労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第35号
日本福祉総合研究所不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年2月18日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①会社が29年7月26日付けでA2を解雇したことは、同人が組合員であることないし組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるか否か、②会社が29年5月19日付けで組合が申し入れた団体交渉に対し、同年7月27日まで応じなかったことが正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが、それぞれ争われた事案である。
東京都労働委員会は、会社に対し、②について正当な理由のない団交拒否に当たる不当労働行為であるとして、文書の手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文 
1 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。

 年 月 日
組合
執行委員長 A1 殿

会社
代表取締役 B1
 当社が、平成29年5月19日付けで貴組合から申し入れられた団体交渉について、同年7月27日までこれに応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)
2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社が平成29年7月26日付けでA2を解雇したことは、同人が組合員であることないし組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱いに当たる否か(争点1)。
ア 会社は、7月26日、A2がC1保育園建設資金の借入れ(「本件案件」)に係る手続き業務(「本件申請業務」)を一切行っていなかったこと、上長に対し問題なく進行しているかのように装い、虚偽の報告を繰り返したことは就業規則に違反するとして、本件解雇を行った。
 会社は、本件解雇に先立って、A2に貸与していたノートパソコンと携帯電話のデータを確認するとともに、4月中旬以降本件申請業務の本格的な調査を行っており、A2は、同業務を実施していたとする「C1保育園交渉経過」を提出したものの、A2が本件申請業務を行っていなかったことは明らかであるから、このことについてA2が、他の案件と同様に業務や手続を進めてきたが、なぜ本件案件の申請業務だけが進行できていないのか訳が分からないといった弁明しかできなかったこと、本件案件の受理票が発行されず、そのため会社は、C2法人からの借入れができなく他の民間金融機関から急進調達せざるを得なくなったことも考慮すると、本件解雇には相応の理由があるといわざるを得ない。
オ 以上を総合すると、本件解雇には相応の理由があり、また、会社は、解雇理由となったA2の本件申請業務について、同人の組合加入を認識する以前から調査を始め、本格的な調査は同人の組合加入を認識した後に行われているものの、この調査は客観的かつ公正なものであって、同人が組合員であることを理由とする不合理ないし恣意的な取扱いがなされたという事情も認められない。
 そうすると、本件解雇は、本件申請業務の調査結果に基づいて行われたとみるのが相当であり、B2取締役の発言からは組合に対する嫌悪の情がうかがわれるとしても、そのことから本件解雇がA2の組合加入や組合活動を理由にしたものであるということはできない。
カ したがって、本件解雇はA2が組合員であることないし組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱いには当たらない。
2 29年5月19日付けで組合が申し入れた団体交渉に対し、会社が7月27日までこれに応じなかったことが正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか(争点2)。
ア 会社は、5月19日付けでの組合からの団体交渉申入れに対し、7月27日の団体交渉までの約2か月の間、現時点では団体交渉を行うことが適切でないなどとして団体交渉に応じておらず、ほかに日程調整のため時間を要した等の事情も認められないから、団体交渉を拒否したものといえる。
イ このことについて、会社は、組合の団体交渉申入事項は第1回団体交渉で回答済みであったから、当時の時点で団体交渉の開催は適切でなかったと主張する。
 5月18日、A2の自宅待機命令を議題とする第1回団体交渉が行われ、組合は、自宅待機命令をB3管理本部長が発したことから、発令根拠規定や指揮命令系統を明らかにするために、就業規則と組織図等を求め、会社もこれに応じる旨回答した。また、組合は、5月19日付「質問並びに団体交渉申入書」において、団体交渉を申し入れるともに、グループの組織及び指揮命令関係や、調査が終了した後に客観的根拠が示されるかなどを質問した。
 この経過をみれば、組合の質問等について、第1回団体交渉において会社が回答済みであったとはいえず、引き続き団体交渉に応じた上で説明を行う必要があったといえる。
 また、会社は、資料の開示を承諾した就業規則や組織図についてですら、組合に対し、第2回団体交渉までの約2か月間、提供していなかった。
ウ 会社は、本件申請業務について調査が進行中であったことから、調査の進捗や今後の調査予定等について、第1回団体交渉において説明した以上の内容の回答をすることは不適切であったと主張する。
 確かに、組合は、5月18日の第1回団体交渉において、どのような調査か質問をしている。しかし、 5月19日付けの団体交渉申入れでは、進行中の調査内容そのものについては質問しておらず、「業務上の調査」と「身辺調査」の境界や調査終了時の証拠開示についての質問、組合からの第三者・弁護士等の立会いの要求などを申し入れている。
 これらは、第1回団体交渉では十分な説明がなされておらず、調査進行中であっても交渉することに支障がない事項であり、むしろ調査終了後に団体交渉を行ったのでは時機を失する事項であるといえる。
 したがって、本件申請業務についての調査が進行中であったことは、団体交渉を拒否する正当な理由とは認められない。
エ なお、会社は、第3回団体交渉及び第4回団体交渉を実施して十分に説明を尽くしていると主張するが、 7月27日の第2回団体交渉の前日に本件解雇を行っており、むしろ、第1回団体交渉以降、本件解雇を行うまでの間は、第2回団体交渉を意図的に避けていたとみられてもやむを得ない対応であったといえる。
オ 以上のとおり、組合の29年5月19日付団体交渉申入れに対し、会社が7月27日までにこれに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。  
掲載文献   

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