労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和3年(不再)第38号
千原生コンクリート不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和5年10月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①組合との間で交わした協定書(本件協定)に基づき締結された、組合員が雇用されている申立外会社との運送委託契約(本件運送委託契約)を終了させたこと、②その結果、同申立外会社が組合員を解雇する旨を通知(本件通知)したことを受けて組合が団交を申し入れたところ、これに応じなかったことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労働委員会は、組合の救済申立てを棄却し、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 判断枠組み
 本件組合員12名は、申立外会社との間で雇用契約を締結しており、会社と本件組合員12名との間には、いずれも雇用契約関係は存在しない。
 もっとも、労組法第7条の「使用者」は、労働契約関係にある者に限られず、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、労組法上の使用者に該当するというべきである。
(2) 本件組合員12名の採用、解雇及び労働条件等の決定について
ア 会社は、申立外会社との間で本件運送委託契約を締結しているが、申立外会社の従業員の採用や、会社の業務依頼に対してどの従業員を乗務させるか決定していたのは、申立外会社である。
イ 本件通知の意思決定を行ったのは申立外会社であって、会社ではないことに加え、本件契約終了が、直ちに本件組合員12名の解雇に結び付くと認めるに足りる証拠はない。
ウ 本件協定に基づき常に固定した7台のミキサー車が会社神戸工場の構内に駐車されていたことは、本件協定上の義務の履行として固定車両の提供を受け、車庫を貸与したのみであって、それ以上に本件組合員12名の就労内容を具体的に支配・決定するものではないというべきである。
エ 本件組合員12名は、会社神戸工場内にある車庫に直接出退勤をし、当日の輸送先や残業、休憩時間等についても、会社が組合員に直接指示をしていたこと等は、生コンという使用期限が短い製品を輸送対象とする本件運送委託契約の性質上、会社出荷係の指示や連絡は当然必要となるものであり、本件運送委託契約上の指示であるとして矛盾はない。本件組合員12名が、会社神戸工場で業務に従事する際、申立外会社が設置したタイムカードを打刻していたことや、申立外会社が組合員の休暇連絡を受けて欠員の補充を手配していたことも考慮すると、本件組合員12名については、申立外会社が勤務時間管理を行っていたというべきである。このことも考慮すれば、会社が、本件運送委託契約上の指示の範囲を超えて、本件組合員12名の勤務時間等について指揮命令を行っていたとは認められない。
オ 以上のとおり、本件組合員12名は、申立外会社において採用され、本件通知の際は申立外会社において解雇を言い渡されているのであって、その判断に会社が何らかの影響を及ぼしたと認めるに足りる証拠はなく、雇用契約上の雇用主としての地位になく、本件組合員12名の就労実態等をみても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとは認められない。
 したがって、会社は、本件組合員12名との関係で、労組法上の使用者には該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和2年(不)第20号 棄却 令和3年10月1日