概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和元年(不再)第46号
赤枝会不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
Y法人(「法人」) |
命令年月日 |
令和3年1月13日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、法人が、組合の組合員Aについて、平成30年3月4日(以下「平成」の元号は省略する。)付けで雇用契約を終了し、更新しなかったこと(以下「本件不更新」という。)が、労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号に該当する不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
2 初審神奈川県労委は、救済申立てを棄却する旨の命令を交付した。組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、本件再審申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 不利益な取扱い該当性
本件不更新が過去に更新実績のない雇用契約が期間満了し不更新とされたものであっても、従業員としての地位が継続されないことは、一般に従業員にとって不利益となるといえるため、そのような不更新も不利益な取扱いに当たるということができる。
2 不当労働行為意思の有無について
(1)労使関係の状況について
組合員Aが組合に加入してから法人が雇用契約を更新しない旨の30.2.1通知をするまで、さらにその後も含めて約1か月半の間に、法人と組合との間で頻繁なやりとりが見られ、組合員Aの就労状況をめぐる両者の見解に対立はあったものの、法人は組合の要求に対し、相応の対応をしていたといえる。
(2)本件不更新の理由について
ア 組合員Aが法人経営の訪問看護ステーションで一人で訪問看護を行うようになってから、同人の業務上のミスや、同人に対する利用者の苦情が生じるようになり、法人はこれらを確認したときは、その都度組合員Aに注意、指導、面談等をしたが、同人が29年12月25日に欠勤を開始する1週間前まで、業務上のミス等が続いていたことが認められる。これらのことからすれば、法人が、同人の職務能力及び就労成績が十分でないと判断したことは不合理であるとはいえない。
また、組合員Aの業務上のミス等により、法人は、他の看護師を同行させたり、担当者を他の看護師に交替させるなどの対応を強いられたことからすれば、法人が、組合員Aの雇用契約の期間満了に当たり、同人に引き続き就労を望まなかったことが不合理であるとはいえない。
以上によれば、法人が本件不更新をしたことには、相応の理由があったといえる。
イ 組合は、法人が主張する本件不更新の理由について、30.1.24団交、30.2.1通知及び30.2.7連絡文書のいずれにおいても説明していないことから、後付けの理由である旨主張するが、法人は30.1.24団交の時点では本件不更新について判断していなかったこと、30.2.1通知に更新しない理由が記載されていないことをもって本件不更新の理由の合理性が否定されることにはならないこと、30.2.7連絡文書は組合が提案した和解案に対する回答であるから本件不更新の理由が記載されていないとしても何ら不自然ではないこと等から、組合の主張は採用できない。
(3)本件不更新に至る経緯について
組合は、法人が30.1.24団交の時点では雇用契約を更新するか否かについて判断していなかったにもかかわらず、組合の和解案の検討に必要であるとした期間が徒過する前に30.2.1通知をしたことから、組合の要求内容に起因して本件不更新を決定したことが推認される旨主張するが、30.2.1通知に係る法人の対応が不自然であり、組合の要求に起因して本件不更新を決定したことが推認されるとはいえないから、組合の主張は採用できない。
(4)小括
労使関係の状況ないしその他の事情をもって法人の組合嫌悪意思を推認することはできず、本件不更新には相応の理由があるから、本件不更新について不当労働行為意思は認められない。
3 不当労働行為該当性
本件不更新は労組法第7条第1号には該当しない。 |
掲載文献 |
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