概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和2年(不再)第62号
沖縄セメント工業不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和4年5月25日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
1 本件は、会社が、令和元年夏季賞与(本件賞与)の支給に当たり、非組合員に対する賞与の支給日までに組合員に対して賞与の支給予定額を提示しないことにより、組合員に対する賞与の支給時期を非組合員よりも遅らせたこと(本件行為)が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審沖縄県労委は、本件救済申立てを棄却し、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1)本件行為は労働組合法(労組法)第7条第1号の不当労働行為に当たるか
ア会社は、組合に対して、非組合員に対する本件賞与の支給日(令和元年7月26日)までに組合員に対する本件賞与の支給予定額を提示しなかったところ、組合員に対する本件賞与の支給が同年9月12日となった。組合員に対する賞与の支給が非組合員に対する賞与の支給より遅れたことは、組合員にとって経済的不利益に当たる。
イしかし、本件の事実経過によれば、本件賞与の支給予定額の提示(令和元年7月26日の団体交渉)に至る会社の対応は、平成29年及び30年における会社の対応と同様であったと認められる。また、組合員に対する賞与の支給について、組合から会社に対して団体交渉申入れ(団交申入れ)がなされ、これを受けて団体交渉の場で会社が組合に夏季賞与の支給予定額を提示し、組合との合意の後で賞与が支給されるというのが通常の流れであることは組合も認識していたところである。平成28年を含め、これまでも、会社から夏季賞与の支給予定額が提示されてきたのは団体交渉の場であって、会社は、組合から団体交渉以外の場で賞与の支給予定額の提示を求められたことはなかった。
これらを併せ考慮すると、本件賞与の支給予定額の提示に至る会社の対応は、従来の夏季賞与の支給と同様であったと認められ、従前と特段異なる点はなく、格別不合理な点は認められない。
ウ団体交渉の開催日が非組合員に対する本件賞与の支給日と同じ令和元年7月26日になったのは、同月19日に組合が開催日時を同月26日午後6時30分と指定して団交申入れをし、会社がこれに応じたことによるものであり、会社が団体交渉の開催を遅延させたという事情は認められない。そうすると、令和元年において団体交渉の開催時期が例年よりも遅れた要因は、組合の会社に対する団交申入れ(同年7月19日)が平成28年、29年及び30年の各団交申入れ(28年7月5日、29年7月11日及び30年6月25日)より遅かったことにあると認められる。このほか、会社が、組合員に対する本件賞与の支給を遅らせるため、非組合員に対する本件賞与の支給日まで組合ないし組合員に対して本件賞与の支給予定額の提示を引き延ばしたと認めるに足りる事情は見いだせない。
エしたがって、本件行為は労組法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。
(2)本件行為は労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか
本件においては、上記(1)のとおり、会社が組合員に不利益をもたらす意図をもって本件行為に及んだとは認められず、また、本件行為が組合の弱体化を企図して行われたものということもできない。
したがって、本件行為は労組法第7条第3号の不当労働行為にも該当しない。 |
掲載文献 |
|