概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委平成29年(不)第31号・平成30年(不)第10号
ユナイテッド・エアーラインズ不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X1組合・X2組合(組合ら) |
被申立人 |
Y1会社(吸収合併前のY0会社も含め「会社」) |
命令年月日 |
令和4年3月1日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、Y1会社に吸収合併される前のY0会社が、①成田ベース(拠点)の閉鎖に伴い、組合員A1及びA2を解雇したこと、②両名に支給したプロフィット・シェア(利益を計上したときに、年1回、支給される金銭)について、支給率を別組合の組合員より低い割合としたことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
東京都労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 Y0会社がA1及びA2を平成28年5月31日付で解雇したことについて(争点1)
(1) Y0会社が成田ベース〔注 業務上の拠点となる事業所〕閉鎖を決定したことには、①顕著な業務減少が続いていたこと、②人員整理を含む効率化が進んでいないことなどの事情が認められることからすれば、経営上の相応の根拠や理由があったということができる。
また、本件解雇については、成田ベースを閉鎖すれば、職種限定である成田ベース所属のFA〔客室乗務員〕の雇用維持が容易でない状況において、Y0会社は、組合の組合員の処遇について、早期退職プログラムや年収を維持した上での地上職への配転を提案するなど、雇用の維持も含めた相応の対応をしたことが認められる。
(2) 当時の労使関係や団体交渉におけるY0会社の対応等を考慮しても、また、そのほかの組合の各主張を考慮しても、Y0会社が組合を嫌悪し、組合の組合員を排除する目的で成田ベース閉鎖及び本件解雇を行ったということはできない。
(3) したがって、Y0会社がA1及びA2を平成28年3月31日付で解雇したことは、同人らが組合の組合員であるが故の不利益取扱いには該当しないし、組合の運営に対する支配介入にも該当しないといわざるを得ない。
2 Y0会社がA1及びA2に対して29年2月14日付けで支給したプロフィット・シェアについて、支給率を別組合の組合員より低くしたことについて(争点2)
組合は、組合の組合員がプロフィット・シェアの支給率において差別されたと主張するが、〔解雇後の〕平成29年2月14日にY0会社がA1及びA2に支給したプロフィット・シェアの支給率は、前年5月末まで成田ベース所属のFAであった者については、管理職や非組合員と同じ5.9514パーセントであり、グアムベース所属のFAに対する支給率〔7.8766%〕より低いものの、組合の組合員であるか否かにかかわらず一律であったといえる。
加えて、①賞与の決め方など全体的に賃金体系が異なる成田ベース所属のFAとグアムベース所属のFAとの間では、プロフィット・シェアの支給率の違いが直ちに組合間差別であるということはできないこと、また、組合とC組合とのプロフィット・シェアに係る労働協約の有無の違いについて、いわゆる中立保持義務違反をうかがわせるような事情は認められないこと、
②28年2月支給のプロフィット・シェアを議題とする団体交渉において、Y0会社の説明に問題があったとまではいえず、いわゆる中立保持義務違反に当たるような事情があったとも認められず、その後、組合がプロフィット・シェアの支給率に係る交渉等を求めた事情はうかがわれないこと、
を考慮すると、Y0会社が、A1及びA2に対して29年2月14日付けで支給したプロフィット・シェアについて、支給率を別組合であるC組合の組合員より低くしたことは、同人らが組合の組合員であるが故の不利益取扱いには該当せず、組合の運営に対する支配介入にも該当しないといわざるを得ない。
3 以上の次第であるから、Y0会社が、A1及びA2を平成28年5月31日付で解雇したこと、並びに両名に対して29年2月14日付けで支給したプロフィット・シェアについて、支給率を別組合の組合員より低くしたことは、いずれも労働組合法第7条に該当しない。 |
掲載文献 |
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