労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和2年(不再)第45号・第46号・第47号
浪速建資産業外1社不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」)(45号)、Y1会社(46号)、Y2会社(47号) 
再審査被申立人  Y1会社(45号)、Y2会社(45号)、X組合(「組合」)(46・47号) 
命令年月日  令和6年2月21日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、①Y1会社が、組合からの平成30年5月11日付け団交申入れ(5.11団交申入れ)に応じなかったこと、②Y2会社が、組合からの同年9月7日付け団交申入れ(9.7団交申入れ)に応じなかったこと、③Y1会社及びY2会社(以下、両社を併せて「会社ら」という。)が、組合からの同月19日付け団交申入れ(9.19団交申入れ)に応じなかったことが、それぞれ労働組合法(労組法)第7条第2号に、④Y1会社が組合員らを懲戒解雇したこと(本件各解雇)が、会社らによる同法同条第1号及び第3号に、⑤Y2会社が、組合事務所の明渡しを通知し、閉鎖したことが、同法同条第3号に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労働委員会は、上記1の②ないし④について不当労働行為の成立を認め、(a)Y1会社に対し、③について団交応諾を、(b)Y2会社に対し、②、③について団交応諾を、(c)会社らに対し、④について本件各解雇がなかったものとしての取扱い及び原職復帰を、(d)会社らに対し、文書交付を命じ、その余の申立てを棄却したところ、組合及び会社らは、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。 
命令主文要旨  (1) 初審命令中、組合員らを懲戒解雇したことに対する救済部分を取り消し、初審命令主文を次のとおり変更する。
① Y2会社は、9.7団交申入れに応じること
② Y1会社は、文書交付をすること(9.19団交申入れに係る対応について)
③ Y2会社は、文書交付をすること(9.7団交申入れ及び9.19団交申入れに係る対応について)
④ その余の組合の申立てを棄却
(2) その余のY1会社の再審査申立てを棄却
(3) その余のY2会社の再審査申立てを棄却
(4) 組合の再審査申立てを棄却 
判断の要旨  (1) 組合は労組法第2条の要件を満たすかについて
 会社らは、組合が労組法第2条第2号にいう「使用者の経理上の援助を受けるもの」に当たり、本件申立ては却下されるべきである旨主張する。しかし、初審救済命令時点において、組合は、会社らの主張する経済的な利得を得ておらず、「使用者の経理上の援助を受けるもの」に該当しない。
(2) 会社らの行為が労組法上の不当労働行為に該当するかについて
ア 5.11団交申入れに対してY1会社が応じなかったことは、労組法第7条第2号の団交拒否に当たるか
 義務的団交事項とは、組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものをいうところ、組合の労働者供給事業から派遣されたものをY1会社において就労させることを求めるという議題は、Y1会社の労働者の労働条件その他の待遇に関する事項ではなく、義務的団交事項に該当しない。よって、5.11団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の団交拒否に当たらない。
イ 9.7団交申入れに対してY2会社が応じなかったことは、労組法第7条第2号の団交拒否に当たるか
 9.7団交申入れに係る議題は、平成27年12月の集団労使交渉において合意されたY2会社の日々雇用労働者に関する賃上げ遡及分の支払を求めるものといえ、労働者の労働条件その他の待遇に関する事項に当たり、義務的団交事項に該当する。したがって、Y2会社は、組合からの9.7団交申入れについて、正当な理由なく団体交渉に応じなかったものであり、労組法第7条第2号の団交拒否に該当する。
ウ 9.19団交申入れに対して会社らが応じなかったことは、労組法第7条第2号の団交拒否に当たるか
 9.19団交申入れに係る議題は、威力業務妨害の疑いで逮捕された後の組合員らの雇用や労働条件という将来の労働条件等について団交を申し入れたものといえ、義務的団交事項に該当する。したがって、会社らは、組合からの9.19団交申入れについて、正当な理由なく団体交渉に応じなかったものであり、労組法第7条第2号の団交拒否に該当する。
エ 本件各解雇は会社らによる労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に当たるか
 組合員らは、平成29年12月、組合員と労使関係にない複数の会社に対して、その業務を妨害したことが認められ、これにより有罪判決を受けており、業務妨害行為に及んだ時点で、客観的には就業規則の制裁規定に該当する行為があったと認められる。そして、各業務妨害行為の態様は、執拗かつ粗暴で、組織的・計画的に行われたものであって、業務に与えた影響も大きかったと評価されていることからすれば、組合員らの上記行為は悪質な犯罪行為といえる。以上の事情からすれば、Y1会社が、自社と同じ業界の企業に対する威力業務妨害の疑いで逮捕・勾留された組合員らについて、解雇を選択することには合理的理由があったといえる。
 また、組合員らのうち1名は、会社らの業務命令を受けて業務への復帰を求められてもこれに従わず、その後しばらくして、ようやく出勤するようになったものの、毎月相当な日数を欠勤した。このような事実を踏まえると、就業規則の制裁規定に該当する行為があったと認められ、この点からも、Y1会社が解雇を選択することには合理的理由があったといえる。
 以上から、本件各解雇について、Y1会社に不当労働行為意思があったとは認められず、労組法第7条第1号に該当しない。また、組合の弱体化を企図して行われたものとは認められず、同条第3号に該当しない。
オ Y2会社が、組合に対し、組合事務所を明け渡すよう通知し、その後組合事務所を閉鎖したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか
 Y2会社が組合事務所の明け渡しを求めた時点で、Y2会社に勤務する組合の組合員は存在していなかったと認められること等を踏まえれば、組合事務所の明け渡しも、Y2会社に勤務する組合の組合員が存在しなくなったことを理由としてされたものといえる。
 以上から、組合事務所を明け渡すよう通知し、その後組合事務所を閉鎖したことについて、Y2会社に不当労働行為意思があったとは認められず、労組法第7条第3号に該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成30年(不)第71号・令和元年(不)第16号 一部救済・棄却 令和2年9月25日