労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第61号
日本交通産業不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和5年4月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、労働時間管理に関する新たな措置(「本件労働時間管理措置」)を定めた書面を社内に掲示した上で、組合員ら2名の勤務を、それまでの夜勤と日勤の両方が組み込まれている勤務シフト(「16交番」)から、平日の日勤のみの勤務シフト(「平日日勤」)へと変更したこと(「本件シフト変更」)が、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為であるとして、組合より救済申立てがあった事案である。
2 初審山口県労働委員会は、本件申立てを棄却したところ、組合が再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 本件シフト変更は、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当するか
ア 本件シフト変更の不利益性について
(ア) 16交番では月200時間を超えていた組合員ら2名の労働時間は、平日日勤では150時間ないし160時間程度に減少し、さらに、月平均30万円以上あった賃金も、月20数万円程度まで減少していることからすれば、本件シフト変更によって、組合員ら2名に経済的な不利益が生じていることが認められる。
(イ) また、本件シフト変更の対象となる乗務員は、本件労働時間管理措置によれば、「低生産性従業員」と称されることになるが、これは、会社の乗務員における一般的認識に照らせば、およそ不名誉と受け止められるものと解すべきであるから、本件シフト変更が、精神的な不利益を伴うものであることも否定できない。
(ウ) 以上のとおりであるから、本件シフト変更は、組合員ら2名にとって不利益な取扱いであったと認められる。
イ 不当労働行為意思について
(ア) 会社がシフト変更を行うプロセスについては本件労働時間管理措置に定められており、月間売上げが30万円を下回った場合に、当該乗務員と会社との間で労働時間と生産性の整合性について協議が行われ、これが確認できなければ教育指導の対象となり、一日8時間、週40時間労働のシフト(平日日勤)に変更されるというものである。
(イ) 会社は、売上げが30万円に満たない乗務員については、労働時間と生産性の整合性を確認するため協議をし、その結果、組合員1名を含むほとんどの乗務員については教育対象とはせず、組合員ら2名及び組合員ではない1名については教育対象としたものであるが、その判断は、売上げが低い原因が、病気や介護などによる早退や休憩、欠勤等にあり、実労働時間における生産性については特段問題がないような場合には教育対象とはせず、他方、これが確認できない場合には教育のための勤務指定を行うとの考え方に基づくもので、本件労働時間管理措置の目的、内容に照らして不合理な点は認められず、また、平日日勤のシフトに変更することについても、必要性ないし合理性がないとはいえない。そして、組合員ら2名が本件シフト変更に至った経緯等を具体的に検討しても、組合員であることを理由とした恣意的な判断により教育指導の対象としてシフト変更したと認めるべき証拠は見当たらない。
(ウ) したがって、組合員ら2名を教育指導のため平日日勤にシフト変更したことが、不当労働行為意思に基づいて行われたものとは認められない。
ウ 本件シフト変更の労組法第7条第1号の不当労働行為該当性について
 以上によれば、組合員ら2名を教育指導のために平日日勤にシフト変更したことについては、乗務員全体への一律な取扱いの結果であり、不当労働行為意思によってなされたものであるとは認められないから、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当しない。
(2)本件シフト変更は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
 上記(1)のとおりであるから、組合員ら2名に対する本件シフト変更は、不当労働行為意思によってなされたものとはいえず、また、組合の弱体化を企図してなされたものとみることもできない。
 したがって、組合員ら2名を平日日勤にシフト変更したことは労組法第7条第3号の不当労働行為にも該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山口県労委平成29年(不)第3号 棄却 平成30年11月22日
 
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