労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和5年(不再)第22号
つばめ交通不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和6年6月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、①組合の執行委員長の同僚への罵声に対するけん責処分(第一次懲戒処分)、②乗務員の親睦団体であるC1協力会(協力会)の集会(明け番会)において、協力会のC2理事が行った組合に対する発言(本件発言)、③執行委員長が会社の許可なく組合チラシ等を貼付した行為及び協力会が掲示した有給休暇に関する抽選ポスターを無断で持ち去った行為に対するけん責処分(第二次懲戒処分)、④会社が協力会の明け番会とは別の機会に労働組合の組合員向けの法定研修を実施することとし、組合員に対して組合員向けの法定研修への出席を命じた行為(本件業務命令等)、⑤執行委員長の法定研修の受講拒否及び協力会が掲示した有給休暇に関する抽選ポスターを無断で持ち去った行為、出庫前点呼を妨害した行為に対する減給処分(第三次懲戒処分)、⑥執行委員長の出庫前点呼におけるB1取締役の発言を遮って点呼業務を妨害したことに対する減給処分(第四次懲戒処分)のうち、第一次ないし第四次懲戒処分が労働組合法(労組法)第7条第1号及び第3号に、C2理事の本件発言及び会社の本件業務命令等が同条第3号の不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。

2 初審東京都労委は、上記①ないし⑥はいずれも不当労働行為には当たらないとして、本件申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。
 
判断の要旨  (1) 争点1(第一次懲戒処分は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)
ア 第一次懲戒処分と近接する時期に組合と会社との間で具体的な紛争が生じていた形跡は見受けられず、執行委員長と従業員間のトラブルが連続して発生し、その約10日後に第一次懲戒処分がされていることからすれば、2度の個人間のトラブルを契機としてされたものであることがうかがわれる。さらに、組合の相談を受けた労働基準監督署から会社が是正勧告を受けた時期や組合のブログに会社従業員を揶楡するような記事が掲載された時期には懲戒処分等がされておらず、けん責は懲戒処分の中でも最も軽く、不自然に均衡を欠くものでもない。
 組合は、執行委員長が懲戒処分の無効を主張した損害賠償請求訴訟(別件訴訟)において第一次懲戒処分が無効とされた旨主張するが、その判決は、会社の就業規則の解釈・適用の誤りを判断したにすぎず、報復目的で行われた懲戒処分であるとする執行委員長の主張を控訴審が明確に排斥したことも踏まえると、組合の主張はいずれも、不当労働行為意思を推認させるものとは評価できない。
イ 以上から、第一次懲戒処分について、会社に不当労働行為意思があったとは認められず、労組法第7条第1号に該当しない。また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められず、同条第3号に該当しない。

(2) 争点2(本件発言は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか。)
ア C2理事の会社における地位は一乗務員にすぎず、会社が、C2理事に対して本件発言を指示したことを示す証拠はない。他方で、C2理事と執行委員長のLINEのやり取りからは、両者の関係が険悪であったことがうかがわれることに加え、本件発言当時、C2理事を含む従業員数名が、執行委員長を被告として、組合のブログの記事が名誉を毀損しているとして提訴した訴訟が係属していたことからすれば、本件発言は、執行委員長に対するC2理事個人の認識からされたものとみても不自然でなく、会社の指示がなければ本件発言をするはずがないとの評価もできない。
 したがって、会社が本件発言をさせたとは認められず、組合の主張は、その前提から採用することができない。
イ 以上から、本件発言が、会社によって組合の弱体化を企図して行われたものとは認められず、労組法第7条第3号に該当しない。

(3) 争点3(第二次懲戒処分は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)
ア 執行委員長は、無断で組合チラシ等を社内に貼付し、また、社内に掲示されていた抽選ポスターを無断で剥がして持ち去っており、これらが就業規則に違反する行為であることは明らかである。そして、けん責は懲戒処分の中で最も軽く、不自然に均衡を欠くものでもない。
 また、組合はこれまで組合チラシの掲示場所や掲示手続等について会社と交渉をしたり、抽選ポスターの記載内容について協議を申し入れたりすることさえなく実力行使に及んだものであり、このような行為を正当な組合活動と評価することはできない。
イ 以上から、第二次懲戒処分について、会社に不当労働行為意思があったとは認められず、労組法第7条第1号に該当しない。また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められず、同条第3号に該当しない。

(4) 争点4(本件業務命令等は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか。)
ア 組合は、本件業務命令等が、公然化していない組合員をあぶり出すために行われたものである旨主張するが、会社が非公然組合員を把握できていない以上、明け番会における法定研修から非公然組合員を排除することは不可能であり、非公然組合員は、明け番会における法定研修を受講し続けることが可能である。逆に、組合に所属していない従業員が、勤務時間内に法定研修を受講したいと考え、明け番会とは別日に設定された法定研修を受講したとしても、会社は当該受講者が組合に所属しているか否かを客観的に判別する術を持たないから、別日に設定した法定研修から非組合員を排除することも不可能である。したがって、本件業務命令等は、非組合員をあぶり出すという目的の達成に適合する手段とは到底いえず、組合の弱体化を企図して行われたものであるとは評価できない。
 また、組合は、会社が協力会に働きかけて組合員の参加を拒否させた旨主張するが、そのような働きかけをした証拠はない。むしろ、一部の協力会会員が、組合のブログ記事について名誉毀損等を主張して提訴するなど、協力会と組合との対立が顕在化しており、協力会は、明け番会での法定研修において、執行委員長が明け番会において組合活動を行い、明け番会の運営を妨害したと受け止め、組合員に対する法定研修を別日に設定するよう要望するに至ったという経過に不自然な点はなく、協力会からの要望に応じざるを得なかったとする会社の主張が不合理ともいえない。
イ 以上から、本件業務命令等が、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められず、労組法第7条第3号に該当しない。

(5) 争点5(第三次懲戒処分は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)
ア 会社が、法定研修の日程を伝えた後、執行委員長が組合執行委員長として提出した書面には、確認事項について会社の応答があるまで研修参加を留保する旨記載されており、執行委員長が研修受講を拒否したと会社が判断したとしても不合理とはいえない。また、協力会の抽選ポスターの取り外しについては、第二次懲戒処分同様、就業規則違反である。さらに、点呼業務の妨害については、出庫前点呼が行われていた中での出来事であるか否かは判然としないものの、少なくとも点呼開始直前に、点呼が行われる場所で口論に及び、その場にいた他の従業員が苦情を述べる程度には不穏当な状態であったことがうかがわれるから、会社が執行委員長の言動を懲戒対象になると判断したとしても不合理とはいえない。加えて、執行委員長が第二次懲戒処分から半年も経たずに同種行為(協力会が掲示したポスターの取り外し)を繰り返したことを考えれば、減給処分が均衡を欠くものともいえない。
イ 以上から、第三次懲戒処分について、会社に不当労働行為意思があったとは認められず、労組法第7条第1号に該当しない。また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められず、同条第3号に該当しない。

(6) 争点6(第四次懲戒処分は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)
ア 執行委員長は、出庫前点呼開始後、B1取締役の説明を遮る形で関係のない発言を繰り返し、発言をやめるよう注意された後も、これを無視して同様の発言を繰り返し、点呼業務を妨害したことが認められ、これらの言動が点呼業務の妨げになることは明白であり、点呼業務を妨害する意図はなかったなどとする組合の主張は採用できない。
 そして、別件訴訟においても、執行委員長のこれまでの処分歴を踏まえると減給処分は社会通念上相当といえ、第四次懲戒処分は有効である旨判断されたことに鑑みれば、会社が第四次懲戒処分をしたことは合理的理由があったといえる。
イ 以上から、第四次懲戒処分について、会社に不当労働行為意思があったとは認められず、労組法第7条第1号に該当しない。また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められず、同条第3号に該当しない。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成31年(不)第4号 棄却 令和5年4月18日
 
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