概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成28年(不)第59号 不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
会社Y(「会社」) |
命令年月日 |
平成31年2月12日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、被申立人が、申立人との間で、被申立人の業務を行っている指定事業体からの職員採用について、毎年度実施するよう努力する旨を文書で確認したにも関わらず、申立人が指定事業体に所属する組合員らの移籍(転籍)を求めて被申立人に団体交渉を申し入れたところ、被申立人は、①指定事業体の従業員と被申立人は労使関係にない、②被申立人の定める募集要項の条件を満たした応募者を個別に採用することを検討しているにすぎず団体交渉を受ける立場にない、として団体交渉に応じないことが不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
争点1(法人は本件組合員の労働組合法上の使用者に当たるか。)及び争点2(法人が本件組合員の労働組合法上の使用者に当たる場合、本件団交申入れを法人が拒否したことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
本件団交申入れ事項は、28,3.23確認書に基づきC1及びC2で働く本件組合員を法人の正規労働者として移籍(転籍)させることについてであるところ、組合は、法人が本件組合員の労働組合法上の使用者に当たる理由として、①28.3.23確認書を締結したこと、②労働者派遣法に違反する偽装請負によるみなし申込みと承諾があったこと、を挙げる。 28.3.23確認書について 28.3.23確認書には「指定事業体からの職員採用に関しては、平成28年度から平成30年度まで、毎年度約l20名の採用を実施するよう努力する」と記載されていることが認められる。 確かに、指定事業体から法人に採用され得る職員には、本件組合員も含まれているとみられるが、特定多数存する指定事業体の従業員のうちから、特に本件組合員を指名して無条件転籍させることを確認したとまで認めることは困難である。 あくまで、28.3,23確認書は、指定事業体から毎年度約120名の職員採用について努力することが確認されているにすぎず、同確認書により、法人が本件組合員と近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存するものになったとはいい難い。 偽装請負について C1手配メールの送信先に本件組合員は含まれてはいないものの、本件組合員が携帯電話で翌日の業務指示を法人の担当者から受けていたこと、A2分会が結成された後の法人が作成した27.12.24C1手配表には本件組合員の氏名が記載されていること、法人が、本件組合員の日常業務において指導や注意を行ったことがあること、から、少なくともC1委託契約の下における労働の実態に、労働者派遣事業とみなされ得るものがあったとの疑いがないとはいえない。 仮に偽装請負であるとすれば、法人が労働者派遺法第40条の6に基づく直接雇用の申込みをしたものとみなされ、本件団交申入れは、28.1.l4C2派遣契約及び28.1.29C1派遣契約の締結から1年を経過する以前になされており、申込みとみなされた労働契約に係る条件等について団交を求めるものであれば、みなし申込みに対する承諾と解する余地がないとはいえない。 しかしながら、28.8.24団交申入書及び28.10.3要求書1には、28.3.23確認書に基づき組合員を法人の正規労働者として移籍(転籍)させることを求める記載はあるものの、労働者派遺法第40条の6に基づく直接雇用の申込みとみなされた労働契約に係る条件等について団交を求める旨の記載はないのであるから、本件団交申入れが申込みみなしに対する組合員の承諾の意思表示に当たる旨の組合主張は採用できない。 さらに、組合は、28.1.14C2派遣契約及び28.1.29C1派遺契約に関し、労働者派遺法第32条第2項の派遺労働者の同意がなく、法人は派遣労働者に指揮命令して使用する権限がないにもかかわらず、派遣労働者を指揮命令していることは、偽装請負と同じ状態が継続しており、労働者派遺法第40条の6の適用がある旨主張する。 確かに、本件申立て後、C1は、労働者派遣契約の締結前に従業員に対して、労働者派遣の対象とする旨を明示し同意を得ていないとして愛知労働局から是正指導を受けているが、この是正指導は、あくまでも派遣元のC1に対して、手続きの不備について是正を求めるものにすぎず、このことをもって直ちに、派遣先である法人に派遣労働者に指揮命令して使用する権限がないとは認められない。 結論 本件団交申入れ事項に関し、法人が本件組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。 |
掲載文献 |
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