概要情報
事件番号・通称事件名 |
石川県労委平成29年(不)第2号
全日本海員組合不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合 |
被申立人 |
Y組合 |
命令年月日 |
平成30年11月14日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、申立人X組合と被申立人Y組合との間で、平成29年1月24日、同年2月21日、同年4月17日、同年5月22日及び同年6月21日に行われた団体交渉において、Y組合が、団交事項「再雇用契約または継続雇用契約によらない定年後の雇用形態について、その採用の条件及び労働条件の説明」について、回答を繰り返し拒否したことが、不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件で、石川県労働委員会は、上記採用の条件の説明に係るY組合の対応について文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人に交付しなければならない。
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記
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X組合
代表者組合長 A1殿
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平成年 月 日
Y組合
代表者組合長 B1
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当組合と貴組合との間で平成29年1月24日、同年2月21日、同年4月17日、同年5月22日及び同年6月21日に行われた団体交渉において、団体交渉事項「再雇用契約または継続雇用契約によらない定年後の雇用形態について、その採用の条件及び労働条件の説明」のうち、採用の条件の説明に係る当組合の対応が、石川県労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
今後、このような不当労働行為を繰り返さないようにします。
(注 年月日は、文書を交付した日を記載すること。)
2 申立人のその余の申立てを棄却する。 |
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判断の要旨 |
1 満60歳に達して定年退職した従業員を引き続き臨時雇用職員として採用し、雇用する場合の採用条件及び労働条件等が義務的団交事項に当たるかについて
(1) 満60歳に達して定年退職した従業員を引き続き臨時雇用職員として採用し、雇用する場合の採用条件及び労働条件について
Y組合では、満60歳に達して定年退職し、その後においても雇用を希望する従業員は、再雇用職員又は継続雇用職員として雇用されることになっている一方で、満60歳に達して定年退職した後、引き続き臨時雇用職員として個別契約により雇用されている従業員が存在することが認められる。また、A1組合長及びA2は、満60歳に達して定年退職した後、臨時雇用職員としてではなく再雇用職員として雇用されている。
A1組合長及びA2が臨時雇用職員として雇用されなかったことが、Y組合の不合理な決定による不利益な取り扱いであったのかどうかを確認するため、X組合が、臨時雇用職員の採用条件及び労働条件について説明を求めることは合理的であり、満60歳に達して定年退職した従業員を引き続き臨時雇用職員として採用し、雇用する場合の採用条件及び労働条件は、義務的団交事項となり得るとするのが相当である。
(2) 再雇用職員としての雇用の上限年齢に達した従業員を引き続き臨時履用職員として採用し、雇用する場合の採用条件及び労働条件について
Y組合では、雇用の上限年齢に達した再雇用職員から臨時雇用職員として雇用された従業員が存在し、また、本件団交当時において、A1組合長が、間もなく再雇用職員としての雇用の上限年齢である満65歳に達する時期であったこと、及びA2が、再雇用職員としての雇用の上限年齢に達したことにより、Y組合との雇用契約が、終了していたことが認められる。
A1組合長やA2が臨時雇用職員として採用されない又は採用されなかったことが、Y組合の不合理な決定による不利益な取扱いであるのかどうかを確認するため、X組合が臨時雇用職員の採用条件について説明を求めることは合理的であり、また、A1組合長やA2が臨時雇用職員として雇用される場合には、臨時雇用職員の労働条件は、特に重要な事項となるのであるから、再雇用職員としての雇用の上限年齢に達した従業員を引き続き臨時雇用職員として採用し、雇用する場合の採用条件及び労働条件は、義務的団交事項となり得るとするのが相当である。
2 Y組合の対応が不誠実団交に当たるかについて
本件団交事項のうち、臨時雇用職員の採用条件に関する事項については、Y組合において、臨時雇用職員の雇用状況の詳細を説明し、X組合が、Y組合の不合理な決定により、自身の組合員が、不利益に取り扱われたのか又は取り扱われる可能性があるのかどうかを判断するための情報を開示するなどして説明する必要があったにもかかわらず、そのための努力を行ったとはいえないのであるから、Y組合の行為は、不誠実団交の不当労働行為に該当するものといえる。
一方で、臨時雇用職員の労働条件に関する事項については、Y組合が、情報を開示する必要があったのかどうかは、臨時雇用職員の採用条件に関するY組合とX組合の交渉状況に影響されるというべきところ、Y組合の不誠実団交により、このことについて判断できるまで臨時雇用職員の採用条件に関する団交が進んでいたとは認められないことから、Y組合が、誠実交渉義務を果たしたのかどうかを判断する段階にまでは至っていないと、当委員会は、判断する。 |
掲載文献 |
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