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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第71号・令和元年(不)第16号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社・Y2会社 
命令年月日  令和2年9月25日 
命令区分  一部救済・棄却 
重要度   
事件概要   本件は、①Y1会社らが団体交渉に応じなかったこと、②Y1会社らが組合員2名を懲戒解雇したこと、③Y2会社が組合事務所について明渡しを通知し閉鎖したこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、Y1会社及びY2会社に対し、①の一部について労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして団交応諾及び②について同条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして原職復帰及びバックペイを、並びに文書の交付を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y1会社は、申立人からの平成30年9月19日付け団体交渉申入れに応じなければならない。
2 被申立人Y2会社は、申立人からの平成30年9月7日付け及び同月19日付け団体交渉申入れに応じなければならない。
3 被申立人Y1会社及び同Y2会社は、申立人組合員A2を平成30年10月31日をもって懲戒解雇したこと及び同A3を同年11月18日をもって懲戒解雇したことをそれぞれなかったものとして取り扱い、同人らをそれまで就けていた職又はその相当職に就けなければならない。
4 被申立人Y1会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1様
Y1会社      
代表取締役 B
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)貴組合からの平成30年9月19日付け団体交渉申入れに応じなかったこと(2号該当)。
(2)平成30年10月31日をもって貴組合員A2氏を、同年11月18日をもって同A3氏を懲戒解雇したこと(1号及び3号該当)。
5 被申立人Y2会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
Y2会社      
代表取締役 B
 当社及びY1会社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、当社による労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)当社が貴組合からの平成30年9月7日付け及び同月19日付け団体交渉申入れに応じなかったこと(2号該当)。
(2)Y1会社が平成30年10月31日をもって貴組合員A2氏を、同年11月18日をもって同A3氏を懲戒解雇したこと(1号及び3号該当)。
6 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 Y2会社は、本件組合員らの労働組合法上の使用者に当たるか。(争点1)
ア 本件組合員らとY1会社らの間で雇用契約書が作成されたとする疎明はないところ、Y1会社が本件組合員らの使用者に当たることについては争いがないが、組合は、Y2会社も使用者に当たる旨主張する一方、Y1会社らは、本件組合員らと雇用契約を締結しているのはY1会社で、Y2会社は出向先であって、使用者たり得ない旨主張する。
 ところで、労働組合法第7条にいう「使用者」については、労働契約上の雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、当該事業主は同条の使用者に当たるものと解するのが相当である。そこで、以下、Y2会社の使用者性について検討する。
イ まず、Y1会社とY2会社の関係についてみると、①Y1会社は、Y2会社で製造する生コンを運搬しており、Y2会社で業務に使用されるミキサ一車は、Y1会社の所有であったこと、②Y1会社とY2会社の代表者は、ともにB社長であったこと、③Y1会社の常務取締役の名刺の裏面には、C1グループとしてY2会社を含む複数の会社名が住所や電話番号とともに記載されていたこと、がそれぞれ認められ、両社は、業務上、密接な関係にあるということができる。
ウ 次に、A2組合員の雇入れの経緯等についてみると、①従前、A2組合員は、日々雇用労働者として、次いで、C2会社の正社員として、Y2会社の事業所においてミキサー車の運転手として勤務していたこと、②組合等とY2会社との間で20年10月確認書が作成され、この確認書には、(i)Y2会社は、A2組合員と組合員A4に対し、C2会社の賃金労働条件を引き継ぎ、平成20年11月21日から雇用する(ただし、A2組合員は、同18年1月から実施している)、(ii)Y2会社は、同20年10月21日付けより組合員A4をY1会社の従業員とする(ただし、A2組合員は同18年1月から実施している)、(iii)A2組合員を含む4名の組合員の身分については、Y1会社とY2会社が連帯して責任を負うこととする旨の条項が含まれていたこと、がそれぞれ認められる。
 そうすると、20年10月確認書の条項からは、平成18年1月以降のA2組合員の雇用主がY1会社であるか、Y2会社であるかは判然としないが、20年10月確認書に調印した当事者はY2会社であって、A2組合員の身分については、Y1会社とY2会社が連帯して責任を負う旨定められているのだから、雇用主はY1会社とされたとしても、Y2会社がA2組合員の雇入れに関与したことは明らかである。
 また、A3組合員については、①平成24年9月3日から、A3組合員は、日々雇用労働者としてY2会社にてミキサー車の運転手として就労するようになったこと、②組合等とY2会社との間で平成29年6月23日付けで協定書が作成され、この協定書には、Y2会社はA3組合員を同年7月21日付けで正規雇用にする旨等が記載されていたこと、が認められるのだから、同様に、雇用主はY1会社とされたとしても、Y2会社がA3組合員の雇入れに関与したことは明らかである。
エ また、Y1会社らが本件組合員らに対し、業務復帰を求めた際の文書等についてみると、①3.1業務命令や3.22業務命令の際の文書は、Y1会社らの連名であること、②A2組合員に対する6.4警告書は、Y1会社らの連名であって、このままの就業状況が続くようであれば、A2組合員を解雇せざるを得なくなる旨の記載があること、が認められ、Y2会社はY1会社とともに、懲戒処分の可能性に触れ、業務命令を行っていたとみるのが相当である。
 さらに、組合とのやりとりをみても、①組合はY2会社に対し、3.1業務命令に関して団交を申し入れたこと、②Y2会社の組合に対する平成30年3月9日付け回答書には、雇用関係に基づき従事することが本来の姿である旨の記載が含まれていること、③組合とY2会社との間で団交が開催され、組合は、本件組合員らは就労に応じる旨返答したこと、④Y2会社から組合に対する4.10会社側文書には、Y2会社への業務復帰命令は正当なものである旨の記載が含まれていること、⑤本件逮捕を機になされた9.19団交申入れに対するY2会社の9.28回答書には、本件組合員らの雇用・労働条件について、従前どおりとし、一切変更しないなどという要求には応じられない旨の記載が含まれていること、がそれぞれ認められ、これらのことからすれば、Y2会社は、本件組合員らの就労についての団交申入れに、使用者として対応していたというべきである。
オ 以上のとおりであるから、Y2会社は、本件組合員らの基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に、現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあるというのが相当である。
 ところで、本件解雇はY1会社名のみで通告されたことが認められるが、上記のようなY2会社の本件組合員らの雇用や労働条件の決定への関与の程度を考慮すると、20年10月確認書は、A2組合員の身分については、Y1会社とY2会社が連帯して責任を負う旨定めているところ、身分についての連帯責任には解雇も含まれるというべきであるのだから、本件解雇についても、Y2会社は使用者の地位にあるというのが相当である。
カ したがって、Y2会社は、本件組合員らの労働組合法上の使用者に当たると判断される。
2 5.11団交申入れにY1会社が応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。(争点2)
ア 5.11団交申入れの要求事項には、組合の労働者供給事業から供給された者を就労させることが含まれていることが認められる。
 ところで、組合員を従業員として新規に採用することを要求し、団交が申し入れられれば、有期限雇用の契約更新や事業議渡のように、雇用を期待できるとする合理的な理由がある場合については格別、一般的には、新規の採用は義務的団交事項には当たらないと判断されるところである。そうすると、組合の労働者供給事業から供給された者の就労を求めるという議題についても、単なる就労要求ではなく、就労を期待できるとする合理的な理由がある場合など、特段の事情がない限り、義務的団交事項に当たらないというのが相当である。
 したがって、本件において、労働者供給事業から供給された者の就労を期待できるとする合理的な理由があるか否かについて、検討する。
イ  5.11団交申入れの組合の労働者供給事業から供給された者の就労を求めるという議題を義務的団交事項に当たるとみることはできないのであるから、5,11団交申入れにY1会社が応じなかったことは、正当な理由なく団交に応じなかったものとはいえず、この点に関する組合の申立てを棄却する。
3 9.7団交申入れにY2会社が応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。(争点3)
ア 9.7団交申入れの要求事項は、組合を含む労働組合と経営者会(近畿の生コン製造会社等を会員とする団体)の間の27.12.14集団交渉にて、日々雇用労働者の未払賃金に相当する解決金の支払に合意したとして、Y2会社に対し、同社の日々雇用労働者分の解決金の支払を求めたものというのが相当である。そうすると、9.7団交申入れの議題は、Y2会社の日々雇用労働者の賃金に関するものであって、義務的団交事項に当たるというべきである。
イ 27.12.14集団交渉の合意はY2会社から委任を受けた経営者会が締結したものであり、その効果はY2会社に帰属するといえる。
ウ そうすると、27.12.14集団交渉の後に、Y2会社は経営者会を脱退してはいるが、組合がY2会社を交渉の相手として、27.12.14集団交渉における日々雇用労働者の未払賃金に相当する解決金の支払についての合意に関して、団交を申し入れることには理由があり、9.7団交申入れにY2会社が応じるべき法的義務はないとするY1会社・Y2会社の主張は採用できない。
エ 以上のとおりであるから、9.7団交申入れにY2会社が応じなかったことは、正当な理由なく団交に応じなかったものと判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
4 9.19団交申入れにY1会社らが応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。(争点4)
ア 9.19団交申入れは、Y1会社らを連名のあて名とする団交申入書により行われ、この団交申入書には、本件逮捕は不当であるとし、逮捕された組合員の雇用・労働条件について団交を開催するよう申し入れる旨とともに、「1.会社は、A2組合員とA3組合員の雇用・労働条件は従前通りとし、一切変更を行われないこと。2.その他、関連事項。」と記載されていたことが認められる。そうすると、組合は、Y1会社らに対し、本件逮捕後の本件組合員らの雇用や労働条件について団交を申し入れたとみるのが相当であって、9.19団交申入れの議題が義務的団交事項に当たることは明らかである。
イ これに対するY1会社らの対応をみると、Y2会社は組合に対し、9.28回答書にて、①本件組合員らの雇用・労働条件について、従前どおりとし、一切変更しないなどという要求には応じられない、②このような抽象的要求について、団交を開催する必要は認められない旨回答したこと、が認められる。
 しかし、使用者が、組合からの要求に応じられないと判断したからといって、団交の開催に応じ、その席で使用者としての考えを述べ、組合と協議すべき義務が免じられるものではない。また、本件の議題が、協議を行えない程度に具体性を欠くとはいえない。
ウ 以上のとおりであるから、9.19団交申入れにY1会社らが応じなかったことは、正当な理由なく団交に応じなかったものと判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
5 Y1会社が、平成30年10月31日をもってA2組合員を、同年11月18日をもってA3組合員を、それぞれ解雇したことは、Y1会社らによる、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点5)
ア 本件解雇の手続についてみると、Y1会社は、A2組合員に対しては10.1A2解雇通告書にて、A3組合員に対しては10.19A3解雇通告書にて、懲戒解雇を通告したことが認められるが、それに先立って、Y1会社が本件組合員らに対し、事実確認や事情聴取の機会を設けようとしたとする疎明はない。
 また、本件解雇通告書には、弁明がある場合は解雇日までに行うよう求める旨の記載があるが、そもそも、本件解雇通告書には、適用される就業規則の条項のみが記載され、懲戒解雇の理由となる具体的な行為についての記載がないことが認められ、かかる状況下で、処分の通告と同時に弁明を求めたことをもって、適切な弁明手続を経て、懲戒解雇が行われたとみることはできない。
イ 本件解雇は、労使が対立している状況下で、本件組合員らに十分な弁明の機会を与えるなど、懲戒解雇に相当するような行為があったか否かを確認することなく行われたというべきである。
 したがって、本件解雇はY1会社らによる、組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、もって組合を弱体化させるものと判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
6 Y2会社が、11.22通知書により、組合に対し、本件組合事務所を明け渡すよう通知し、その後、本件組合事務所を閉鎖したことは、組合に対する支配介入に当たるか。(争点6)
ア 11.22通知書には、現在、Y2会社に、組合員は存在しないとする記載とともに、本件組合事務所を平成30年11月30日までに明け渡すよう通知する旨記載されていたことが認められる。
 そこで当時の状況についてみると、①A2組合員は、平成30年10月31日をもって、A3組合員は、同年11月18日をもって、それぞれ本件解雇の手続がなされたこと、②同年10月30日に組合員2名が脱退した後は、組合の分会に属する組合員は本件組合員らのみとなっていたこと、がそれぞれ認められる。そうすると、明渡しの通知自体は、組合員2名の脱退や本件解雇から間を置かず、約1週間後を明渡期限として行われており、性急であるとの感は否めず、また、本件解雇については不当労働行為と判断されるところである。しかし、Y2会社にて実際に動務する組合員はいなくなったといえるのであるから、かかる状況下で、Y2会社が、同社の敷地内に組合事務所を貸与する必要性がなくなったと判断したとしても、やむを得ないところがある。
イ 次に、その後の経緯をみると、①組合はY1会社らに対し、平成30年11月29日付け抗議書を送付したこと、②Y2会社は、当初の明渡期日である同月30日を過ぎた同年12月21日、同日付け通知書を組合に送付し、本件組合事務所内のテレビ、ノートパソコン等の荷物を回収するよう求めたこと、③同月26日、組合は、本件組合事務所内の組合が所有する物品を運び出し、本件組合事務所は閉鎖されたこと、がそれぞれ認められ、Y2会社は、一定の期間を置いて、組合に明渡しに応じるよう求め、組合も最終的にはこれに任意に応じたということができ、強制的な手段を用い、本件組合事務所を開鎖したものには当たらない。
ウ 以上のとおりであるから、Y2会社が、11.22通知書により、組合に対し、本件組合事務所を明け渡すよう通知し、その後、本件組合事務所を閉鎖したことは、組合に対する支配介入に当たるとまでいうことはできず、この点に関する申立ては棄却する。 
掲載文献   

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