労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第3・4号
相鉄ホールディングス不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(第3号)、Y会社(第4号) 
再審査被申立人  Y会社(第3号)、X組合(第4号) 
命令年月日  令和3年7月21日 
命令区分  棄却・全部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、①(ⅰ)Y会社からC会社(以下「Cバス」)に在籍出向している組合員に対しCバスへの転籍、特別退職の拡張適用又はY会社への復職を選択させることを主な内容とする提案(以下「本件提案」)に係る団体交渉におけるY会社の対応、(ⅱ)Y会社がX組合との合意がないまま本件提案の対象従業員に対し本件提案に係る説明会(以下「本件説明会」)を実施したこと、(ⅲ)Y会社が対象従業員に対し転籍・特別退職・復職の希望について意思確認を行うため「選択申出書」(以下「本件選択申出書」)の提出を求めたことが労働組合法(以下「労組法」)第7条第2号及び第3号に、②X組合が確立したストライキ権の行使について、Y会社労務部課長が、グループ会社に在籍する組合員が参加するのであれば違法なストライキとして損害賠償や懲戒処分等を検討せざるを得ない旨発言したこと(以下「本件発言」)が同条第3号に該当するとして、X組合が神奈川県労働委員会(以下「神労委」)に救済申立てを行った事件である。
 その後、Y会社は、X組合に対し、本件選択申出書の提出がなかった組合員について、順次、Y会社に復職させる旨を通告し、対象となる組合員に対して、順次、出向を解除して復職を命じた(以下「本件復職命令」)。
X組合は、③本件復職命令が労組法第7条第1号・第2号・第3号に該当するとして、救済申立てを追加した。
2 初審神労委は、上記1②及び③について労組法第7条第3号の不当労働行為に該当することを認め、本件復職命令をなかったものとして取り扱い、X組合とY会社との間で誠実に協議を行い、当該協議が終了するまでの間、Cバスへの出向を継続すること(初審命令主文第1項)並びに文書手交及び文書掲示(初審命令主文第2項)を命じ、その余の申立てを棄却した。これに対し、X組合・Y会社の双方が再審査を申し立てた(なお、③の労組法第7条第1号該当性について、X組合は再審査を申し立てていない。)。 
命令主文  1 初審命令主文第1項及び第2項を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。
2 平成30年(不再)第3号再審査申立人X組合の再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  ⑴ 本件提案に係る団体交渉におけるY会社の対応、及びX組合との合意なく本件説明会を実施し組合員に本件選択申出書の提出を求めたことは、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当するか
ア Y会社とX組合が締結した確認書等において、組合員らが定年までCバスに在籍出向することや、将来にわたりX組合との合意及び組合員本人の同意なしで転籍を求めないことが含意されたものとはいえないから、本件提案の内容が労働協約等に違反するものであるとはいえない。
イ Y会社は、本件提案から本件選択申出書を配付するまでの約1年2か月の間に計14回の団体交渉を行い、本件提案の趣旨、内容等を説明するとともに、X組合からの質問に具体的に回答し、選択肢に定年までの出向継続の追加を求めるX組合に対し、本件提案の趣旨から応じられない旨説明する一方で、転籍一時金の額や出向継続を数年延長する等の譲歩案を提示するなど、X組合との合意達成を模索しつつ交渉を行っていたものといえる。復職を選択した場合の職場や職務について、本件選択申出書の提出前に可能な範囲で説明を行わなかったことはやや配慮に欠ける点があったといえるが、このことをもって直ちに誠実団交義務に違反するとまでは評価できない。
 本件説明会は、必要性に基づくものといえ、また、Y会社は、団体交渉が同時に併行して行われていることを踏まえ、その実施を事前にX組合に通知した上、出席者にもX組合との協議により本件提案が今後変更になる可能性があることを明らかにするなど、X組合に対して相当の配慮をしたものと評価できる。
 本件選択申出書の配付も、Y会社が必要性に基づき、X組合との団体交渉が継続していることにも配慮しつつ行ったものであり、X組合の頭越しに本件選択申出書の提出を組合員に求めたとはいえない。
 これらのY会社の一連の行為を全体としてみても、労組法第7条第2号に該当しない。
ウ 本件提案は、業務上の必要性に基づき、団体交渉を経て実施されたもので、X組合を嫌悪し弱体化を企図したものとは認められず、組合脱退者の発生を考慮しても労組法第7条第3号に該当しない。
⑵ 本件復職命令は、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当するか
ア Y会社は本件復職命令に至るまで、団体交渉や事務折衝を重ね、やや配慮に欠ける点はあったものの、本件提案の必要性や内容を具体的に説明し、転籍の条件や出向の延長について打診するなど、合意達成に向けた努力をしたものといえ、本件復職命令が労組法第7条第2号に該当するとはいえない。
イ Y会社は神労委からの要望書に従い、本件提案を拒否した者の出向解除・復職を見送り、神労委の立会いの下に和解協議を行ったが、出向継続を求めるX組合との対立は解消されず、解決の見通しが立っていない状態にあったと認められ、和解協議等における Y会社の対応が、X組合や労使関係を不当に軽視するものであったとも認められない。Y会社が神労委から勧告を受けたにもかかわらず本件復職命令を発令したことは、やや拙速であったとはいえるが、X組合に対する支配介入に当たるとまでは評価できない。
ウ 本件復職命令は、業務上の必要性に基づき、団体交渉を経て発出されたもので、X組合を嫌悪し弱体化を企図したものとは認められず、組合脱退者の発生を考慮しても労組法第7条第3号に該当しない。
⑶ 本件発言は労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
本件発言は「一般的には」「(法的責任の追及を)検討せざるを得ない」と述べ、殊更に威嚇的な表現が用いられているものではなく、また、前後のやりとりを見ると、ストライキの正当性について見解の違いがあり得ることを認め、ストライキの実施について最終的にはX組合の考えを尊重する趣旨の発言をしている。本件発言は、ストライキについてのY会社の考え方をX組合に一方的に押し付けたり、X組合を威嚇してストライキ権の行使をちゅうちょさせたりするものであったとまでは評価できない。
 また、本件発言が、ストライキ権が確立した旨のX組合の発言を受けて直ちになされたことをもって、ストライキをけん制すべく不当な圧力をかけることを企図したものとまではいえない。
 したがって、本件発言は、労組法第7条第3号に該当しない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神労委平成27年(不)第15号 一部救済 平成30年1月15日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約890KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。