労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神労委平成27年(不)第15号
相鉄ホールディングス不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成30年1月15日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合に対して提案した、申立外C1会社への在籍出向により生じる出向補填費の削減を主な目的とする「バス事業支出削減策」(以下「本件提案」という。)に係る団体交渉における会社の対応、②組合との合意がないまま本件提案についての社内説明会を実施したり、組合員に対して転籍又は特別退職の拡張適用の希望についてその意思を確認する「選択申出書」の提出を求めたこと、③団体交渉で、組合に対し、本件提案等に関し、会社以外のグループ会社に属する組合員によるストライキが実施された場合、違法なストライキであるとして損害賠償請求や懲戒処分等を行うことを検討せざるを得ない旨発言したこと、④会社が組合員に対し、C1会社への出向を解除して会社への復職を命じたこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、神奈川県労働委員会は、会社に対し、C1会社での勤務を希望する者について復職命令をなかったものとして取扱い、出向継続についての誠実協議、同協議が終了するまでの出向継続、③及び④について文書の手交・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成28年4月16日から平成29年7月25日までの間に行った別紙記載の申立人組合員に対する申立外C1会社への出向の解除及び被申立人への復職命令の対象者のうち、申立外C1会社での勤務を希望する者について同命令をなかったものとして取り扱い、同希望者の出向の継続について、申立人と被申立人との間で誠実に協議を行い、同協議が終了するまでの間、申立外C1会社への出向を継続しなければならない。
2 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人に手交するとともに、同文書の内容を縦1メートル、横2メートルの白色用紙に明瞭に認識することができる大きさの楷書で記載した上で、被申立人従業員の見やすい場所に毀損することなく、10日間掲示しなければならない。
               

 当社が、①平成27年6月4日の団体交渉において、「バス事業支出削減策」に関し、会社以外のグループ会社に属する組合員によるストライキが実施された場合、違法なストライキであるとして損害賠償請求や懲戒処分等を行うことを検討せざるを得ない旨発言したこと、②平成28年4月16日から平成29年7月25日までの間に行った「選択申出書」の提出を拒否した組合員に対する申立外C1会社への出向の解除及び被申立人への復職命令は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
 平成 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 殿
会社                              
代表取締役 B1 印

3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点①(本件提案に係る平成26年4月2日以降の団体交渉における会社の対応及び会社が組合との合意がないまま本件提案を実施するため社内説明会を実施したり、「選択申出書」の提出を組合員に求めたことは、不誠実団体交渉及び支配介入に当たるか否か。)
(1)不誠実団体交渉について
 本件提案に関する団体交渉は、当初から主に過去の経緯から出向継続を主張する組合と経営環境の変化等から本件提案の実施を求める会社の主張が平行線をたどり、遅くとも第13回団体交渉の時点において、これ以上、行っても進展する見込みのない膠着状態に陥っていたと言うべきである。
 社員説明会の実施に当たり、会社は、本件提案について、組合と団体交渉が平行して行われていることに対し、相当程度配慮しており、かかる会社の対応に不誠実性は認められない。
 本件提案についての団体交渉は遅くとも第13回団体交渉において膠着状態に陥っていた。かかる状況下において、転籍等の実施予定日が迫る中、会社は、事前に組合に通告の上、選択申出書の配付を開始したものであり、会社の対応は無理からぬものであったと認められる。
 以上のとおり、本件提案に関する団体交渉における会社の対応、組合との合意がないまま社内説明会を実施したこと及び選択申出書の提出要求を行ったことは、不誠実団体交渉に当たるとは認められない。
(2)支配介入について
 本件提案についての一連の団体交渉は、労使双方の主張の対立が継続し、膠着状態に陥っていたものであり、会社の対応が不誠実であるとは認められず、社内説明会の実施及び選択申出書の提出要求についても、不誠実団体交渉に当たるとは認められない。また、上記各行為について、会社がことさらに組合員を狙い撃ち、萎縮させることで、組合の弱体化を企図したとの事情も認められないことから、会社の上記各行為が支配介入に当たるとは認められない。
2 争点②(会社が、グループ会社に属する組合員によるストライキが実施された場合、違法なストライキであるとして損害賠償請求や懲戒処分等を行うことを検討せざるを得ない旨発言したことは、支配介入に当たるか否か。)
 本件発言は、本件提案についてスト権が確立したとの組合の発言に対し、会社以外のグループ会社に属する組合員がストライキに参加すれば、同ストライキは支援ストに当たり違法であると認識しているとしたうえで、指導者らに対する損害賠償請求や懲戒処分について言及したものであり、使用者側にもストライキを回避するために一定の言論の自由が認められること及び上記発言がなされたのが、労使の代表者による率直な意見交換の場である団体交渉の席上であったことを考慮しても、同発言は単なる意見表明にとどまらず、組合によるスト権の行使を躊躇させうる威圧的な言論であったと言わざるを得ない。
 次に、本件発言がなされた時期についてみると、同発言は、第14回団体交渉において組合からストライキを示唆する発言があり、さらに第15回団体交渉において、スト権が確立した旨の組合の発言を受けて直ちになされたものであったことからすると、同発言には、損害賠償請求や懲戒処分を検討する旨組合に対し表明することで、組合が示唆したストライキを牽制する意が含まれるものであったといえる。
 以上のとおり、本件発言は、組合が示唆したストライキに対する牽制を行うことにより、組合によるストライキ権の行使を躊躇させうる威圧的な言論であり、その自主的活動を阻害するおそれのあるものであることから組合の運営に対する支配介入に該当すると判断する。
3 争点③(会社が、組合員に対し、平成28年4月16日以降、C1会社への出向を解除して会社への復職を命じたことは、不利益取扱い、不誠実団体交渉及び支配介入に当たるか否か。)
(1)支配介入について
 本件提案をめぐる団体交渉は、本件申立てまでには既に行き詰まりの状態にあったものの、提案拒否申立書署名者については、和解協議の場でその扱いについて協議が行われていたところ、同協議は、わずか3回開催されたに過ぎない。また、会社は、当委員会の27.8.25要望書により、提案拒否申立書署名者について、当分の間、C1会社への出向解除の措置を行わないことが求められ、28.4.27勧告書により、和解協議が継続する間、復職命令を一時停止するとともにC1会社への在籍出向を継続することが求められていたこと、さらには、審査の全趣旨を通してみても、会社において提案拒否申立書署名者の復職を早急に実施すべき特別な事情や必要性も認められないことをも併せ考えると、会社が本件復職命令を行ったことは、会社が自らの主張や施策が正当であることを示すために、組合への影響を顧みることなく敢えて行ったものと評価せざるを得ない。
 実際に、本件提案後、42名の組合員が脱退していたところ、本件復職命令後は、さらに9名の組合員の脱退が生じており、本件復職命令の影響がうかがわれるというべきである。さらに、本件復職命令により、C1会社職場における組合の組合員数は、74名から4分の1以下である16名に減少し、この結果、組合はC1会社の一部の営業所において有していた過半数代表者を選出する地位を失った。
 これらのことからすると、本件復職命令は、組合の交渉力に大きな支障をもたらすものであったといいうる。
 以上のとおり、会社の行った本件復職命令による組合運営への打撃は甚だしいものであり、組合の弱体化をもたらすものであったと言わざるを得ず、会社が本件復職命令を発したことは、支配介入に当たる。
(2)不利益取扱いについて
 本件復職命令により復職した提案拒否申立書署名者が復職後に従事した清掃業務の期間は、平成27年9月16日以降に実施された復職による復職者が従事した清掃業務の期間と同程度かこれより短いものであり、また、この他に会社が先に復職した者と差別して提案拒否申立書署名者の復職者を取り扱った事実は認められない。
 また、本件復職命令は、本給の高い者から順に実施されたものであり、会社が正当な組合活動を嫌悪して復職の順を決定したと認めるに足りる証拠はない。
 さらに、組合は、バス運転士と会社の締結した労働契約からして本件復職命令はありえず、かかる命令を強行する理由は、不当労働行為意思以外にあり得ない旨主張するが、仮に同労働契約がバス運転士に職種を限定した契約であったとしても、そのことは非組合員であるバス運転士についてもあてはまることから、「組合員であること…の故をもって」なされたものということはできず、本件復職命令に会社の不当労働行為意思を認めることはできない。
 以上のとおり、会社が提案拒否申立書署名者に対して、本件復職命令を行ったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱いには当たらない。
(3)不誠実団体交渉について
 22.3.15確認書の内容は、定年までの在籍出向を定めたもの等とみることはできないため、本件復職命令が、同確認書に反するものであると認めることはできないし、本件提案に関する団体交渉は、本件申立てまでには既に行き詰まりの状態にあったと認められることから、会社が本件復職命令を発したことが不誠実団体交渉に当たるとは認められない。 
掲載文献   

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