労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成22年(不再)第25号
エクソンモービル(住宅手当変更)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和4年6月1日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合の組合員Aに対し、同人の配偶者が死亡したことを理由に、住宅手当の支給区分を「扶養家族を有しない者」のうちの「既婚者」(月額5万6700円)から「単身独立生計者」(月額3万7200円)に変更したこと(本件支給区分の変更)が不当労働行為であるとして、申立てがあった事案である。
2 初審神奈川県労委は、組合の救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 本件支給区分の変更の合理性について
会社には、住宅手当の支給区分上の「扶養家族を有する者」について適用する特例措置を定めた運用ルール(独身の非管理職従業員で扶養者を有する者について、その被扶養者が就職等の理由により扶養から外れた場合、当該従業員が元被扶養者と同居する場合に限って、「単身独立生計者」ではなく「既婚者」扱いとする)が存在する。運用ルールは、組合員Aのような「扶養家族を有しない者」に該当していた者が配偶者を亡くして、元被扶養者と同居しているケースを想定したものではなかったが、会社は、組合員Aに配慮し、運用ルールの趣旨に鑑み、組合員Aのケースにもこれを適用してよいと判断し、「元被扶養者と同居し生計を共にする」という要件で、「既婚者」から「単身独立生計者」に変更しないで「既婚者」の区分のまま住宅手当の支給を認めることとした(運用ルールの取扱い)。このような運用ルールの取扱いは、運用ルールの趣旨を従業員に有利となるように更に推し進めるものであり、合理的なものといえる。
組合員Aが会社に提出した住民票により、組合員Aの長女は同人と同居しているが、結婚していて同人とは世帯が別になっていることが判明した。そのため、会社は、組合員Aが長女夫婦とは世帯を異にしている以上、生計が異なり、組合員Aは「生計を共にする」という要件を満たしていないことから、原点に立ち返って「単身独立生計者」に当たると判断した。運用ルールの取扱いを多くの従業員に統一的に適用する以上、会社が「生計を共にする」という要件を、住民票により判定できる「世帯」を基準として判断することは社会通念に合致しており、会社の上記判断は不合理なものとはいえない。
以上のとおり、本件支給区分の変更は、組合員Aが配偶者の死亡により、支給区分上の「既婚者」から「単身独立生計者」になったところ、同人は運用ルールの取扱いによる「単身独立生計者」が「既婚者」として扱われる例外的な場合に該当しないことから、原則に立ち返って支給区分どおり行われたものであり、合理性がある。
(2) 不当労働行為意思について
組合の上部団体と会社との間の従前の労使関係についてみると、結成直後からチェック・オフをめぐる争いがあり、その後も、争議行為時における組合員の懲戒解雇等の多くの争いや、組合員Aの配置転換及び懲戒処分をめぐる争いもあり、本件再審査結審時においても、組合の上部団体又はその下部組織が当事者となっている再審査申立事件は本件を含め15件が当委員会に係属中である。
しかし、従前の労使関係を考慮しても、上記(1)のとおり、本件支給区分の変更には合理性があるから、組合員Aが組合の組合員であることを理由とするものということはできない。
(3) まとめ
以上のとおり、本件支給区分の変更には合理性があり、組合員Aが組合の組合員であることを理由とするものではなく、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
エクソンモービル 棄却 平成22年3月30日
 
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