労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和3年(不再)第51号
ダイヤゼブラ電機不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y1会社(「会社」) 
命令年月日  令和5年3月15日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 A組合員は、組合に対し、Y2会社における賃下げや労働条件等に関する相談をし、組合に加入した。
 組合は、Y2会社に対し、令和2年6月16日、A組合員の相談事項等を議題とする団体交渉を申し入れ、同年7月6日、団体交渉が開催された。
 組合は、上記団交申入れと並行して、令和2年6月17日以降、組合が管理運営するブログ(「組合ブログ」)において、Y2会社及び同社の代表取締役(「社長」)に関する記事を複数掲載した。これについて、Y2会社及び社長は、同年7月9日、組合及び組合の執行委員長に対し、上記組合ブログの記事が名誉毀損等に当たると主張して、不法行為に基づく損害賠償の支払等を求める訴え(「本件訴訟」)を、大阪地方裁判所に提起した。
2 本件は、組合が、Y2会社が本件訴訟を提起したことが、労働組合法(「労組法」)第7条第3号の不当労働行為に当たると主張して、大阪府労働委員会(「大阪府労委」)に対し、救済を申し立てた事案である(「本件申立て」)。
3 初審大阪府労委は、救済申立てを棄却する旨の命令を交付した。組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
 なお、Y2会社は、令和3年10月1日にグループ会社の再編に伴い吸収分割されることとなり、本件申立てに係る被申立人の地位は、Y1会社に承継された(以下、吸収分割前のY2会社と同社を承継した後のY1会社のことを総称して「会社」という)。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 組合の主張の要旨
 組合は、本件訴訟の提起は、正当な組合活動に対する損害賠償請求訴訟であって違法であるとともに、会社による不当な組合潰しの目的の下に仕組まれた、いわゆる訴権の濫用たるスラップ訴訟(恫喝的訴訟)であって、労組法第7条第3号の支配介入に当たると主張する。
(2) 本件訴訟提起の目的等について
ア 組合は、本件訴訟の提起は、組合潰しを目的とするものであり、訴権の濫用に当たる旨を種々主張するが、組合の主張を認めるに足りる証拠はない。
イ 組合は、本件訴訟提起を境とするA組合員の態度の変化からすると、A組合員の役割は会社を本件訴訟に導くことであり、会社は初めから組合を潰そうと企んで、A組合員を組合に対するスパイとして送り込んだものであることは明らかであると主張する。
 しかし、A組合員が本件訴訟提起後に組合ブログの訂正を求めたり、組合脱会の意思を示したりといった事情は認められるが、その原因は明らかではなく、これらの事実からして、A組合員の役割が会社を本件訴訟に導くことであったり、組合への相談が会社の意を受けたものであったことが推認されるものではない。むしろ、本件の経過をみると、A組合員の脱会については、他の事情を契機とするものであるともみられる。さらに、そもそも、組合と会社の間に、A組合員の組合への相談以前に何らかの接触があったともうかがわれないのであって、このことからすると、組合の主張を採用することはできない。
ウ 組合は、会社は、団体交渉で組合ブログの記載について何ら抗議をせず、本件訴訟を提起したことは、訴権の濫用を示す事情であると主張するが、訴訟提起前に抗議をすることが義務付けられるものではなく、事前に抗議をしなかったからといって、本件訴訟の提起が訴権の濫用であるとはいえない。
エ 組合は、組合ブログの記載は正当な宣伝活動であり、本件訴訟提起は訴権の濫用であると主張するが、真実性の抗弁等による違法性阻却が認められるかも含めて、訴訟において審理がされるのであり、また仮に会社の請求が棄却されたとしても、直ちに訴権の濫用ということにはならない。
オ また、組合は、本件訴訟提起によって組合活動が阻害される旨主張するが、本件訴訟の提起に関して組合の主張するような目的は認められないのであって、組合の主張は前提を欠く。組合に応訴負担等が生じた事実があったとしても、そのことによって支配介入が成立するものではない。
(3) 以上、本件訴訟の提起が労組法第7条第3号に当たるとする組合の主張はいずれも採用できず、その他本件訴訟提起が組合に対する支配介入に当たることをうかがわせる事実もなく、本件申立てを認めることはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和2年(不)第43号 棄却 令和3年12月10日
 
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