労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和2年(不再)第19・20号
日本福祉総合研究所不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」)(19号)、Y会社(「会社」)(20号) 
再審査被申立人  Y会社(「会社」)(19号)、X組合(「組合」)(20号) 
命令年月日  令和4年2月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1.本件は、会社が、A組合員が保育所建設資金借入に関する申請業務を怠ったことを理由に同人を解雇(本件解雇)したことが労働組合法(労組法)第7条第1号に、同人に対する自宅待機命令等についての2回目の団体交渉申入れ(本件団交申入れ)に応じなかったことが労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2.初審東京都労委は、本件解雇は不当労働行為に当たらないとして棄却し、団体交渉拒否は不当労働行為に当たるとして、会社に対し文書交付及び履行報告を命じたところ、組合は棄却部分について、会社は救済命令について、それぞれ不服であるとして再審査を申し立てた。 
命令主文  本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  ⑴ 争点1(会社が平成29年7月26日付けでA組合員を解雇したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか)について
ア 会社は、A組合員は、平成29年4月に開園予定の10箇所の保育所の建設資金の借入業務を担当していたが、そのうちの1件(北千住案件)に関する手続を行っておらず、そのことについて、会社に対し不報告や虚偽説明を行ったことは、就業規則に定める普通解雇の事由に該当するとして本件解雇を行った。また、A組合員の行為は、北千住案件の開園を不可能とし得る重大な支障を発生させるなど、生じた結果は重大である。
イ 組合は、会社の組合嫌悪の念は明白であると主張するが、本件解雇には合理的な理由があり、会社役員の職員説明会等における組合に関する発言のみをもって、本件解雇が不当労働行為意思に基づくものとはいえない。
 さらに、組合は、A組合員に対する自宅待機命令(本件自宅待機命令)の時期や申請業務に関与した他の従業員には何らの処分もないことも主張するが、そのことを勘案しても、本件解雇が不当労働行為意思に基づくものとはいえない。
ウ 本件解雇は、不当労働行為意思に基づいてされたものとは認められず、労組法第7条第1号の不当労働行為には当たらない。
⑵ 争点2(会社が平成29年5月19日付け団体交渉申入れに同年7月27日まで応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか)について
ア 本件団交申入れの団交事項は、本件自宅待機命令に関する問題等であり、組合員である労働者の労働条件その他の待遇に関するものであって、義務的団交事項に当たる。
イ 会社は、本件団交申入れに対し、A組合員の借入業務に関する調査等が継続しているため、現時点で団体交渉を行うことは適切でないと考えている旨の回答を繰り返し、結果として、平成29年7月27日まで第2回団体交渉は開催されなかった。
ウ 本件自宅待機命令は、A組合員に業務懈怠の疑いがあるための調査であり、調査結果次第では処分も想定され、遅くともその処分前でなければ交渉の意義や実効性は乏しくなることからすると、当該団交事項は、早期に団体交渉に応じるべき内容である。また、会社が団体交渉に応じて必要な説明等を行うことのできない状況であったとは認められない。さらに、団交事項は、本件自宅待機命令の根拠、性質に係るものを含むところ、これらについては、会社は、調査内容や進行状況と切り離して回答をすることができるのであって、本件団交申入れに応じることに支障となる事情があったとは認められない。
エ 会社は、本件の一連の団体交渉経過に鑑みると、会社の対応は団交拒否には当たらないとも主張するが、会社は第2回から第4回までの3回の団体交渉に応じてはいるものの、これらはいずれも、本件解雇後に行われたものである。上記イのとおり、処分がなされれば、交渉の意義や実効性が大きく減退し、交渉の時機を失することからすると、本件解雇後に3回の団体交渉に応じたことを考慮しても、会社の対応を正当化することはできない。
オ 以上によると、本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たることから、会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
⑶ 争点3(争点2について、組合の救済利益は失われているといえるか)について
 会社は、本件団交申入れに対し、繰り返し団体交渉に応じており、命令時点で救済利益は現存していないと主張するが、団交事項からは、A組合員への処分前に行わなければ、交渉の時機を失するのであり、命令発出により労使関係の正常化、再発防止を期する必要性はなお存するものである。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成29年(不)第35号 一部救済 令和2年2月18日
 
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