労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成29年(不再)第9号
くれよん不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Xユニオン(「組合」) 
再審査被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  令和3年3月3日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 組合は、会社との間において、従前から、チェック・オフ及びユニオン・ショップを含む労使協約を締結する唯一の労働組合であった。
2 本件は、会社が平成27年6月(以下「平成」の元号略)、 総務担当のA又は総務部長であったBをして、組合の組合員に対する脱退勧奨、新たな労働組合(「新労」)を立ち上げたこと、同年4月25日からユニオン・ショップ及びチェック・オフを一方的に停止したことが、労組法第7条第3号の支配介入の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事案である。
3 初審群馬県労委は、チェック・オフ停止は支配介入の不当労働行為に当たるとして文書交付を命じ、ユニオン・ショップに係る救済申立ては申立期間徒過として却下し、その余の救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
 
命令主文  初審命令を次のとおり変更する。
⑴会社が新入社員に組合加入は任意であると説明したことに係る救済申立てを却下する。
⑵ア 会社に対する組合の組合員への脱退勧奨行為、不利益取扱いの示唆、新労への加入勧奨等の行為の禁止。
 イ 新入社員に対する新労の加入案内の際には、組合への加入案内も行うこと等。
 ウ 組合が求めたときは、上記イの説明に組合の組合員等を立ち会わせること。
⑶組合とのチェック・オフに関する議題における誠実団交応諾。
⑷文書掲示等。
⑸その余の救済申立ての棄却。 
判断の要旨  ⑴ 争点1(総務部長らの組合脱退勧奨等の行為と会社による不当労働行為の成否)について
 A(総務担当者)は、組合脱退届の作成、同届への署名の勧誘、新労立上げ説明会開催連絡、実施を主導的に行い、B総務部長は、組合脱退届作成等についてAの相談を受けており、Aの脱退勧奨等の行為は、Bと意思の連絡の下に共同して行われたものと認められる。
 C社長室長は、Aの脱退勧奨行為の重要な一部である脱退届の送付に関与している。Cは、社長直属の部下であり、社長が組合を嫌悪する意思の下にチェック・オフを中止、停止することの相談に乗り、会社のチェック・オフ停止に関与している。
 Cは、AとBの脱退勧奨行為、新労結成行為が組合を嫌悪する会社の意向に沿うものであることを熟知しながら、自ら関与して行ったものであり、一方、社長ほか会社経営陣は、C関与の下でのAとBの脱退勧奨行為等を黙認しているから、Cと会社経営陣との間で少なくとも黙示的な意思連絡があったものと推認できる。
 会社は、新入社員に対する組合加入は任意であるとの説明やチェック・オフの停止により組合の弱体化を図っており、これと同時期に行われた脱退勧奨行為及び新労結成行為は、既存の組合員及び新規加入組合員の減少につながるものであって、組合の人的基板を弱体化する行為であり、会社のかかる行為は労組法第7条第3号の支配介入に当たる。

⑵ 争点3(ユニオン・ショップないし組合加入に関する取扱いの停止)について
ア ユニオン・ショップに関する申立て
 組合は、会社が27年4月以降、ユニオン・ショップの取扱い停止が、支配介入に当たると主張するが、 組合の主張を認めることはできず、 当該申立て部分については棄却する。
イ 会社のユニオン・ショップに関する取扱い
 会社は、 労働協約の有効期間が経過した24年4月1日以降も、 27年4月まで、組合加入の新入社員を従業員名簿に記載して組合に交付する取扱いを続けていたと認められる。
 しかし、会社は、組合との団交に応じない中で、チェック・オフや従業員名簿交付取扱い等を停止する対応をした。 これらの行為は、 組合組織の財政的・人的基盤の弱体化を招来する効果を有する行為である。会社は、同行為について、組合に相談・説明をすることは一切なく、合理的理由を示して組合から合意を得るべく会社が誠実に団交を尽く したなどの事情は認められず、 会社の行為は、 労組法第7条第3号の支配介入に当たる。
ウ 会社の新入社員に対する組合加入は任意であるとの説明
 27年2月18日以前に会社が新入社員に対し、組合加入は任意であると説明したことに係る申立ては、 申立期間を徒過したものとして却下を免れない。
 新入社員への組合加入は任意であるとの説明は、 従業員名簿に記載されない新入社員が現れるようになるという点で、 それまでのユニオン・ショップの事実状態を一方的に打ち切る行為といえ、 その合理的な理由を示して組合から合意を得るべく会社が誠実に団交を尽く したなどの事情は認められず、 会社の行為は、 労組法第7条第3号の支配介入に当たる。
⑶ 救済方法について
ア 争点1及び3に係る救済方法
 組合に対する重大な侵害状態を除去、 是正して労組法の所期する正常な集団的労使関係秩序を回復、 確保するためには、 組合の組合員をこれ以上減少させるような行為を抑止し、 新規採用者が会社の指示、 圧力、 威迫や誘導によることなく、 組合への加入を自由に選択できるようにし、組合の努力次第で組合員数の回復も可能とすることが適切である。 よって、 主文第2項のとおり命ずることとする。
イ 争点2 (本件チェック・オフ停止に係る救済方法)について
 本件チェック・オフ停止は、 労組法第7条第3号の支配介入に当たるが、会社は、 その停止を行う場合には、 合理的理由を組合に説明するべきであった。 さらに、 会社の説明を踏まえて、 今後の労使関係の改善の具体的な方策について協議することが望まれる。 以上を考慮して、 主文第3項及び第4項のとおり命ずることとする。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
群馬県労委平成27(不)第2号・28年(不)第 3号 一部救済 平成29年1月19日
 
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