労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第62・64号
全日本海員組合(その3)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(62号)、Y法人(64号) 
再審査被申立人  Y法人(62号)、X組合(64号) 
命令年月日  令和3年7月7日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、X組合とY法人との間で、平成29年1月24日(第10回団交)、同年2月21日(第11回団交)、同年4月17日(第12 回団交)、同年5月22日(第13回団交)及び同年6月21日(第14回団交)に実施された団体交渉において、「再雇用契約または継続雇用契約によらない定年後の雇用形態について、その採用の条件及び労働条件の説明」(以下「本件団交事項」という。)についてY法人が誠実に団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして、X組合が、石川県労働委員会(石川県労委)に救済を申し立てた事案。
2 初審石川県労委は、第 10 回団交から第 14 回団交における本件団交事項のうち、採用条件に係るY法人の対応は不当労働行為に当たるとして、文書交付を命じたところ、X組合及びY法人は、それぞれ再審査を申し立てた。  
命令主文  1 初審命令を次のとおり変更する。
(1)Y法人は、「再雇用契約または継続雇用契約によらない定年後の雇用形態について、その採用の条件及び労働条件の説明」を議題とする団体交渉に誠実に応じなければならない。
(2)文書交付(第11回団交から第14回団交の対応が不誠実であったことについて)。
(3)その余の救済申立てを棄却。
2 その余の再審査申立てを棄却。 
判断の要旨  (1)第10回団交から第14回団交における、本件団交事項についてのY法人の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
ア第10回団交において、X組合は、臨時雇用職員の人数や採用の基準について説明を求めたが、説明を求める理由については言及しなかった。そのため、Y法人としては、説明を求められている事項がX組合の組合員の労働条件にどのように関わるのかを認識することが困難であったといわざるを得ない。このような状況の中で、Y法人が行った一応の説明を不誠実とまで評価することはできない。
イ第11回団交から第14回団交において、Y法人は、①65歳以降の臨時雇用職員の採用条件については、開示の必要性が認められず、採用基準自体が存在しないことを説明する以上に開示できる内容は存在しないから、誠実交渉義務違反が成立する余地はなく、②65歳以前の臨時雇用職員の採用条件、賃金及び期末手当並びに 65 歳以降の臨時雇用職員の賃金及び期末手当については、いずれも、X組合として、それらを知る意義はなく、開示をしないことが誠実交渉義務違反に当たらない旨主張する。
 しかし、65歳以降の雇用について、当時65歳を迎えようとするA組合長については65歳以降の雇用が具体的な問題として存在しており、X組合は、臨時雇用職員の採用条件及び労働条件について説明を要求している理由につき、組合員差別を疑っていること、それゆえ組合員が差別待遇されているかどうかを判断するため臨時雇用職員の採用条件及び労働条件について説明を受ける必要があることを繰り返し述べている。Y法人が、その疑念を解消しようとすることもなく、採用条件については、中央執行委員会の判断であること、労働条件については、個別の契約であるなどとするのみで、それ以上の回答をしなかったことは、X組合の要求に正面から向き合った誠実な交渉態度とはいえない。
 また、X組合は、60歳以上65歳未満の雇用についても、臨時雇用職員の採用条件及び労働条件について説明を要求している理由につき、X組合の組合員が差別待遇されているかどうかを判断するために説明を受ける必要があることを繰り返し述べている。
 このように、X組合が、組合員の雇用・労働条件における差別的取扱いの疑念から、説明を要求しているにもかかわらず、Y法人が、その疑念を解消しようとすることもなく、臨時雇用職員の採用条件については、中央執行委員会の判断であること、労働条件については、個別の契約であるなどと述べるのみで、それ以上の回答をしなかったことは、X組合の要求に正面から向き合った誠実な交渉態度とはいい難い。
ウしたがって、第10回団交におけるY法人の対応は、誠実交渉義務に反するとまで評価することはできないが、第11回団交ないし第14回団交における臨時雇用職員の採用条件及び労働条件についてのY法人の対応は、誠実交渉義務に反するものである。
(2)救済方法
 Y法人は、いまだ臨時雇用職員の採用条件及び労働条件について、X組合の組合員が差別待遇されているとの疑念の解消に資する説明はしていないと認められるから、主文のとおり誠実団交応諾及び文書交付を命ずるのが相当である。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
石川県労委平成29年(不)第2号 一部救済 平成30年11月14日
 
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