労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和2年(不再)第51号・第52号
五一不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」)(51号)、Y会社(「会社」)(52号) 
再審査被申立人  Y会社(「会社」)(51号)、X組合(「組合」)(52号) 
命令年月日  令和5年2月2日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合は、会社が①A1組合員に対して退職金を払わなかったこと、②A1組合員及びA2組合員に対して、就労日数の減少に伴う収入減額の補填分を支払わなかったこと、③A3組合員らの所属するC社との間の運送委託契約を終了させたことが、それぞれ労働組合法(労組法)第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に当たると主張し、また④上記①ないし③の事項等を協議事項とする団体交渉申入れに応じなかったことが、同条第2号の不当労働行為に、⑤平成30年5月以降、A2組合員の就労を打ち切ったことが、同条第1号及び第3号の不当労働行為に該当すると主張して、初審大阪府労働委員会(府労委)に救済を申立てた。
2 本件は、府労委が、組合の申立てを一部(上記④及び⑤)認容し、その余を棄却することを決定し、命令書を交付したところ、当事者双方が命令書を不服として再審査を申し立てた事案である。 
命令主文  本件再審査申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  (1) 争点1-1(A1組合員及びA2組合員との関係での使用者性)
 会社は、A1組合員及びA2組合員との間で雇用契約を締結しており、その契約関係や就労経過等に照らすと、両名に関する各争点(上記1①、②、④及び⑤)のいずれについても、労組法第7条の使用者に当たる。
(2) 争点1-2(A3組合員らとの関係での使用者性)
 A3組合員らはC社と雇用契約を締結し、C社と会社との間の運送委託契約に基づいて会社の業務に従事している者である。その就労実態等をみても、会社がA3組合員らとの関係で労組法上の使用者に当たるとは認められない。
(3) 争点2(退職金支払合意の成否及び退職金を支払わなかったことの不当労働行為性)
 交渉の経過をみても、会社が組合との間で、A1組合員に対して退職金を支払う旨を合意した事実は認められない。また、会社とA1組合員との間の嘱託雇用契約には、退職金はない旨の条項が含まれていたことも考慮すれば、会社が退職金を支払わなかったことが、不当労働行為意思に基づくものとはいえず、不当労働行為には該当しない。
(4) 争点3(収入減額補填分支払合意の成否及び収入減額補填分を支払わなかったことの不当労働行為性)
 収入減額補填分の支払とは、いわゆる日雇手帳を利用した就労を行っていたA1組合員及びA2組合員について、就労日数が不足し、日雇労働求職者給付金が受けられなかったことについて、会社が労働者との合意の下、同給付金相当額を両組合員に補填するというものであるが、会社が組合との間で、この支払を行う旨を合意した事実は認められない。
 この補填は、もとより会社が支払い義務を負うものではなく、会社がこれを支払わなかったことが、不当労働行為意思に基づくものとはいえず、不当労働行為に該当しない。
(5) 争点4(C社との運送委託契約終了の不当労働行為性)
 上記(2)のとおり、A3組合員らとの関係で会社の使用者性は認められないため、その余の点を検討するまでもなく、C社との運送委託契約終了は不当労働行為に該当しない。
(6) 争点5(団交申入れに対する会社の対応の不当労働行為性)
 会社は、組合の団交申入れ事項について、その意味するところが不明確であるから、団体交渉に応諾しなくとも団交拒否には当たらないと主張する。
 しかし、会社が不明確と主張する「A1・A2組合員の最終確認事項」は、継続して協議されていたA1組合員及びA2組合員の収入減額補填分支払並びにA1組合員の退職金協議を求めるものであることは、経過からして明らかである。また、「2018年3月3日付け春闘統一要求」は、あらかじめ交付されていた春闘統一要求書に係るものであり、このうち、一部の申入れ事項が少なくともA2組合員の労働条件に関する事項であることは判断可能であった。したがって、これらは義務的団交事項に当たるのであって、申入れ事項の不特定を理由に団体交渉を拒否することはできない。よって、会社の対応は不当労働行為に当たる。
(7) 争点6(A2組合員に対する就労打切りの不当労働行為性)
 会社は、平成30年4月27日の勤務を最後に、日々雇用の形態で就労していたA2組合員に就労を依頼しなくなったことが認められるところ、同人の就労経過等からして、上記就労打切りには労組法第7条第1号の不利益性が認められる。そして、会社がA2組合員の就労を打ち切った理由として主張する事実を認めることはできない。他方、平成29年12月以降の組合の活動をめぐる状況や、本件審査過程における会社の主張立証等に鑑みれば、会社の上記就労打ち切りは、組合員を排除して、組合の関与を防ぐという目的の下での行為であったというべきである。したがって、会社の行為は不当労働行為に当たる。
(8) 救済方法
 不当労働行為状態の是正及び正常な労使関係の構築のため、組合に対する救済としては、初審命令と同様に、会社に対し、不当労働行為を認め、今後同様の行為を繰り返さないことを誓約する旨の文書の交付を命ずることとする。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成30年(不)第51号 一部救済 令和2年10月26日
 
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