概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成31年(不再)第8号
日本貨物検数協会不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
Y法人(「法人」) |
命令年月日 |
令和6年5月8日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 法人は、指定事業体である申立外C1会社及び申立外C2会社との間で、検数業務に関連して業務委託契約を締結していた。組合は、法人との間で、指定事業体からの職員の採用に関して平成28年3月23日付け確認書(28.3.23確認書)を締結し、①同年8月24日付けで、C1会社の従業員である本件組合員3名の法人への転籍に関し団体交渉を申し入れ、②同年10月3日付けで、C2会社の従業員である本件組合員1名の法人への転籍に関し団体交渉を申し入れた(上記①及び②の団体交渉申入れを「本件団交申入れ」)。
本件は、法人が、本件団交申入れに応じなかったことが、労働組合法(労組法)第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、同年11月16日、組合が、大阪府労働委員会(大阪府労委)に救済申立て(本件救済申立て)を行った事件である。
2 初審大阪府労委は、本件救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 法人は、本件組合員の労組法上の使用者に当たるかについて
(1) 本件団交申入れにおいて組合が法人に申し入れた団体交渉の議題は、28.3.23確認書に基づき本件組合員を法人に転籍させることを要求するものである。同確認書について、組合は、法人が、C1会社などの指定事業体の職員との間で、直接の雇用関係締結の努力をすることを、組合に対して約束するものであるから、法人と本件組合員の間に近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存していたと主張する。
しかし、28.3.23確認書によって、法人は、平成28年度から平成30年度までに法人が指定事業体から毎年度約120名の採用を実施するよう努力する義務を負うものの、毎年度約120名の現実の雇用を実現する義務はない。ましてや、採用条件や採用後の労働条件について未だ合意のない本件組合員を現実に雇用する義務はない。したがって、同確認書によって、法人と本件組合員の間に近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存するとはいえない。
(2) 組合は、別件地位確認訴訟判決を踏まえると、本件団交申入れ時点において、労働者派遣法第40条の6第1項により、法人から本件組合員に対し労働契約の申込みをしていたものとみなされることを前提に、本件組合員が承諾さえすれば労働契約が成立するなどとして、法人と本件組合員の間に近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存していたと主張する。
しかし、組合は一貫して法人の正規職員と同一の労働条件による組合員の直接雇用を要求していたことからすれば、組合が本件団交申入れにおいて要求していた28.3.23確認書に基づく本件組合員の転籍は、法人が本件組合員との間で法人の正規労働者と同一の労働条件で雇用することを内容とする労働契約を締結させることを意味するものであるから、組合が、本件団交申入れにおいて、労働者派遣法第40条の6に基づいた派遣元と同一労働条件を内容とする労働契約の申込みに対する承諾により、近い将来における雇用関係成立の可能性があることを前提とした採用を要求していなかったことは明らかである。したがって、組合の上記主張は、法人が本件団交申入れに応ずべき立場にあることを根拠づけるものということはできず、採用できない。
(3) なお、組合は、法人が、C1会社職員の基本的労働条件等を現実的かつ具体的に支配、決定していたとも主張するが、法人が、28.3.23確認書を締結したからといってC1会社の職員の雇用そのものについて現実的かつ具体的に支配していたとはいえず、また、法人が、C1会社の労働問題について解決金を支払ったからといって、C1会社の職員の労組法上の使用者として行ったということはできず、さらに、C1会社の未払割増賃金について、法人が主導的に解決を図ったとはいえないこと等からすると、組合の主張は採用できない。
(4) 以上によれば、法人は、本件組合員の労組法上の使用者ということはできない。
2 結論
したがって、その余の点について判断するまでもなく、法人が本件団交申入れを拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。 |
掲載文献 |
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