労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和2年(不再)第27号
コリア国際学園不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y法人(「法人」) 
再審査被申立人  X組合(「組合」) 
命令年月日  令和3年6月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が、法人に対し、組合のA1組合員及びA2組合員の2名(「A1ら」)の解雇撤回を求めて団体交渉を申し入れた(「本件団体交渉申入れ」)ところ、法人が、組合員名簿、組合規約及び組合費の受領証等(「組合員名簿等」)の提出がないことを理由に、組合との団体交渉に応じなかったことが、労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労働委員会(「初審」)は、法人が本件団体交渉申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、法人に対し、団体交渉応諾及び文書手交を命じたところ、法人はこれを不服として再審査を申し立てた。
 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  ⑴争点(法人が本件団体交渉申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。)について
ア法人は、組合がA1らを代表する労働組合であるか否かに疑義が生じたとし、その前提に立って、この点を確認するために組合に対し組合員名簿等の提出を求めたのであって、組合員名簿等の提出を求めこれが提出されるまで団体交渉を拒否することには正当な理由があると主張する。
 しかしながら、組合は、A1らの解雇撤回を要求事項とする本件団体交渉申入れをする際には、法人に対し、A1らが組合の組合員であることを明らかにすれば足り、組合員名簿等を提出することを要しない。
 しかるところ、組合は、本件団体交渉申入れにおいて、A1らが組合の組合員であることを明示している。さらに、法人は、本件団体交渉申入れ以前にも、組合との団体交渉に応じ、組合との間で話合いを行っており、A1らを解雇するまでの一連の経緯により、組合がA1らの代表者であることを承知していたと推認することができる。このほか、組合がA1らの代表者であることに疑念を生じさせる客観的な事情も存しない。
イ法人は、A1らの解雇後、法人には組合の組合員が一人もいなくなっていること、A1らが既に法人とは別の学校で勤務しているとの情報に接していたことを挙げ、これらの点からも法人は、本件団体交渉申入れの時点で組合がA1らの代表者であるかにつき疑念を抱いたのであり、法人の対応には正当な理由がある旨主張する。
 しかし、組合は、A1らの解雇撤回を求めて本件団体交渉申入れをしており、労働契約関係の終了そのものが争われているのであるから、法人は労組法第7条の「使用者」に該当し、A1らが所属する組合は同条第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に該当する。したがって、法人はA1らの所属する組合から申し入れられたA1らの解雇撤回に係る本件団体交渉申入れを拒否することはできない。
ウ法人は、A1ら及び組合が、法人を被告とする解雇無効等の訴訟を提起した経緯に照らせば、法人が本件団体交渉申入れに応じなかったとしても不当労働行為に当たらない旨主張する。同主張は、その趣旨が判然としないが、A1ら及び組合が訴訟を提起したことにより、組合は本件団体交渉申入れによる解決を選択し得なくなったことをいうものとも解される。
 しかし、従業員の解雇に関する問題の解決には、団体交渉ばかりでなく、労働委員会への救済申立て、裁判所への訴訟の提起等の複数の方法があるところ、A1ら及び組合が、複数の方法を利用することは妨げられるものではなく、その一つを選択することによって他を選択し得なくなるものではない。
エ以上によれば、法人が本件団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
⑵救済方法
ア法人は、(初審命令交付後)団体交渉に応じたのであるから、初審命令主文は取り消されるべきであると主張する。
 確かに、(初審命令交付後)組合が、A1らの解雇の撤回を始めとする要求事項について団体交渉申入れをしたところ、組合と法人が団体交渉を行ったことは、審査の全趣旨から認定することができる。しかし、同団体交渉において、法人が、A1らの解雇の撤回の要求事項について必要な説明を尽くすなどして誠実に交渉に応じたことについては、証明されていない。したがって、本件団体交渉申入れについては、なお団体交渉を開催して問題を解決すべき利益と必要性が失われたと認めることはできない。
イ本件における不当労働行為に対する救済方法としては、本件団体交渉申入れに対するこれまでの法人の対応、初審及び再審査における当事者双方、特に法人の対応その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、初審命令と同様の方法によるのが相当である。

 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和元年(不)第32号 全部救済 令和2年6月15日
 
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