労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第49号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年2月25日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合の日々雇用組合員6名と、他の労働組合の 日々雇用組合員とで、就労日数に差を設けたこと、②①の事項を協議事項とする団体交渉申入れに応じなかったことが、それぞれ 不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、労組法第7条第1号、第2号及び第3号の不当労働行為であるとして、不利益取扱いの撤回 及び団体交渉の応諾とともに、文書の交付を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員A2、同A3、同A4及び同A5につ いて、被申立人において日雇労働被保険者手帳を使用して就労している、別の労働組合の組合員と同程度の頻度で雇用し、就労さ せなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員A2、同A3、同A4及び同A5に対し、平成30年4月以降、再度、就労させるまでの間、同人 らが被申立人において日雇労働被保険者手帳を使用して就労している、別の労働組合の組合員と同程度の頻度で雇用され就労して いれば得られたであろう賃金相当額の6割を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人組合員であったA6に対し、平成30年4月から同31年2月28日までの間、また、同A7に対し、同 30年4月から同31年3月27日までの間、同人らが被申立人において日雇労働被保険者手帳を使用して就労している、別の労 働組合の組合員と同程度の頻度で雇用され就労していれば得られたであろう賃金相当額の6割を支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人が平成30年7月4日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
5 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
組合
 執行委員長 A1様
会社         
代表取締役 B
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)平成30年4月以降、貴組合員A2氏、同A3氏、同A4氏及び同A5氏並びに貴組合員であったA6氏及び同A7氏の就 労日数を減少させ、別の労働組合の組合員である日々雇用労働者の就労日数との間に差を設けたこと(1号及び3号該当)。
(2)貴組合が平成30年7月4日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったこと(2号該当)。 
判断の要旨  1 日々雇用組合員6名と、別組合らの組合員との間で就労日数に差 があることは、労働組合法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に当たるか。(争点1)
ア 日々雇用組合員6名の就労日数は少なくとも平成30年4月以降減少しているといえ、日々雇用組合員6名には経済的な不利 益が生じていたといえる。
イ そして、別組合らの組合員の平成30年4月から同年7月の就労日数は、月平均15.8日から18.3日の間で推移してい るのに対し、同期間の日々雇用組合員6名の就労日数は、月平均10日から13.8日の間で推移していることからすると、平成 30年4月から同年7月の日々雇用組合員6名の就労日数は、別組合らの組合員に比して大きく減少しているといえる。
 そこで以下、当該就労日数の差に合理性があるかについて検討する。
(ア)30.1.23文書は、組合が威力業務妨害を行ったとする記載はあるものの、同文書は、C1事業協同組合がその加入し ている業者(「広域協組合員」)に対し、組合との個別の交渉等は行わないよう求めたものというべきであって、広域協組合員で ない会社に対してまで、組合の組合員の就労を禁じたり、組合員を就労させている企業との取引を差し控えるよう求めたものとい うことはできない。
 さらに、平成30年10月9日に、組合の組合員8名が威力業務妨害容疑等で逮捕されたことが認められるが、このことについ ても、会社の業務に支障が出た等の疎明はない。
 そうすると、取引先の意向を会社が尊重せざるを得ない立場にあり、30.1.23文書によるC1事業協同組合の要請が会社 に一定の影響を及ぼすことは理解できるにしても、取引先の意向やC1事業協同組合の要請が、会社において、別組合らの組合員 に比して、日々雇用組合員6名の就労日数が減少したことの正当な理由であるということはできない。
(イ)一方、組合と会社との関係をみると、2度にわたる団交において、日々雇用組合員6名の雇用に関するやり取りが行われ、 その内容についても具体的な進展があったとはいえないことからすると、組合と会社は一定の対立関係にあったと認められる。
 また、30.6.5団交において、組合がなぜC2社及びC3社に行けないのか尋ねたことに対し、会社は、得意先である荷主 からそのように言われている旨述べたことが認められることからすると、会社は、広域協組合員である得意先の企業の意向に同調 したものといわざるを得ない。
ウ 以上のとおりであるから、会社は、会社において相当期間就労してきた日々雇用組合員6名の就労日数を大きく減らし、別組 合らの組合員との間で差をつけたことは、組合員であるがゆえに正当な理由なく収入を得る機会を奪ったものであり労働組合法第 7条第1号に該当する不当労働行為である。
エ また、かかる会社の行為は、会社に雇用される従業員だけではなく、他の生コン産業に従事する労働者にも組合への加入をた めらわせることによって、組合を弱体化させるものであり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
2 30.7.4団交申入れに対する会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。(争点2)
ア 会社が共済保険料を負担していること、リース稼働表に日々雇用組合員6名の氏名を記載していることをもって、会社が日々 雇用組合員6名を特定し、常用的に日々雇用していたとの根拠とすることはできないものの、会社は、日々雇用組合員6名につい て、1年近くの間、1か月当たり17日程度の日々雇用を続けていたこと、胸に会社のマークが無いこと以外は正社員と同じ作業 服を支給して日々雇用していたこと、配車先を記録する「台帳」や乗務員点呼簿の記載をみても、同人らが使用する車両を固定し ていたこと、同人らと会社との雇用関係が、組合加入前から一定継続していたこと.を併せ考えると、会社は、実質的には日々雇 用組合員6名を特定した上で、特段の事情がない限り、会社で常用的に就労することを前提に扱ってきたというべきである。
 以上、総合すると、日々雇用組合員6名は会社に常用的に日々雇用されているといえ、30.7.4通告書に記載された団交事 項は、日々雇用組合員6名の就労日数に係る事項であるから、義務的団交事項に当たるといえる。
イ 30.7.4通告書に記載された団交事項は、義務的団交事項に当たるところ、会社がこれに正当な理由なく団交に応じない ことは、不当労働行為に当たる。
 この点について、会社は、30.7.4団交申入れに応じない理由として、事実上、30.4.19団交及び30.6.5団交 の席上で日々雇用労働者の使用に関する交渉を行っており、それらの団交において誠実に対応し、30.7.4通告書記載の団交 議題に関する議論は平行線となっていたと主張することから、このような会社の主張が、30,7.4団交申入れに応じない正当 な理由といえるかについて検討する。
 30.4.19団交及び30.6.5団交において、30.7.4通告書記載の団交議題である日々雇用組合員6名の就労日数 に係る事項について話し合われているものの、30.4.19団交においては、会社は、日数について工夫を求めた組合に対し、 工夫にも限度がある旨を回答したのみであり、30.6.5団交においては、会社は、組合が某社での仕事を求めたのに対し、一 度確認しなければならない旨のみを回答し、組合が場内での仕事を求めたことに対しても、場内の仕事も駄目になるかもしれない 旨を述べているのみであるといえる。
 そうすると、 30.7.4通告書記載の団交議題である日々雇用組合員6名の就労日数に係る事項について、会社は30.4.19団交及び30.6.5団交いずれにおいても、組合を納得さ せるべく、具体的な根拠を示し、説明を尽くしていたとまではいえず、団交が膠着状態となり、これ以上開催しても無意味な状態 であったとまでみることはできない。
 したがって、30,7.4通告書記載の団交議題に関して、議論が平行線となっていたためという会社の主張は、30.7.4 団交申入れに応じないことの正当な理由とはいえない。
ウ 以上のことからすると、30.7.4通告書に記載された団交事項は、義務的団交事項であるところ、会社が30.7.10 回答書によりこれに応じない旨の回答をしたことは、正当な理由なく団交に応じなかったものと判断され、かかる行為は、労働組 合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。  
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