労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和4年(不再)第22号
日本フッソ工業(令和3年団交)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社(「会社」) 
再審査被申立人  X組合(「組合」) 
命令年月日  令和6年4月17日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 組合は、会社に対し、組合員に対する昇進差別やその関連事項について、3回にわたり団体交渉を申し入れた(「本件団体交渉申入れ」)ところ、会社は、各団体交渉申入書記載の協議事項には不明瞭な点があるとして、昇進差別の具体的内容等や関連事項の内容を明らかにするよう求め、団体交渉の開催日時について回答や対案を示すこともなかった。
 本件は、上記会社の対応は労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労働委員会は、上記会社の対応は不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾及び文書手交を命じたところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文要旨  (1) 初審命令主文を次のとおり変更する。
  会社は組合に対し、文書を交付しなければならない。
(2) 会社のその余の再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨   本件団体交渉申入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか
(1) 本件団体交渉申入れに対する会社の対応等について
 組合は、会社に対し、令和3年4月12日付け団交申入書を始めとし、「1、本年4月1日付けの昇格について。A1組合員、A2組合員(「両組合員」)の昇格がなされなかったことについて昇格差別であると考えている件も含めて。2、上記の関連事項」を本件団体交渉事項として3回にわたり団体交渉を申し入れている。会社は、いずれに対しても、「差別」の具体的な内容や根拠が判然としないとか、「も含めて」及び「上記の関連事項」の内容が不明瞭であるなどとして団体交渉に応じていない。
 組合は、同月12日付けで団体交渉を申し入れた後、会社の同月15日付け回答書及び同月19日付け回答書による各求釈明に応じて、同月16日付け団交申入書及び同月22日付け団交申入書において、組合員が得ることのできる昇進情報は社内での昇進者の公示に限られ、それによれば、後輩らが両組合員よりも先に昇進しており、この事実から、両組合員に昇進がないのは組合員であるが故の差別であると認識しているなどと、団体交渉を求める理由等を具体的に説明してきた。なお、昇進は会社の裁量的判断に委ねられているものではあるが、一般に賃金に連動するものとして労働条件に関連する事項であり、また、本件団体交渉事項は、単純に両組合員の昇進を要求するというものではなく、会社の昇進において組合員であることの故に後輩らと比較して不利益に取り扱われている疑いがあるとして、同月1日付けで昇進されなかった理由の説明等を求めるものであるから、本件団体交渉事項が義務的団交事項に当たることは明らかである。
 そして、本件団体交渉事項のうち、「も含めて」及び「上記の関連事項」の記載が会社にとって不明瞭であったとしても、会社が団体交渉において本件団体交渉事項に関する必要な説明や交渉を行うことに支障を来すようなものであるとは認め難い。
 そうすると、組合が同月16日付け団交申入書及び同月22日付け団交申入書において団体交渉を求める理由を具体的に説明しているにもかかわらず、会社は同月27日付け回答書により同趣旨の求釈明を繰り返したことになるが、このような会社の対応は、本件団体交渉事項が義務的団交事項に該当するか否かを判断するために、本件団体交渉事項の不明瞭な点を明らかにするという程度を超えた合理性や必要性を欠くものであり、実質的には団体交渉を拒否するものであるといわざるを得ない。
 以上によれば、会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことに正当な理由はなく、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(2) 本件立会団交について
 本件団体交渉事項を議題とする本件立会団交は、当委員会の提案により行われたものではあるが、会社は、本件立会団交において、組合の要求に応じ、組合の理解を得るべく説明を尽くしたと認められ、実質的な交渉が行われたものと評価することができる。
 そうすると、現時点においては、会社に対して本件団体交渉事項に関する団体交渉に応じることを命ずるまでの必要性は存しないというべきである。
 他方で、諸般の事情に照らすと、本件の不当労働行為に関する会社の責任を明確にした上で、今後、適切な時期に団体交渉が実施されることを期し、本件と同様の行為の再発を防止するためには、会社に対して、文書の交付を命ずるのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和3年(不)第23号 全部救済 令和4年5月13日
 
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