労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委令和元年(不)第48号
日本郵便不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年8月17日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   Aは、Y会社が後に事業を継承するC会社にて採用され(以下、Y会社又はC会社を単に「会社」という。)、期間雇用社員として勤務していたが、会社は、65歳を雇用上限年齢とする就業規則に基づき、Aを雇止めとした。Aら数名は、会社を相手方として、当該雇止めは無効であると主張して、地位確認を求める訴訟を提起したが、平成30年9月14日、最高裁判所判決において会社の雇止めが適法であることが確定した。
 その後、Aは組合に加入し、組合は会社に対し、Aの復職・再雇用を議題とする団体交渉を申し入れ、平成30年12月12日に話し合いが行われた。組合は同31年2月1日付けで当該議題に係る団体交渉を申し入れたが、会社はこれに応じなかった。
 本件は、会社が組合の平成31年2月1日付け団体交渉申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、本件申立てを棄却した。
 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨   31年2月1日、組合が会社に対して団体交渉を申し入れたが、会社はこれに応じなかった。組合の申し入れた団体交渉の議題は、①Aの復職・再雇用、②雇止めの際の説明、③人手不足、④ビラ回収、⑤団体交渉ルールについての5項目である。これらの議題について、組合が、労働組合法第7条第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」であるといえるか、以下判断する。
1 Aの復職・再雇用について
 Aに対する雇止めによる契約の終了に関しては、最高裁判決によって適法であると確定しており、組合の申入れは、終局的な紛争解決が図られた事項についての蒸し返しと言わざるを得ない。
2 雇止めの際の説明について
 Aに対する雇止めは、会社が相応の説明をした上でなされたものであり、最高裁判決において、会社による説明内容を踏まえた上で同人に対する雇止めは適法であることが確定している。
 したがって、雇止めの際のAに対する会社の説明の経緯は、未解決な事項であるものとは認められない。
3 組合は「使用者が雇用する労働者の代表者」といえるか
(1)訴訟を通じて雇止めの際のAに対する会社の説明の経緯が明らかにされ、その説明内容も踏まえた上で同人に対する雇止めが適法であることは最高裁判決によって確定し、終局的な紛争解決が図られている。このほかに、Aと会社との間に未精算の労働問題等は存在していない。
 そうすると、本件団体交渉申入れ時において、Aは、「会社の雇用する労働者」であるとはいえない。そして、組合は、A以外に会社の雇用する労働者を組合員として組織していないのであるから、組合が、「会社の雇用する労働者の代表者」であるということはできない。
(2)なお、組合は、最高裁判決が確定したことにより雇用関係が認められないことを前提に、労使交渉によって解決可能な懸案事項である同人の復職・再雇用の条件についての団体交渉を申し入れていると主張する。しかしながら、組合から近い将来において会社がAの使用者となる可能性があると認めるに足りる疎明はなく、会社には同人の復職・再雇用を検討しなければならない事情はない。したがって、組合が会社の「雇用する労働者の代表者」であるとはいえず、組合の主張を採用することはできない。
4 組合のほかの団体交渉申入れ事項について
 これらは、いずれも、組合が会社の「雇用する労働者の代表者」であることを前提に、会社の職場の問題や会社と組合との労使関係の問題に係る交渉を求めたものである。上記のとおり組合が会社の「雇用する労働者の代表者」であるということができない以上、会社が、これらの事項について団体交渉に応じなかったのも無理からぬことであるといわざるを得ない。
5 以上のとおり、訴訟を通じて雇止めの際のA に対する会社の説明の経緯が明らかにされ、その説明内容も踏まえた上で、同人に対する雇止めが適法であることは最高裁判決によって確定している。そして、本件団体交渉申入れ時に、Aと会社との間において未精算の労働問題は存在しておらず、また、同人以外に会社で就労する組合員はいなかった。 したがって、組合は、31年2月1日付で申し入れた団体交渉事項について労働組合法第7条第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」であるとはいえず、会社がこの申入れに応じなかったことが正当な理由のない団体交渉拒否に当たるとはいえない。

  
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委令和3年(不再)第39号 棄却 令和5年6月7日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約394KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。