概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和5年(不再)第3号
夢kitchen不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y会社(「会社」) |
再審査被申立人 |
X組合(「組合」) |
命令年月日 |
令和6年10月2日 |
命令区分 |
却下・一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、①会社が組合員A1及びA2が組合に加入したことを理由に、両組合員の残業に対する賃金の支払に応じなかったこと、②会社が団体交渉において、組合が要求している資料を提示せず、その理由を具体的に説明しなかったこと、③団体交渉において、会社の代表取締役が恫喝的な言動を行ったこと、④会社が、組合に対し、会社と組合との間の紛争が終結した旨の文書(「紛争終結書面」)の提出を求めたことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審奈良県労委は、上記1②及び④の行為が不当労働行為に当たるとして、会社に誠実団体交渉応諾、上記1④の行為が不当労働行為であることの確認、及び文書手交を命じ、組合のその余の救済申立てを棄却したところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。 |
命令主文要旨 |
(1) 初審命令主文第2項(上記1④の行為が不当労働行為であることの確認)及び第3項中(文書手交)、会社が、組合に対し、紛争終結書面の提出を求めたことに係る部分を取り消し、同部分に係る救済申立てを却下する。
(2) 初審命令主文第1項(誠実団体交渉応諾)及び第3項(文書手交)を変更し、文書交付を命ずる。 |
判断の要旨 |
(1) 争点1(会社は、団体交渉において、組合の要求している資料を提示しなかったか、しなかった場合の本件団交における会社の対応は、労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に該当するか)について
ア 組合が会社に対し、団体交渉での提示や説明を求めたと認められる資料及び記録に係る事項(「本件要求資料等」)は、それぞれ本件の団体交渉事項との関連性を有するものであるから、会社は、本件要求資料等について団体交渉に必要な範囲でこれを提示し、提示できない場合にはその理由を具体的に説明し、また、組合から会社の回答に対して更なる説明を求められた場合には誠意をもってこれに対応するなどして、誠実に対応する必要がある。
イ 会社は、組合からのタイムカードの提示要求に係る第2回から第5回までの団体交渉及び組合員A1の令和2年3月以前の出勤簿の提示要求に係る第3回から第6回までの団体交渉において、これらの資料を提示できない理由を具体的に説明したとは認められず、組合から会社の回答に対して更なる説明を求められた場合にも誠意をもってこれに対応するなどしたとも認められない。また、会社は、組合からの組合員A2の賃金支払の記録の提示要求に係る第3回から第6回までの団体交渉において、賃金台帳を提示せず、その理由を説明したとも認められない。したがって、組合のタイムカードの提示要求に係る第2回から第5回までの団体交渉並びに組合員A1の令和2年3月以前の出勤簿及び組合員A2の賃金支払の記録の提示要求に係る第3回から第6回までの団体交渉における会社の不誠実な対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(2) 争点2(会社が組合に対して紛争終結書面の提出を求めたことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか)について
会社が組合に対して紛争終結書面の提出を求めた文書の送付行為は、組合が奈良県労委に救済申立てをした日から1年より前に行われたものである。文書の送付行為は一個の行為として完結しているから、紛争終結書面の提出を求めた行為もこれにより完結しており、また、会社が文書を送付した後のあっせんや団体交渉において紛争終結書面の提出を組合に求めたと認めるに足りる証拠はないから、会社が文書で紛争終結書面の提出を求めた行為は、労組法第27条第2項の「継続する行為」には該当しない。
したがって、会社が組合に対して紛争終結書面の提出を求めたことに係る本件救済申立ては、労組法第27条第2項の申立期間を徒過したもので、不適法として却下を免れない。 |
掲載文献 |
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