労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委3年(不)第23号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和4年5月13日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合が組合員2名の昇格について団体交渉を申し入れたところ、会社が応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾及び文書交付を命じた。 
命令主文  1 会社は、組合が令和3年4月12日、同月16日及び同月22日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
2 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
X組合
執行委員長 A様
Y会社        
代表取締役 B
 当社が、貴組合から令和3年4月12日、同月16日及び同月22日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  1 本件協議事項は義務的団交事項に当たるか

 令和3年4月12日、同月16日及び同月22日付け団交申入れにおいて提示された「1、本年4月1日付けの昇格について。A2組合員、A3組合員の昇格がなされなかったことについて昇格差別と考えている件も含めて。2、上記の関連事項」(以下「本件協議事項」)が義務的団交事項であるかについてみるに、本件協議事項は、A2及びA3組合員の昇格がなされなかったことについてであり、組合が、同月22日付け団交申入書において、昇格は労働条件に関わる給与面を大きく左右するものである旨説明していることをも踏まえると、義務的団交事項に当たるといえる。

2 会社が団交に応じないことに、正当な理由があるか

(1)会社は、本件団交申入れに対し、本件申立てまでに団交に応じなかった正当な理由について、組合の団交申入書の協議事項が団交事項に該当するか否かを判断するための準備をしている段階であったとし、組合の団交申入れの議題内容が明らかでなく、組合に協議事項の具体的内容及び根拠について明らかにするよう繰り返し求めてきたが、組合がこれに応じなかった旨主張する。

(2)しかし、組合は、平成3年4月12日団交申入書で提示した本件協議事項〔*1〕について、会社の同月15日回答書による求め〔*2〕に応じて、同月16日団交申入書により具体的な説明を行い〔*3〕、その後、会社の同月19日回答書による強い求め〔*4〕に応じ、同月22日団交申入書〔4月12日及び同月16日の団交申入れと併せ、以下「本件団交申入れ」〕において、差別の具体的な内容及び根拠について、組合員が得ることができる情報が限られているという事情を示しつつ、団交申入れに至った経緯とともに、会社に団交で回答を求める事項について、十分に回答を行っており(*5〕、会社も本件協議事項の内容を認識していたといえる。
 それにもかかわらず、さらに同月27日回答書により繰り返し説明を求めた〔*6〕会社の対応は、本件協議事項が不明瞭なため明らかにするという程度を超え、合理的必要性を欠くものであり、本件協議事項が団交事項に該当するか否かを判断するための準備をしている段階であったとはいえず、むしろ実質的には団交拒否の姿勢の現れであったといえる。したがって、会社の主張は失当であり、この主張のほかに本件団交申入れに応じない理由の疎明もないため、会社に団交に応じない正当な理由があったとることはできない。

*1 令和3年4月12日付け団交申入書 「1、本年4月1日付けの昇格について。A2組合員、A3組合員の昇格がなされなかったことについて昇格差別と考えている件も含めて。2、上記の関連事項」を協議事項として記載。

*2 同月12日付け会社回答書 「①組合が協議事項として記載している「昇格差別」とは具体的にいかなる事実を指し、具体的にどのような要求をして協議を求めているのか判然としない旨、②「も含めて」及び「上記の関連事項」の記載は極めて不明瞭であり、団交事項に該当するか否かが明らかでない旨、③これらの点について明らかにすることを待つ旨」などを記載。

*3 同月16日付け団交申入書 「①A2及びA3組合員の後輩や二人より社歴の短い社員が昇進している事実がある旨、②組合としては勤務の正当な評価結果ではなく、明らかな組合員であるが故の差別であると認識している旨、③組合が指摘した内容に対する合理的かつ正当な説明を求める旨、④A2及びA3組合員が長らく昇進しない理由の説明を求める旨」などを記載。

*4 同月19日付け会社回答書 「①A2及びA3組合員の後輩や社歴の短い社員が具体的に誰を指すのか不知であるが、昇進は年齢順及び勤務年数順になされているわけではなく、後輩や社歴の浅い者が先に昇進している例はA2やA3組合員に限ったことではない旨、②何をもって「差別」というのか、4.16団交申入書を子細に検討しても明らかではない旨、③組合は、勤務の正当な評価結果ではなく明らかな組合員であるが故の差別であると認識していると主張するが、根拠が明らかにされていない旨、④組合が「差別」であると主張し、それを団交を求める理由とする以上、「差別」の具体的な内容及び根拠を示さなければ会社として検討の余地がない旨、⑤4.16団交申入書においても協議事項として記載されている「も含めて」及び「上記の関連事項」の記載が具体的に何を指しているのか依然として曖昧模糊としている旨」などを記載。

*5 同月22日付け団交申入書 「①会社は、情報を公開していないため、組合は比較対象者を示すことができない旨、②過去に大阪府労働委員会は、会社に対し団交に応じなければならない旨の命令を出している旨、③組合員が得る昇格情報は社内での昇格者の公示のみであり、現在得ている情報は、A2及びA3組合員が〔ママ〕後輩や二人より社歴の短い社員が先に昇進している事実だけである旨、④組合は、A2及びA3組合員の同僚、後輩や二人より社歴の短い社員と比較して昇格がないことが、組合員であるが故の差別と認識している旨、⑤右事実は客観的相対的に見ても正当な評価結果でないと認識している旨、⑥昇格は、労働条件に関わる給与園を大きく左右するものである旨、⑦会社が「差別」でないとするなら、その理由を団交の場で誠実に説明すればよい旨」などを記載。

*6 同月27日付け会社回答書 「①A2及びA3組合員の後輩や社歴の短い社員とは具体的に誰を指しているのか分からない旨、②昇進は年齢順や勤務年数順になされているわけではなく、後輩や社歴が浅い者が先に昇進している例はA2及びA3組合員に限ったことではない旨、③A2及びA3組合員の後輩や社歴の短い社員が先に昇進したことがあるからといって直ちに組合差別とは言えない旨、④組合が「差別」であると主張し、それを団交を求める理由とする以上、「差別」の具体的な内容及び根拠を組合が明らかにするべきである旨、⑤組合が「差別」の根拠を「A2、A3組合員の後輩や社歴の短い社員が昇進している事実だけです」としか言わないのであれば、会社として検討の余地がない旨、⑥4.22団交申入書において協議事項として記載されている「も含めて」及び「上記の関連事項」等の記載は、具体的に何を指しているのか依然として曖昧模糊としている旨」などを記載。

(3)以上のとおりであるから、本件団交申入れについて、会社が団交に応じないことは、正当な理由のない団交拒否といわざるを得ず、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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