労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神奈川県労委令和3年(不)第3号
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和4年6月24日 
命令区分  棄却・却下 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合員Aを有期労働契約の期間満了をもって雇止めし、あるいは解雇したこと、②同人の解雇の撤回等を交渉事項とする4回の団体交渉において、会社の役員を参加させないなど、会社に責任を持つ者を参加させなかったこと及び参加した会社従業員に回答させなかったこと等の対応が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 神奈川県労働委員会は、①、及び②の一部について除斥期間を徒過しているとして却下するとともに、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 組合の請求する救済内容のうち、A組合員に対する雇止め及び解雇に係る申立て並びに令和元年10月7日以前に行われた団体交渉に係る申立てを却下する。
2 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 会社が、A組合員を平成31年4月15日付けで雇止めしたことあるいは同月16日付けで解雇したことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い又は組合の運営に対する支配介入に当たるか。(争点①)

 平成31年4月15日付け雇止め及び同月16日付け解雇は、いずれも本件申立てのあった令和3年2月9日から1年以上前になされたものであり、労組法第27条第2項の除斥期間を徒過している。
 (組合は、A組合員の平成31年4月15日付け雇止め及び同月16日付け解雇から令和3年1月25日にあっせんが打切りとなるまで、継続して謝罪、解雇撤回及び原職復帰を求めていることから、同雇止め及び解雇からあっせん終結までの組合の行為は一連のものとして「継続する行為」に当たると主張するが)、労組法第27条第2項で規定する「行為」とは、不当労働行為と主張される会社の行為を指すものであるから、組合の行為により継続性を主張する組合の主張は失当である。
 よって、平成31年4月15日付け雇止め及び同月16日付け解雇に係る申立てを却下する。

2 令和元年7月4日、同年8月9日、同年10月7日及び令和2年9月14日に行われた団体交渉において、会社が、会社の役員を参加させないなど、会社に責任を持つ者を参加させなかったこと及び参加した会社従業員に回答させなかったこと等は、不誠実な交渉態度に当たるか。(争点②)

(1)第1回乃至第3回団体交渉についてみると、本件申立てのあった令和3年2月9日から1年以上前である令和元年7月4日乃至同年10月7日に行われており、労組法第27条第2項の除斥期間を徒過していることから、本件申立て中、第1回乃至第3回団体交渉に係る部分は却下する。
 この点、組合は、第1回乃至第4回団体交渉は、同一の交渉事項について行われており、一連のものとして労組法第27条第2項で規定する「継続する行為」に当たり、除斥期間に該当しない旨を主張する。しかしながら、同項にいう「行為」とは、不当労働行為と主張される会社の行為であって、「継続する行為にあつては」とは、その会社の行為が継続して行われている場合をいう。同一の交渉事項に係る団体交渉が複数回にわたって行われていたとしても、組合が不当労働行為と主張する行為は各団体交渉における会社の対応としていずれも団体交渉の期日の都度一個の行為として完結しているから、「継続する行為」に当たらず、組合の主張は採用できない。

(2)次に、令和2年9月14日に行われた第4回団体交渉についてみる。

ア 組合は、団体交渉に会社の役員が出席していないことは、不誠実な態度であり、団体交渉には、責任を持って答弁できる者、すなわち役員級の者が出席して答弁すべきであると主張する。
 しかしながら、組合は、第4回団体交渉のみならず、第1回乃至第3回団体交渉を通じて会社の役員の団体交渉出席を求めた経緯がない。また、第4回団体交渉において、会社側の出席者は、組合の要求や主張に対して回答し、その理由を説明するなどしており、会社の役員が出席しなかったことを理由として団体交渉に不都合が生じたという事情も見受けられない。
 したがって、会社が団体交渉に役員を出席させなかったことをもって、会社の対応は不誠実な交渉態度に当たるとする組合の主張は採用できない。

イ 組合は、代理人である弁護士ばかりが発言していたことは、不誠実な態度であり、弁護士は補助的な発言に徹するべきである旨を主張する。
 しかしながら、誰を使用者側交渉担当者として団体交渉に出席させ、労働組合からの要求事項に対する回答や説明をさせるかについては、いずれも使用者の判断に属するものであって、労働協約等で団体交渉ルールを定めている等の特段の事情がない限り、他方の当事者である労働組合が関与し得る事項ではない。
 また、団体交渉の交渉権限を第三者に委任することは、労働組合及び使用者双方に認められており、使用者が権限を委任した弁護士が、交渉担当者として団体交渉に出席し、交渉等をすることも認められており、発言することも当然である。団体交渉の円滑な運営に支障を来すなどの事情がない限り、弁護士が発言すること自体は不誠実とはいえず、団体交渉における弁護士の権限が法的な助言等に限られるものではない。
 これを本件についてみると、組合と会社との間で交渉担当者について団体交渉ルールを定めていたことを認めることはできず、会社が弁護士の発言等により団体交渉に支障を生じさせたとする事情を認めることはできない。
 したがって、第4回団体交渉において、代理人である弁護士3名が会社としての回答や説明を行っていたことをもって、不誠実な交渉態度であるとする組合の主張は採用できない。

ウ 第4回団体交渉の冒頭において、B弁護士から今日の団体交渉は短く終えたい旨の発言があったことは認められる。しかしながら、労使ともに交渉時間は2時間程度との認識をもって毎回団体交渉に臨み、この団体交渉自体、途中10分間の休憩を取りながら相応のやり取りがなされていたことから、相当な時間が費やされたことが推認され、当日の団体交渉を会社が制限しようとしていた事実を認めることはできないことなどから、弁護士の発言は団体交渉軽視の表れであり、不誠実な交渉態度に当たるとする組合の主張には理由がない。

エ 以上のとおり、第4回団体交渉における会社の交渉態度は不誠実であるとは認められず、労組法第7条第2号の不当労働行為には当たらないと判断する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委令和4年(不再)第35号 棄却 令和5年5月24日
 
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