概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和4年(不再)第16号・第17号
藤原生コン運送(団交)不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」)(16号)、Y会社(「会社」)(17号) |
再審査被申立人 |
Y会社(「会社」)(16号)、X組合(「組合」)(17号) |
命令年月日 |
令和6年3月21日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、①令和2年2月25日付けの大阪府労働委員会(大阪府労委)の命令(先行事件命令)に基づく団体交渉の開催及び②令和2年春闘(2年春闘)を交渉事項とする団体交渉申入れ(2.10.29団交申入れ及び2.11.6団交申入れ)に応じなかったことが労働組合法(労組法)の不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、会社が、2.10.29団交申入れ及び2.11.6団交申入れのうち先行事件命令に基づく団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして、会社に対して文書交付を命じたところ、組合は、2年春闘を交渉事項とする団体交渉に会社が応じなかったことは不当労働行為に当たらないと判断した点を、会社は、先行事件命令に基づく団体交渉拒否は不当労働行為に当たるとして会社に文書交付を命じたことを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件各再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 団体交渉拒否について
ア 先行事件命令に基づく団体交渉の開催について
先行事件命令は会社に団体交渉応諾を命じているところ、救済命令は命令書の写しの交付の日から効力を生じるものであり(労組法第27条の12第3項、第4項)、会社が再審査申立てを行っても救済命令の効力は停止しない(同法第27条の15第1項)。しかも、労働委員会による救済命令は行政処分であって、行政処分は、法律上当然に無効である場合を除いては、適法に取り消されない限り有効なのであるから、会社に先行事件命令の履行義務があったことは明らかである。
また、組合は、この問題に関して話合いで解決することを申し入れているのであり、この趣旨は、当該問題を当委員会における再審査手続にのみ委ねるのではなく、労使間の交渉による話合いでの解決を求めたものとみるのが相当であり、労使間で労使紛争を自主的に解決することは、団体交渉の手続を助成することを目的とする労組法の目的にも合致し、望ましいものといえる。
以上からすれば、先行事件命令に基づく団体交渉の開催を求める組合からの団体交渉申入れについて、会社が再審査係属中であることを理由に団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるというべきである。
イ 2年春闘要求について
(ア) まず、2年春闘要求に係る議題についてみると、いずれも義務的団体交渉事項であることは明らかである。
(イ) そこで、2年春闘団交の経緯をみると、第3回団交以降、会社の正社員である組合員(組合員)の賃上げについて、会社全体の収支で考えるのか、組合員が乗車する車両1台当たりの収支で賃金を考えるのかで労使双方の主張が対立する状況が続いていたものとみることができ、こうした状況の下、会社は、組合員の賃上げができない理由について、自らの主張の根拠を具体的な数字を挙げて説明し、さらに、会社全体で黒字が出たことが賃上げに直結するという判断基準はないという補足説明も行っているものということができる。
一方、組合は、会社の上記説明を受けて、新たな主張や提案をすることなく、自ら交渉の終了を宣言したものである。
そうすると、2年春闘団交は、双方の主張が対立する中、組合は、新たな主張も提案もしないまま交渉の終了を宣言しているのであるから、労使が協議を尽くした結果、議論が平行線をたどり、交渉が決裂して、再度交渉したとしても進展が見込めない状況に至っていたものとみるのが相当である。
(ウ) また、その後の事情の変更により団体交渉を再開する必要が生じるなどの特段の事情が生じたとみることもできない。
(エ) 以上からすれば、2年春闘要求に係る2.10.29団交申入れ及び2.11.6団交申入れについて、会社が団体交渉に応じなかったことに正当な理由があるというべきである。
(2) 不当労働行為の成否について
会社が、組合の2.10.29団交申入れ及び2.11.6団交申入れのうち先行事件命令に基づく団体交渉に応じなかったことは、労組法第7条第2号の団体交渉拒否に当たるが、2年春闘要求に係る団体交渉に応じなかったことは、同条同号の団体交渉拒否には当たらない。 |
掲載文献 |
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