労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和5年(不)第32号
不当労働行為審査事件 
申立人  X支部(組合) 
被申立人  Y事業協同組合(法人) 
命令年月日  令和6年5月31日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合からの団体交渉申入れに対し、法人が、組合との関係で労働組合法上の使用者ではないとして、これに応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 法人は、組合からの、法人事務所周辺での組合への監視活動に関する令和5年4月21日の団体交渉申入れ(以下「5.4.21団体交渉申入れ」)について、労働組合法上の使用者に当たるか(争点1)

(1)5.4.21団体交渉申入れ時点において、法人の従業員の中に組合員が存在しなかったことについて、当事者間に争いはなく、法人は、労働契約上の雇用主には該当しない。

(2)しかし、労働契約上の雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にある場合、その限りにおいて、当該事業主が労働組合法第7条の使用者に当たる。

(3)この点、5.4.21団体交渉申入れ時点で法人及びこれに加盟する事業者(以下「加盟社」)に雇用されている組合員は存在せず、また、法人が加盟社以外に雇用されている組合員の労働条件について、直接関与したと認めるに足る事実の疎明はない。したがって、法人が組合員の基本的な労働条件等について、現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあったとは考えられない。
 なお、組合は、正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復、確保を図るために労働委員会が裁量により認める事業主は労働組合法第7条第2号の使用者に当たる旨主張するが、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあるとはいえない事業主について、労働委員会が裁量で使用者と認めることはできない。

(4)また、組合は、令和5年3月6日大阪高等裁判所判決〔注〕において、法人は組合の労働関係上の当事者に当たることが確認されている旨主張する。
 確かに、同判決には、「産業別労働組合である組合は、業界企業の経営者・使用者あるいはその団体と、労働関係上の当事者に当たるというべき」との記載があることは認められるが、組合書記長ら3名の平成29年8月22日時点における法人事務所内外での言動について判断したものであり、本件申立てにおいて争点となっている5.4.21団体交渉申入れ時点の労使関係について判断したものではない。
 したがって、この点に関する組合の主張は採用できない。

〔注〕平成29年8月22日における組合書記次長ら3名による法人内外での言動が威力業務妨害罪等に問われた事件に関するもの

(5)以上のとおりであるから、法人は、5.4.21団体交渉申入れについての労働組合法上の使用者には当たらない。

2 5.4.21団体交渉申入れに対する法人の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか(争点2)

 法人が、5.4.21団体交渉申入れについての労働組合法上の使用者に当たるとはいえないのであるから、その余を判断するまでもなく、5.4.21団体交渉申入れに対する法人の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。したがって、この点に関する組合の申立ては棄却する。 

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