労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和2年(不)第43号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y1会社(審問終了後に、会社分割により本件を含む事業をY0会社から承継。Y0と称していた時期を含め「会社」) 
命令年月日  令和3年12月10日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合員Aの配置転換等を議題とする団体交渉の後、組合のウェブサイト内の記載が名誉毀損に当たるなどとして、組合に対する損害賠償等請求訴訟(以下「本件訴訟」)を提起したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件訴訟は初めから組合をつぶすために、計画的に仕組まれたものである旨の組合の主張について 

 組合は、会社が、2.7.6団交において、ブログの内容について抗議をしなかったにもかかわらず、その3日後、本件訴訟が提起されたことから、会社が団交前に既に訴状を用意していたとして、本件訴訟は初めから組合をつぶすために計画的に仕組まれたものであり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である旨主張する。
 本件訴訟提起に至る経緯についてみると、確かに、2.7.6団交を行った3日後に本件訴訟が提起されてはいるが、その約3週間前には、本件訴訟の対象である2.6.17ブログ記事が掲載され、続いて、2.6.24ブログ記事、2.6.29ブログ記事、2.7.1ブログ記事、2.7.7ブログ記事の掲載という一連の経過を経て本件訴訟が提起されていることから、団交の3日後に本件訴訟が提起されたことが、特に不自然な経緯とはいえない。また、団交で抗議せず本件訴訟を提起したからといって、組合つぶしを企んだものであるとはいえない。
 また、組合は、A組合員の言動が不可解であったとして、会社が組合をつぶそうと企み、Aを組合に送り込んで、嘘の相談を行わせ、組合をわなにかけた旨も主張するが、組合の主張する不可解なAの言動については、事実の疎明がなく、仮に事実であったとしても、そのことをもって、会社が組合をつぶすためにAを組合に送り込んだものであり、本件訴訟が計画的に仕組まれたものであったとみることはできない。加えて、Aが組合に2.9.13脱会届を送付したことについても、脱会届には一定の理由も記載してあり、Aの当該行動が不自然であるとまではいえない。
 その他、組合の主張を認めるに足る事実の疎明もないことから、本件訴訟は初めから組合をつぶすために、計画的に仕組まれたものである旨の組合の主張は採用できない。

2 本件は、裁判を受ける権利の濫用である旨の組合の主張について 

 組合は、本件訴訟は、長期に組合の日常業務を妨害することだけが目的なのであるから、裁判を受ける権利の濫用である旨、主張する。
 2.6.17ブログ記事等が名誉毀損に該当するか否かは裁判所が判断することであるが、会社が本件訴訟を提起した原因となった同ブログ記事等を組合が掲載したことは事実であり、その内容が、社長の名誉を毀損し、会社の信用を毀損するものであるとして訴訟を提起したことが、明らかに不自然、不合理で無理のある対応であるということもできない。なお、組合は、当該ブログは組合員数十人が見るだけである旨主張するが、インターネット上で、特に閲覧制限も、会社名を匿名化することもなく掲載しているブログ記事に対して、組合の当該主張は認められない。
 確かに、損害賠償等請求訴訟の被告とされることは、心理的又は経済的な負担になることは否定できず、この点は労働組合においても例外ではない。しかしながら、憲法第32条によれば、何人も民事事件において裁判所に訴えを提起する権利は否定されないものであるから、組合及び執行委員長の行為が、社長の名誉及び会社の信用を毀損したとして損害賠償等の訴えを提起することもまた、権利の行使として尊重されるべきであり、労働委員会が公的判断をもってこれを制限することは慎重であるべきである。
 これらのことからすると、本件訴訟の提起が裁判を受ける権利の濫用であり不当労働行為であるとの組合主張は採用できない。

3 以上のことからすると、会社が、組合及び執行委員長を被告として令和2年7月9日付で本件訴訟を提起したことは、組合に対する支配介入には当たらず、本件申立ては棄却する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委令和3年(不再)第51号 棄却 令和5年3月15日
 
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