労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  群馬県労委平成27(不)第2号・28年(不)第3号
くれよん不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社({会社」) 
命令年月日  平成29年1月19日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   会社は、申立外Z社が組合と締結したユニオンショップ協定、各種労使協定等を承継することを条件として、平成19年11月1日、Z社から群馬県における介護事業を承継し、組合と会社の19年11月1日の労働協約及びそれを見直した平成20年3月31日の労働協約(以下「20労働協約」という。)には、ユニオンショップ協定、チェックオフに関する規定がおかれていた。20労働協約は、平成24年3月31日までを有効期間とし、更新はされなかったが、会社は、その後もチェックオフ等を行った。
 本件は、
① 会社が、平成27年4月25日からユニオンショップ及びチェックオフを一方的に停止したことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件(28-3号事件)、
② 会社の総務担当者であるB2(以下「B2総務担当」という。)ないし総務部長であったB3が、申立人組合所属の組合員に対して組合からの脱退を勧奨するとともに新たな労働組合(以下「新労」という。)を立ち上げたことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件(27-2号事件)、
の審査を併合した事件で、群馬県労働委員会は、会社に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを却下又は棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人に手交しなければならない。

年 月 日
 組合
 会長 A1様

会社         
代表取締役 B1

 当社が、平成27年4月25日以降、貴組合の組合費のチェックオフを行わなかったことは、群馬県労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
2 申立人の申立てのうち、ユニオンショップに関する部分を却下する。
3 申立人のその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 争点1(会社のB2総務担当ないしB3元総務部長が行ったとされる組合脱退届用紙の作成、配布等の行為及び新労立ち上げ説明会の実施等の行為が、会社の組合に対する労働組合法第7条第3号の支配介入となるか。)について
(1) B2総務担当が、組合脱退届用紙の作成、配布等の行為及び新労立ち上げ説明会の実施等の行為を行ったことが認められる。
(2) B2総務担当が会社の利益代表者に当たるかについて
① B2総務担当は、B3元総務部長の業務を引き継いだといえるが、特に役職名はなく、平成27年4月21日の社内メールには総務担当として入社したと記載されている等、総務部長としての権限まで引き継いだとはいえない。
② B2総務担当による各事業所長等への業務上の指示等は、平成27年6月15日、B1社長の社内通知ともに送付された書面以外に認められないが、この書面の記載からすると、B2総務担当はB1社長の指示を伝達しているにすぎず、B2元総務担当が日頃から業務上の命令を各事業所長に行う権限を有する地位にあったとはいえない。
③ B2総務担当は、採用の手続事務手続を担当していたが、採用についての直接的権限を有していたとまでは認められず、経営戦略会議に出席していた事実も見受けられないことからすると経営の計画や方針に関する事項の決定に関与する地位にあったともいえない。
④ B2総務担当は、4.21面会に出席しており、一般的には団体交渉における会社側の出席者は会社としての交渉権限を有しているところであるが、同人がどのような権限を有し、この場に出席していたかは明らかではなく、4.21面会に出席していたことのみをもって、同人が会社としての交渉権限を有する者であったとまではいえない。
⑤ したがって、B2総務担当が、実態としての会社の利益代表者であると認めるに足る証拠はなく、同人が会社の利益代表者であったとまではいえない。
(2) B3元総務部長及びB5室長の関与等
① B3元総務部長の関与等について
 B3元総務部長は、B2総務担当と新労結成やそのための取組についてやり取りをした事実は認められるものの、同人に新労結成やそのための行動をするよう指示したり、同人と共同してその行動を行ったとまでは認められず、B3元総務部長が新労結成の具体的取組に関与していたとはいえない。
② B5室長の関与等について
ア 組合脱退届送付用封筒のあて名と差出人について、B5室長がこれを書いたことが認められる。確かに、一社員であるB2総務担当が封筒を何に使うかなどを知らせずにあて名と差出人を書いてもらえるとは考えにくい。
イ また、B2総務担当に対する会社の事情聴取はB5室長が行っていることが認められ、遅くともこの事情聴取を行った時点で、B5室長は自身が脱退届送付用封筒のあて名等を書いたことに気付いたであろうと推測されるところ、同人がそのことをB1社長に報告したと認めるに足る証拠もないことからすれば、B5室長とB2総務担当が意を通じて新労結成に取り組んでいたのではないかとの疑念が生じないわけではない。
ウ しかしながら、B5室長自らが従業員らに組合脱退を促したり、新立ち上げ説明会に参加したりするなどした事実は認められず、あてな書き以外にB5室長がB2総務担当の行為を支持するなどして関与したり、同人に新労結成について指示等を行ったという事実も窺われない。
エ また、B5室長が前記の事情聴取を行ったことがいささか不自然であるとしても、事情聴取は同人らが通謀して仕組んだものであるとか、事情聴取を受けて行われたB2総務担当の譴責処分がB5室長の差配で特別に軽い処分となったなどの事実を窺わせる証拠もない以上、上記疑念は推測の域を出るものではなく、このほかに、B5室長がB2総務担当と共謀して脱退勧奨を行ったと認めるに足る疎明はない。
オ そうすると、これらのことだけをもって、B5室長がB2総務担当の新労結成の具体的取組に関与していたとはいえない。
③ B3元総務部長及びB5室長が、B2総務担当の新労結成のための具体的取組に関与したとはいえない以上、B3元総務部長及びB5室長が会社の代表といえる地位にあるかどうかを判断するまでもなく、B2総務担当の行為が会社の組織的行為であるとはいえない。
(3) B2総務担当は会社の利益代表者といえず、同人の行為は会社の組織的行為であったともいえないので、同人が行った組合脱退届用紙の作成、配布等の行為及び新労立ち上げ説明会の実施等の行為は、会社の組合に対する労組法第7条第3号の支配介入とはいえない。
2 争点2(会社がユニオンショップ及びチェックオフを停止したことが、労組法第7条第3号の支配介入となるか。)について
(1) 20労働協約有効期間経過後も労働協約の効力が存続していた等の組合の主張について
 ユニオンショップについては、26年2月頃から20労働協約の有効期間経過後も行われていた従前と同様の取扱いが変更されたといわざるを得ない。このことだけをみても、20労働協約の有効期間経過後の組合と会社の労使関係はすべてがその内容どおりに継続されていたわけではなく、会社が、20労働協約の効力が存続するものとして取扱ったり、その余後効を承認していたとはいえず、ユニオンショップを前提としてチェックオフ手続を行っていたとはいえない。  
(2) チェックオフが労使慣行になっていたかについて
 すべてのチェックオフ手続が本件チェックオフ協定にのっとって行われていたとはいえず、ユニオンショップ協定を前提とせずに会社が把握している分会員である従業員の給与から、毎月、組合費を控除し、これを組合に引き渡すこと、控除済み組合員名簿とその明細を組合に提出することという事務手続のみが、組合と会社の労使慣行になっていたとみるのが相当である。
(3) 手続的配慮について
 便宜供与の廃止に際しては、労働組合側に不測の混乱を生じさせないよう事前に十分な説明を行い、その了解を得るよう努力し、了解が得られない場合は準備のための適当な猶予期間を設けたりするなどの手続的配慮が必要である。
(4) 本件チェックオフ停止に当たって手続的配慮がなされたか。
① 会社は、5月チェックオフ停止について、A3総支部長を通じて、組合と協議すべきであったというべきであるところ、会社はチェックオフ停止を分会長に告げた際、組合に対して依頼した事実も認められない。そして、組合の要求などもあり、B3元総務部長が、A3総支部長と10回程度は会っていると証言していることも併せ考えると、協議すべき相手がA4分会長でないことを会社が認識していたとみるのが相当である。
 それにもかかわらず、会社は、組合に対して5月チェックオフ停止を協議しないどころか、そのことすら告げずに5月チェックオフ停止を行ったのであるから、たとえ、分会長に説明していたとしても、そのことをもって、会社が組合に対して了解を得るための十分な説明を行い、組合の了解を得るよう努力したと評価することはできない。
② A4に対しての説明や分会員への周知の通知では5月分からチェックオフを停止するとしながら、会社は、実際には、4月分給与から一旦組合費を控除したものの、これを翌月に分会員に返還しており、実質的に4月分給与からチェックオフを停止している。このことについて、A3支部長はもとよりA4に説明や予告があったとの事実は認められない。
 さらに、4月分の控除済み組合員名簿を会社は組合に送付していたため、4月分チェックオフは従来どおりの処理が行われ、月末には組合費が引き渡される思っていたところ、5月になっても組合費が引き渡されなかったことで、初めて4月チェックオフ停止に気付くことになったとA5副会長が証言するとおり、組合にとって4月チェックオフ停止は突然のことであり、これにより混乱を生じたことは容易に推測しうるところである。
 そうすると、会社が、組合に対し、不測の混乱が生じさせないよう適当な猶予期間を設けたとはいえない。
③ したがって、本件チェックオフ停止に当たって、会社が組合に対し、手続的配慮を行ったとはいえない。
(5) ユニオンショップについては26年2月頃にこの手続は実質的に停止されており、28-3号事件申立時において申立期間を過ぎていることが明らかであるため、ユニオンショップに関する部分は却下を免れないが、本件チェックオフ停止は労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たる。  
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