概要情報
事件番号・通称事件名 |
沖縄県労委令和元年(不)第3号
沖縄セメント工業(株)不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和2年11月12日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、令和元年夏季賞与の支給に当たり、非組合員に対する賞与支給日までに組合員に対して賞与支給予定額を提示しないことにより、組合員に対する賞与支給時期を非組合員より遅らせたこと(「本件行為」)が、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するとして、組合が救済を申し立てた事件である。
沖縄県労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
申立人の申立てをいずれも棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件行為の労組法第7条第1号該当性について(争点1)
(1) 本件行為の不合理性
会社は、非組合員については、基本的に毎年7月第4金曜日に夏季賞与を支給していたことから、本件においても、7月第4金曜日である令和元年7月26日に夏季賞与を支給することとしたものであると認められる。
他方、会社は、組合員については、少なくとも平成28年から同30年までは、夏季賞与支給予定額が決定したころに組合からの団体交渉の申入れを受けて、団体交渉において賞与支給予定額を提示した後、組合と協定書を締結するか、組合に異議がないことが確認された後に夏季賞与を支給していたこと、その結果、組合員よりも先に非組合員に対して夏季賞与が支給されたことがあったこと、平成30年においても、組合員よりも先に非組合員に夏季賞与が支給されたけれども、組合はこれに特段の異議を述べていなかったことが認められる。本件についても、会社は、従前と同様の対応を予定していたところ、令和元年7月19日に組合から開催希望日を同月26日とする団体交渉の申入れを受けたため、これに応諾すべく、非組合員に対する賞与支給日である同月26日までに組合に対し賞与支給予定額を提示することを控えた結果、同日までに組合と賞与支給について協定書の締結等に至らず、夏季賞与を支給できなかったものと認められる。また、会社は、同月26日の団体交渉の際、あるいはその後においても、組合に対し賞与支給予定額を通知し、賞与を早期に支給するための団体交渉の開催を促すなどした上で、同年9月12日に夏季賞与を支給した事実も認められる。
以上の事実によれば、会社は、これまで組合から特段の異議もなく行われてきた夏季賞与支給についての手順に従って対応しようとした結果、組合員に対する支給が遅くなったものに過ぎないというべきである。本件は非組合員に対する賞与支給日であった7月第4金曜日が組合の求めに応じて団体交渉日となってしまったことに起因して、組合員と非組合員に対する支給時期の相違が生じたものと考えられる。加えて、会社は、非組合員に対する賞与支給日であった7月26日の後も、組合員に対して賞与を支給しようと積極的な対応をとり、現に支給に至っている。このような会社の姿勢からすれば、会社が、組合員に対する賞与支給時期を非組合員よりも殊更に遅らせたとは言い難い。
したがって、会社が、殊更に、本件行為に及んだと認めることはできない以上、本件行為が不合理であるとはいえない。
(2) 本件行為についての不当労働行為意思の存否
平成21年7月に分会が結成されて以来、会社と組合との間では、不当労働行為審査事件や争議あっせん事件等が多数発生し、労使関係は必ずしも良好ではなかったとはいえる。
しかし、上記(1)のとおり、会社は殊更に夏季賞与支給予定額の提示や支給を遅らせたとは認められないのであるから、従前の労使関係を考慮したとしても、本件行為に不当労働行為意思の存在を認めることはできない。
(3) 結論
以上のとおり、本件行為は労組法第7条第1号には該当しない。
2 本件行為の労組法第7条第3号該当性について(争点2)
上記1で判断したとおり、会社の本件行為は不合理とはいえず、不当労働行為意思は認められない以上、同行為によって直ちに組合を弱体化させたり、その運営・活動を妨害したりする行為に当たるということはいえない。また、会社にそのような認識、認容があったということもできない。
したがって、本件行為は、労組法第7条第3号に該当しない。
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掲載文献 |
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