労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和4年(不再)第24号
大蔵屋商事不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社(「会社」) 
再審査被申立人  X組合(「組合」) 
命令年月日  令和6年3月21日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①労働組合を批判する内容が含まれた文書(本件文書)を従業員に配布・閲覧させたこと、②ストライキの際に会社車両を社外の駐車場に駐車したことを組合員に注意したこと、③組合員が使用する会社車両の駐車場所を変更したこと、④組合員が使用する会社車両の駐車場所の変更を議題とする団体交渉に誠実に応じなかったことが不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、労働組合を批判する内容が含まれた文書を従業員に配布することによる支配介入の禁止、誠実団体交渉応諾、文書交付及び掲示等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文要旨  (1) 初審命令を次のとおり変更する。
ア 会社は、従業員に対して労働組合を批判する内容が含まれた文書を配布することにより、組合の運営に支配介入してはならない。
イ 文書交付
ウ その余の申立てを棄却する。
(2) その余の再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 野田営業所の所長(野田営業所長)が、同営業所の従業員に本件文書を配布した行為は、組合の運営に対する支配介入に当たるか
ア 本件文書は、「労働者を洗脳し、企業をゆする『ユニオン』の正体」との表題のもと、ユニオンすなわち労働組合について、会社から金をとることが目的で、組合員の受領する和解金をピンはねする団体として描写するものであり、労働組合に対するイメージを悪化させ、労働者の組合加入をためらわせるような内容といえる。
 また、野田営業所長が本件文書を同営業所の従業員に配布した時期は、第1回団体交渉や会社役職者が組合員への不適切な発言があったことを認める等のやり取りがなされ、まさに組合が、加入者を増やし、組織拡大を図るとともに会社と交渉を始めた時期に相当し、本件文書の配布は組合に向けられた行為であったといえる。
 以上からすれば、本件文書を閲覧した従業員は、当時会社と交渉をしていた組合に対して悪いイメージを持つのみならず、配布した営業所長も本件文書と同様の見解であろうと理解し、組合への加入をためらうのも自然であり、従業員の組合加入を抑制する効果を生じさせる行為といえる。
イ 野田営業所長は、9つある営業所のうちの1つの営業所を統括する立場であり、組合対応を協議していた所長会議の構成員であること等に鑑みれば、営業所長は、会社上層部に位置する役職というべきである。野田営業所長による本件文書の配布とほぼ同時期に葛飾営業所の所長も本件文書の内容に沿った発言等をしていることを踏まえれば、野田営業所長が、会社の意図と一切関わりなく、個人的な行為として、本件文書を配布したとは評価し難い。
ウ 以上から、野田営業所長が、同営業所の従業員に本件文書を配布した行為は、組合の運営に対する支配介入に当たる。
(2) 会社がA1組合員らの使用する会社車両の駐車場所を変更したことは、組合活動を理由とする不利益な取扱い及び組合の運営に対する支配介入に当たるか
ア 駐車場所の変更によって生じた不利益として、移動時間がA1組合員は片道約2.5分、A2組合員は片道約10分増加し、変更前の駐車場での業務を担当するA1組合員については、配送のためその駐車場に週1回程度出向く必要が生じたが、所属する営業所から変更前の駐車場までの距離等を踏まえると、業務時間が増加したとは言い難い。
イ 会社は、駐車場所の変更の理由として、別件訴訟において、A1組合員らから、退勤後、所属する営業所から変更前の駐車場まで会社車両を移動させる時間が労働時間である旨主張され、裁判において当該移動時間が労働時間であると判断された場合の支払いリスク回避の観点から本件変更を行った旨主張する。実際、駐車場所の変更により、A1組合員らは、退勤後、会社車両を移動させることなく帰宅することになり、移動時間が生じなくなったのであるから、当該移動時間を労働時間と判断された場合の支払を防ぐことに繋がる。そして、仮に別件訴訟の原告が組合員でなかったとしても、会社は同様の対応をしたであろうと推認できる。
ウ 以上から、会社がA1組合員らの使用する会社車両の駐車場所を変更したことは、組合活動を理由とする不利益な取扱い及び組合の運営に対する支配介入に該当しない。
(3) 本件団体交渉における会社の対応は不誠実な団体交渉に当たるか
ア 組合が申し入れた団体交渉の議題(駐車場所の変更)は、出勤先として労働者の通勤方法や通勤時間、配送ルートの選択にも影響することに鑑みれば、労働条件その他の待遇に当たる事項として、義務的団交事項に該当するというべきである。
イ 会社は、組合が業務指示書の内容について質問を重ねても、抽象的な回答にとどまり、具体的に説明しようとする姿勢は見られないし、通勤時間も駐車場所の決定も労働条件ではない、会社の決定に従うように等とする会社の発言に鑑みれば、初めから合意達成の可能性を模索する意思はなかったことがうかがわれる。
ウ 以上から、本件団体交渉における会社の対応は不誠実な団体交渉に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委令和元年(不)第54号 一部救済 令和4年4月5日
 
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