員を募集したところ、組合員A3から「乗務を希望する女性がいるので話を聞かせてほしい」旨の相談があり、A1の妻らと面談をしたが、その採用手続に入らなかった。また、①令和5年に会社の社員の紹介により応募した者のうち半数が採用されなかったこと及び②組合の組合員が紹介した者を会社が採用することについて組合と会社との間で合意はされていないことから、会社の社員の紹介により応募したとしても、必ずしも採用されるわけではなく、また、会社は、A1の妻を採用しなければならないわけではないといえる。

(2)組合は、「『夫婦は同じ部署で働けない』との会社の説明は、事実ではなく不合理であって、このような不合理な理由で採用手続を行わなかったことは、不当労働行為意思によるものである」旨主張する。
 この点、部長B1は、一般論として、「夫婦が同じ部署となると例えば冠婚葬祭等のときに夫婦二人とも休まざるを得なくなるから別部署として希望するほうが良いかもしれない」旨述べており、及び会社には夫婦で働いている乗務員は(過去を含めて)いない。
 会社が一般論として説明した上記内容が不合理であるか否かはともかく、実際に会社には夫婦で働いている乗務員は(過去を含めて)いないことから、A1の妻が採用されなかったとしても、他の乗務員と組合の組合員との間での異なる取扱いとはいえない。

(3)これらから、A1の妻が会社の求人に応募したのに対し、部長B1が夫婦は同じ部署で働けない旨を述べて採用手続を行わなかったことは、不当労働行為意思によるものとはいえないから、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いには該当せず、また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められないから、同条第3号の支配介入にも該当しない。 

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