概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和4年(不再)第18号
ユナイテッド・エアーラインズ不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X1組合、X2組合(併せて「組合」) |
再審査被申立人 |
Y会社 |
命令年月日 |
令和6年6月5日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、B会社(Y会社に吸収合併)が、①事業所を閉鎖し、早期退職プログラムや地上職への配転の提案に応じなかった組合員を平成28年5月31日付けで解雇したこと(本件解雇)及び②組合の組合員に対するプロフィット・シェアの支給率を、別組合の組合員である従業員に対する支給率よりも低くしたことが不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労働委員会は、本件解雇及びプロフィット・シェアの支給は、いずれも労働組合法(労組法)第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為には当たらないとして、組合の救済申立てを棄却したところ、組合は再審査を申し立てた。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
(1) B会社が組合員を平成28年5月31日付けで解雇したことは、労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に当たるか
ア B会社とY会社グループ各社との一体的検討の当否
組合は、本件解雇が不当労働行為に当たるかについて、B会社とYグループ各社を一体として検討すべきであると主張するが、B会社は、自ら客室乗務員(FA)を雇用し、所属するFAの労働条件に関する団体交渉等を含む人事労務管理等を独自に行い、業務遂行に関しても他のYグループ各社から指示・命令を受けることなく独立して行っていたのであって、B会社とYグループ各社が一体であったとはいえないから、不当労働行為意思の有無や、本件解雇に相応の根拠や対応があったかなどについての検討はB会社単体で行う。
イ 組合嫌悪の意図の有無
組合とB会社及びY会社を含むYグループとは、組合が数次にわたり不当労働行為救済申立てを行うような対立関係があり、B会社が成田ベース閉鎖を表明した平成28年2月当時、プロフィット・シェアをめぐって対立していたことが認められるものの、さらに進んで、B会社が組合嫌悪の意図に基づいて組合に対する支配介入等を長期間断続的に行っていたと認めるに足りる証拠はなく、B会社が組合を嫌悪し、差別・攻撃していたとは認められない。
ウ 本件解雇が組合の組合員を排除するための解雇であったか
Y会社及びB会社と別組合は、Y会社とB会社の合併に向けて、各社で異なっていたFAの労働条件を統一する労働協約(統一労働協約)を締結すべく交渉していた。組合は、本件解雇は、統一労働協約に別組合の組合員ではないFAは乗務できないというフォーリンナショナル条項が含まれれば、組合差別等の問題が生じ得るとの認識のもと、統一労働協約締結前に組合の組合員を排除することを優越的な動機として行われたと主張するが、統一労働協約の交渉過程において、フォーリンナショナル条項についての労使の意見は対立しており、B会社はフォーリンナショナルの乗務を制限しない旨の提案をしていたと認められ、組合の組合員を排除することはB会社の意図するところではなかったといえる。また、成田ベース閉鎖の表明当時及び本件解雇の当時のみならず、本件解雇の効力発生後も、Y会社及びB会社と別組合との間では、労使が対立して交渉が難航し、統一労働協約の締結に至るかどうか不透明な状態が続いていたと認められる。他方で、下記エのとおり、B会社が成田ベースを閉鎖し同ベース所属のFAのFAとしての業務を終了させるとの判断に至る事情があったことからすると、統一労働協約締結前に組合員を排除することを優越的な動機として本件解雇を決定したと認めることはできない。
エ 成田ベースの閉鎖及びこれに伴う本件解雇が経営上の相応の根拠がないものであったか
B会社において、特に成田ベース所属のFAの業務量が減少する中、成田ベースを維持して所属するFAを雇用・乗務させる場合に要する費用や生産性を考慮し、閉鎖を決定したことは経営判断として不合理であったとはいえず、成田ベースを閉鎖すれば同ベース所属のFAが乗務すべきフライトが消滅することとなるから、早期退職プログラム提案及び地上職への配転の提案という措置を講じた上で、これらの提案に応じなかった成田ベース所属のFAを解雇したことは不合理とはいえず、成田ベースの閉鎖及びこれに伴う本件解雇に経営上の相応の根拠がなかったとはいえない。
オ 成田ベースの閉鎖及びこれに伴う本件解雇に際し、B会社が相応の対応を欠いていたか
CMIは、組合に対し、成田ベースの閉鎖を表明した後、通常退職金に加えて特別退職金を支給するという条件での早期退職を提案し、組合との交渉の中で特別退職金を増額し、最終的に20か月分支払うこととしたほか、FAとしての年収水準を維持した上での地上職への配転を提案していたのであるから、成田ベースの閉鎖及びこれに伴う本件解雇に際し、相応の対応をしなかったとはいえない。
カ B会社の団体交渉態度が不誠実であったか
成田ベース閉鎖及びこれに伴うFAとしての業務終了等をめぐるB会社の団体交渉態度が不誠実であったとは認められない。
キ 結論
B会社による本件解雇は、B会社が組合を嫌悪・差別し、組合の組合員を排除しようという不当労働行為意思に基づき行ったものとはいえず、労組法第7条第1号の不利益取扱いにも、同条第3号の支配介入にも当たらない。
(2) B会社が組合の組合員に対して平成29年2月14日付けで支給したプロフィット・シェアについて、その支給率を別組合の組合員より低くしたことは、労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に当たるか
平成29年2月14日にB会社が支給したプロフィット・シェアの支給率は、前年5月末まで成田ベース所属のFAであった組合の組合員については、成田ベース所属の管理職や非組合員と同じであり、所属する労働組合がB会社との間でプロフィット・シェアについて労働協約を締結していないグアムベース所属の従業員とも同じであった。
加えて、賞与の決め方など全体的に賃金体系が異なる成田ベース所属のFAとグアムベース所属のFAとの間では、プロフィット・シェアの支給率の違いが直ちに組合間差別であるということはできないこと、また、組合と別組合とのプロフィット・シェアに係る労働協約の有無の違いについて、いわゆる中立保持義務違反をうかがわせるような事情は認められないこと、さらに、B会社がかかるプロフィット・シェアの支給率に関する団体交渉に誠実に応じず一方的に決定したともいえないことを考慮すると、B会社が、組合の組合員に対して平成29年2月14日付けで支給したプロフィット・シェアについて、支給率を別組合の組合員より低くしたことは、組合の組合員であることを理由とするものとはいえないのであり、労組法第7条第1号の不利益取扱いには該当せず、同条第3号の支配介入にも該当しない。 |
掲載文献 |
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