概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和2年(不再)第11号
藤原生コン運送不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y会社(「会社」) |
再審査被申立人 |
X組合(「組合」) |
命令年月日 |
令和6年3月21日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、①組合に所属する日々雇用労働者6名(日々雇用労働者6名)に対し、就労日数を減少させ、組合以外の労働組合(別組合)に所属する日々雇用労働者らとの間で就労日数に差を生じさせたこと、②同就労日数の改善を交渉事項とする団体交渉申入れ(30.7.4団交申入れ)に応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、上記1①の行為は労働組合法(労組法)第7条第1号及び第3号の不当労働行為に、同②の行為は同条第2号の不当労働行為に該当すると判断し、会社に対し、別組合の日々雇用労働者らと同程度の頻度で雇用し、就労させること、就労していれば得られたであろう賃金相
当額の6割の支払、団体交渉応諾及び文書手交を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文要旨 |
初審命令主文を次のとおり変更する。
(1) 30.7.4団交申入れに応じなかったことに関する文書交付
(2) その余の救済申立ての棄却 |
判断の要旨 |
(1) 会社は、日々雇用労働者6名について、使用者性があるといえるか。
日々雇用労働者6名は、29年5月に組合に移籍する以前から、数年以上にわたり別組合からの労働者供給により、日々雇用契約を締結して会社の業務に従事していたこと、組合に移籍後も引き続き、29年6月から30年4月までの期間は、同年1月を除き、毎月16から17日、同年1月、同年4月ないし同年8月までの期間は、毎月9から14日程度という相当の頻度で就労していた。そして、日々雇用労働者6名の会社での日々雇用の就労手順は、同人ら以外の日々雇用の労働者の就労手順とは若干異なっており、乗務員点呼簿にあらかじめ氏名と車両番号が印刷されるなど、会社も同人らが毎月頻繁に就労することを踏まえた対応を行っていた。
このような実態を踏まえると、30年4月ないし30.7.4団交申入れ頃の時点においては、日々雇用労働者6名と会社との間に近い将来においても雇用契約を締結する可能性が現実的・具体的に存在していたというべきである。
以上によれば、会社は、日々雇用労働者6名の労組法第7条の使用者に当たる。
(2) 日々雇用労働者6名と別組合の日々雇用労働者らとの間に就労日数の差が生じているか。生じているとすれば、それが労組法第7条第1号及び第3号に当たるか。
ア 別組合の日々雇用労働者7名は、日々雇用労働者6名と同様に、会社において毎月頻繁に就労することを踏まえた対応がされてきており、実際にも、相当頻繁に就労していた実績があることなどからすれば、比較対象とすることが不適当であるとはいえない。そして、これらの者と比較した場合、30年4月以降の日々雇用労働者6名の就労日数は、1か月当たり数日程度少ない日数で推移し、差が生じていることは否定し難い。
イ 組合の29.12団体行動における正当性のない業務妨害行為の内容及び規模、これにより生コン業界における生コンの安定供給が広い範囲で損なわれたことに鑑みると、C協同組合(大阪府及び兵庫県の生コン製造事業者を組合員企業とし、組合員企業が取り扱う生コンの共同受注・共同販売事業を行う協同組合)による組合との接触・面談の禁止等の決議や組合系の業者の使用を極力控えるよう要請する文書等は、組合による正当性のない業務妨害行為を伴う争議行為からC協同組合の共同販売事業及び組合員企業の事業を守ることを目的として、組合系の事業者の使用を極力控えること等を組合員企業に求めたものと推認される。そして、C協同組合が生コンの事業者から生コンの注文を受け、組合員企業に出荷の割当てを行う立場にあることに照らすと、上記決議ないし通知を行ったことは、合理的な行動と評価することができる。
上記に加え、29.12団体行動により、会社の取引先2社(C協同組合の組合員企業)においても、生コンの出荷を停止するなどの対応に追われたことなどからすれば、両社が、会社に対して組合の組合員を来させないよう要請したことや、業界の置かれている事業環境を適切に判断して対処して欲しいとの発言をしたことについても、組合による正当性のない業務妨害行為を伴う争議行為から自社の事業を守るためにした行動であると理解することができる。
そうすると、会社が、両社の要請及び発言を受け、両社の業務に日々雇用労働者6名を従事させないようにしたとしても、組合を嫌悪しその弱体化を意図したからであるとはいえない。
以上によれば、就労日数に差が生じたことは、会社が、日々雇用労働者6名について、取引先2社における業務に従事させないようにしたことによるものであると認められるところ、組合の弱体化を意図して行われたものではなく、日々雇用労働者6名が組合の組合員であることや労働組合の正当な行為をしたことの故をもって行われたものということもできない。
したがって、就労日数に差が生じたことをもって、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるということはできない。
(3) 会社が組合の30.7.4団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号に当たるか。
会社は、会社の得意先から、組合の日々雇用労働者が運転するミキサー車を生コンの輸送に充てないよう要請を受けていたのに、30.4.19団交において、直接の得意先からは言われていない旨を回答しており、会社は事実経過を正確に組合に説明していたとはいえない。また、会社は、30.6.5団交において、組合の要望に対し、様子を見て連絡する、再度検討するなどと述べているが、検討した結果を組合に伝えたなどの事実は認められない。
以上からすれば、30.4.19団交及び30.6.5団交における会社の対応は、組合を納得させるべく、具体的な根拠を示して説明を尽くしていたとまでいうことはできず、未だ交渉の余地があったものというべきである。
したがって、30.7.4団交申入れに会社が応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 |
掲載文献 |
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